2010-09-12

原猿から真猿へ13 歴史的な視点の重要性

前回の記事は、共認統合にスポットを当てて見ていきました。
今回はちょっと視点を変えてみたいと思います
現在、様々な猿の研究がされており、食性・集団統合様式(オスメス関係・コミュニケーション方法)などが明らかにされています。その研究方法は「観察」がメインに挙げ荒れますが、実はそれだけでは不十分です。
・真猿には形式的な闘争が多いけどそれはなんで?
・ボノボは親和行為ばかりしているのはなんで?
上記のような疑問に答えるためには、歴史的な視点がかかせません。今回はこの歴史的な視点の重要性について書いていきます 🙄

その前に復習として、これまでの記事も併せて覗いてくださいね
【過去シリーズ記事】
原猿から真猿へ1 ~原猿って何?~ 
原猿から真猿へ2 ~猿の拡散と進化過程~
原猿から真猿へ3 ~真猿への進化を、現存する原猿の特徴から探る~
原猿から真猿へ4 ~原猿が陥った「本能不全」~
原猿から真猿へ5 ~共感回路の獲得~
原猿から真猿へ6 ~闘争集団の形成~
原猿から真猿へ7 ~サルの共認統合~
原猿から真猿へ8 ~真猿の進化過程~
原猿から真猿へ9 ~新世界ザルの進化と特徴~
原猿から真猿へ10 ~旧世界ザルの進化と特徴~
いつも応援していただきありがとうございます
続きを見る前にいつものようにクリッとお願いします
ブログランキング・人気ブログランキングへ
にほんブログ村 科学ブログへ

 にほんブログ村 科学ブログへ


『同類闘争の安定化と衰弱の一般則』より引用

真猿たちが、現在見られる様な比較的安定した棲み分け分布を示す様になる前は、新たに登場した真猿他種(強種)との間で、激しい種間闘争が繰り拡げられたでしょう。チンパンジーやゴリラやハヌマンやニホンザル(その他、比較的大型化した真猿たち)は、夫々の棲息域で勝ち抜いて他種を圧倒した制覇種だと考えられます。
その様に制覇種が決まると、次は同種間の同類闘争となります。同種間の場合、体力etcが基本的には同じなので、この同類闘争は延々と続きますが、その闘争圧力は種間闘争よりは弱く、一種の安定化に向かう流れと捉えることも出来ます。その流れの中で、ある特殊条件が満たされた場合、極端に闘争圧力が衰弱し、安定化した少数の群れが出現します。
本来、これらの真猿制覇種たちは、夫々に広大な地域で森林という森林を埋め尽くして同類闘争を闘っており、群れも縄張りも絶えず入れ変わります。これは、群れの新陳代謝と云っても良いくらいに流動的です。しかし、小島や小半島あるいは人類の繁殖によって分断され閉鎖された小地域では、この群れ=縄張りの流動性が小さくなり、いつも同じ敵集団とのニラミ合いという状態が、恒常化してゆきます。

種間闘争を制覇し縄張りを確保した種たちは、同種間の闘争を始めます。同種間の場合、体力etcが同じなので、闘争は延々と続きますが、しばらくすると安定化していきます。闘争が安定化し、縄張りが決まってくると、それをお互い侵犯しないように声を出しあうなど形式化した闘争様式をとるようになります。
例えば、真猿の多くは、おとなオスがラウドコールと呼ばれるはっきり大きな声を出し、群れ間の空間配置を調整していると考えられています。
また、ゴリラのドラミング(2足立ちで胸をたたくディスプレイ)は、外敵から群れを守るための威嚇だと言われています。
%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%9B%E3%82%A8%E3%82%B6%E3%83%AB5.jpg %E3%82%B4%E3%83%AA%E3%83%A95.jpg
左:マントホエザルのラウドコール、右:ゴリラのドラミング
写真はサルの百科 データハウス より
このように、同類闘争が主圧力になってくると、闘争内容が安定化・様式化していく傾向にあります。
真猿に形式的な闘争が多いのはこのためです 🙂 。

通常、戦闘行為(肉弾戦)は一日or数日で決着がつきますが、同じ相手とのニラミ合いが長期化すると兵士たちに厭戦気分が拡がって肉弾戦を回避しようとする様になり、互いに威嚇し合うだけの形式化された闘争に変わってゆきます(現在の多くのチンパンジーやニホンザルは、この状態にあります)。更に上記の如く閉鎖された小地域の様に、その様な状態が極めて長期に恒常化すると、遂にはニラミ合いさえ怪しくなり、同類闘争の圧力が極度に衰弱して、闘争を率いる首雄の存在理由も無くなって終います。
この様な特殊閉鎖地域に見られる現象が、屋久島や下北半島のニホンザルであり、あるいは大河に挟まれた小地域に生息するボノボの生態です。この様に、何を見るにしても歴史的に捉える視点が不可欠だと、思います。もし、その様な視点なしに、ある特殊地域の現状観察だけを大衆向けに発表すれば、殆どの素人は、ニホンザルやボノボは元々そうだったのだ(更には拡張して、サルにはボスは居ないのだ)と誤解して終います。(この点は、学者が大衆向けに何かを云う際に、深く留意して頂きたい点です。)

ボノボはアフリカの限られた地域に住む猿ですが、外圧が低いため闘争はほとんどなく、親和行為ばかりしています。今でこそ、そのような外圧状況ですが、体格や獲得している共認機能からすると、昔からそうであったとは考えにくいです。
おそらくボノボは、原チンパンジーの時代は厳しい外圧に晒されており、体格や共認機能を進化させました。その後、たまたま地殻変動により外敵と分離した環境が形成され、現在のような親和行為が多い形態をとれるようになったのだと考えられます。
そうでなければ現在のような生態になるはずがありません。
%E3%83%9C%E3%83%8E%E3%83%9C%EF%BC%92.jpg
ボノボ 画像はコチラから
現在だけでみてると説明がつかない特徴も、歴史からアプローチしてみるといろんなことが見えてきます。
生物は様々な外圧に適応し、それに伴い進化を塗り重ねてきました。進化積層態たる生物を語るには歴史的な視点は欠かせませんよね 😀 。
次回は総まとめをやっていきます。
「原猿から真猿へ」シリーズもいよいよ最後になります。お楽しみに!
(masamune)

List    投稿者 MASAMUNE | 2010-09-12 | Posted in 3)地上へ進出した哺乳類(原猿から真猿へ)No Comments » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.seibutsushi.net/blog/2010/09/1007.html/trackback


Comment



Comment