脳の進化と活用、その可能性を探る ~恒温化が哺乳類脳の進化を必要とした~
(2.25億前の始原哺乳類アデロバシレウス想像図 リンク)
哺乳類は今から約2億2千5百万年前に両生類から進化します。(下記リンク参照)
両生類から哺乳類への進化
哺乳類の起源と歩み~逆境の連続が哺乳類を生んだ②「原哺乳類の登場」
当時、陸上を制覇していた動物は両生類です。その中で、一部の両生類は肉食両生類に追われ、恒温性を獲得することで寒冷地へ逃れたと考えられます。それが哺乳類の祖先です。
恒温化のために捕食能力を向上させた
恒温化のためには、常に代謝をして熱を発生させなければなりません。そのためには摂取カロリーを増やす必要があります。実際、哺乳類や鳥類といった恒温動物は他の動物に比べ代謝量が多くなっています。(下のグラフ参照)
摂取カロリーを増やすためにはたくさん食べる必要があります。そのために食虫から雑食へのエサの多様化(⇒歯の形や消化酵素の転換など)も進みましたが、なにより捕食能力を高めるために、エサを認識する能力(嗅覚や視覚能力)を高め、的確な状況判断に基づき、素早く動ける運動能力を身につける必要があります。
その中でとくに脳の発達を促したのは、状況判断⇒状況認識の部分です。縄張り(エサ場)を広げていくなかで、いつごろ、どういう状況で、どこにエサがあるのか。そういう条件を学習し記憶しておくことです。ネズミは、複雑な迷路を学習して迷わず出口=エサに到達する能力を持っています(参照)。そのような能力を著しく発達させたのはそのような状況に対応したものだと考えられます。
(最初の胎盤哺乳類エオマイアの想像図 リンク)
その後、1.25億年前のエオマイアで胎内保育を完成。その間の1億年間で、脳の容量は約2倍になったといわれています。現在、ネズミの脳は両生類の約3倍の重さ(≒大きさ)(参照)ですので、その段階でサル~人類につながる哺乳類脳はほぼ達成されたと云えるでしょう。
その後の哺乳類の進化(代表的にはネズミ⇒ウシ・ウマ⇒ゾウ)にも学習機能が重要でした。状況判断や運動能力を親から教わったり、訓練や経験によって高度化することが可能になります。学習とは記憶回路のネットワークであり、それは脳の拡大を直接促し、脳を発達させたと考えられます。
哺乳類・サル・人類は、生後に完成させる学習脳により進化した
恒温化のための捕食能力の向上、縄張り把握能力の獲得により、脳が拡大すると、胎内での保育期間(妊娠期間)の延長が必要になります。しかし、それには限界があります。頭が産道を通らなくなるからです。そこで、哺乳類は生後に脳を拡大させる戦略をとります。(正確に言えば、脳が成長しきる前に出産する。)ここで哺乳類特有の保育するという特性が活かされます。生後の保育期間中に脳のネットワークを拡大するとともに、学習により記憶の定着が行われます。例えば、肉食獣は子供同士がじゃれあうことで攻撃行動を学習・訓練し、母親の狩りを見てその方法を学びます。(ライオンが何を獲物とするかは母親が何を獲物としていたかに因るといいます。)
このように哺乳類では捕食能力の向上のため、生後に脳を完成させる「学習脳」へと進化させたのです。これは脳が環境に対して柔軟に対応できる新たな可能性の地平を獲得したことになります。それを主要に担ったのは脳の先端部にあたる大脳新皮質部分であり、サル・人類は主にその部分に可能性収束し、拡大させていくことで進化していくことになります。
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