2009-08-20

真核生物でプラスミドがなくなったのは、なんで?

真核生物でプラスミドがなくなった理由はこれまでにも、このブログで扱われてきました。
■プラスミドってなに?

原核→真核の進化に伴い細胞としての統合情報は格段に上昇し、DNAの長さもそれに伴い長くなっていったことと、細胞分裂の際に正確にDNAを分割する必要性が高まったことにより、核膜の中に収納する進化が生まれたと考えられる。
この結果、核膜外に存在するDNAの破片は酵素などにより分解され、より安定的にDNA情報を遺伝させる機能を獲得している。

■核小体は、もとはプラスミドだった?

初期真核生物であるアメーバ鞭毛虫:Naegleria gruberiが、rRNAを核の情報ではなくプラスミドから作っているとのこと。
ちょっとまだ飛躍ですが、核小体とは、もしかしたら、もとはプラスミド?かも知れません

これらの認識に、前回の投稿で新たに提起された、プラスミド生命共同体説を加えると、生命進化の流れの中で、プラスミドがどのような変遷をたどったかが見えてきます。
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■真核生物にはプラスミドがない?

前にも述べられているように、プラスミドは古細菌と真性細菌が分化するころには存在していることが確認されており、その歴史の古さが、プラスミド生命共同体説の根拠の一つにもなっています。
真核生物は、古細菌に真性細菌が共生することで誕生したと考えられていますから、真核生物にプラスミドがないのは不思議です。
しかし、よく調べてみると、原始的な真核生命のなかにはプラスミドを持っているものがいます。先に紹介されたアメーバ鞭毛虫もその一つですが、有名なところでは酵母菌もプラスミドを持っています。
パン酵母の育種研究から出発して —私の温故知新—

1980年代以降、30種に及ぶ線状DNAプラスミドが様々な酵母種から相次いで発見されている

■真核生命はプラスミドを核に吸収統合した?

古細菌、原核細菌、原始的な真核生命では細胞内に見られるプラスミドが、進化するにしたがってなくなっていった理由として、単純に失われたのではなく、核内に吸収統合されていった事が考えられます。その理由として以下の点が上げられます。
1.真核生命の染色体遺伝子情報は古細菌や原核細菌に較べて多く、真核生命でも進化するにしたがって増えていることから、新たな遺伝子情報を核内・染色体内に取り込むシステムの存在が予想される。
2.原核細胞では角膜がなく細胞質に遺伝子が浮かんでいるのに対し、真核細胞では遺伝子は核内に保護されており、核膜内に遺伝子を収容する機能が存在すると考えられる。
3.細胞分裂の際にも、原核細菌は比較的大雑把な分裂を行っているのに対し、真核生物では微小管で一つ一つの染色体を正確に分裂させており、遺伝子を完全な管理下においている。
真核生物は細胞内小器官を高度に発達させる一方で、それらの多様な器官を統合する機能も発達させました。その進化の過程で、細胞質に単独で存在していたプラスミドも核内に統合されていったのだと考えられます。
先に紹介した、「核小体は、もとはプラスミドだった?」も、原始的なアメーバ鞭毛虫ではリボソームRNAを細胞質内のプラスミドが作っていたのに対して、生命が進化するのにつれて、プラスミド遺伝子が核内に取り込まれ、リボソームRNAを核小体(仁)で作るようになったことを示していると考えられます。
以上の仮設にもとづいて生命の進化を整理すると以下のようになります。
プラスミド生命共同体:単独では増殖できない単純な遺伝子同士が協力することで増殖できる

原核細菌:単独で増殖できる遺伝子のセットを染色体として持つと同時に、付加的な機能を持つ遺伝子をプラスミド遺伝子として細胞内に共生させている。

真核生命:細胞内小器官を高度に発達させると同時に、器官を統合する機能も発達させ、全ての遺伝子を核内に集約。

List    投稿者 nodayuji | 2009-08-20 | Posted in ①進化・適応の原理4 Comments » 

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コメント4件

 あれっくちゅ | 2010.01.18 4:13

釣りをするので、ギンブナ、クロダイと、
カダヤシ目のプラティ(飼っていた)については知っていましたが、
本当に多様ですね。
私も以前雌雄の違いについて書いたことがあります。
http://ameblo.jp/asamusan/entry-10128100387.html
雄を淘汰した方が種として負担が少ないので、
遺伝性の病気は雄に出やすい。
でも雌雄の違いは命の重さということにはしたくない。
少なくとも人間の場合は、という内容なんですが、
話は飛びますが、
父と父方の祖父が気管支喘息を持っていて、
私ももらっています。
種全体からみれば淘汰すべき系統なのでしょうけれど、
淘汰の決定権は自身にはなく、天敵または異性(平たく言えば売れ残り)にあるはずだ。
(この場合淘汰といっても避妊です。)
などといろいろ考えているうち、
子供ができぬまま妻は限界に近い年齢になったので、
このままなら淘汰される運命ですね(笑)

 nannoki | 2010.01.21 21:03

あれっくちゅさん、コメントありがとうございます☆
ブログも拝見させてもらいました!1つ質問いいですか?雄を淘汰した方が種として負担が少ない、というのが、ちょっと意味が解りにくかったです。なんとなく、云わんとしていることも解らなくもないのですが・・
淘汰を積極的な意味で捉えるなら、淘汰圧力を高める事で、より適応種を子孫に伝えることができるということでしょうか。実際、初期哺乳類は最弱だったが故、雄の性闘争本能を強化して雄の淘汰圧力を高めていますもんね。
あれっくちゅさんの意図しているところ、できれば教えてください♪

 あれっくちゅ | 2010.01.21 23:22

猫のブリーダーの間では、雄は雌の半分もいれば十分で、
チャンピオンを取れそうな雄だけ残して一般に売ります。
雌は多く残しておきます。
そのために雄の方が人になれやすいという迷信を作ったので、雌のほうがよくなれている場合もあります。
答えにはなっていないと思いますが、
淘汰には早死を伴う必要は無いと思っています。
雌の側に配偶者の選択権があり、
雄が必要以上に居ればよいのではないでしょうか。
雌の側に雄を見る眼が必要にはなります。

 あれっくちゅ | 2010.01.22 3:48

一つ書くの忘れてました。
私が思ったのは種を進化させていくために、積極的に淘汰する場合ではなくて、
(私のような)親譲りの先天的な疾患のある個体を排除して、主を健全な状態に保つためには、
雄の側を淘汰した方が得策であるという消極的な利用です。
自身がその排除すべき因子を保有しているからそう思うのかもしれません。
薬が切れたら呼吸が止まるような血統は途切れた方が良いと思います。
(自暴自棄ではありませんよ。)

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