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真核生物でプラスミドがなくなったのは、なんで?

真核生物でプラスミドがなくなった理由はこれまでにも、このブログで扱われてきました。
■プラスミドってなに? [1]

原核→真核の進化に伴い細胞としての統合情報は格段に上昇し、DNAの長さもそれに伴い長くなっていったことと、細胞分裂の際に正確にDNAを分割する必要性が高まったことにより、核膜の中に収納する進化が生まれたと考えられる。
この結果、核膜外に存在するDNAの破片は酵素などにより分解され、より安定的にDNA情報を遺伝させる機能を獲得している。

■核小体は、もとはプラスミドだった? [2]

初期真核生物であるアメーバ鞭毛虫:Naegleria gruberiが、rRNAを核の情報ではなくプラスミドから作っているとのこと。
ちょっとまだ飛躍ですが、核小体とは、もしかしたら、もとはプラスミド?かも知れません

これらの認識に、前回の投稿で新たに提起された、プラスミド生命共同体説を加えると、生命進化の流れの中で、プラスミドがどのような変遷をたどったかが見えてきます。
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■真核生物にはプラスミドがない?

前にも述べられているように、プラスミドは古細菌と真性細菌が分化するころには存在していることが確認されており、その歴史の古さが、プラスミド生命共同体説の根拠の一つにもなっています。
真核生物は、古細菌に真性細菌が共生することで誕生したと考えられていますから、真核生物にプラスミドがないのは不思議です。
しかし、よく調べてみると、原始的な真核生命のなかにはプラスミドを持っているものがいます。先に紹介されたアメーバ鞭毛虫もその一つですが、有名なところでは酵母菌もプラスミドを持っています。
パン酵母の育種研究から出発して —私の温故知新— [6]

1980年代以降、30種に及ぶ線状DNAプラスミドが様々な酵母種から相次いで発見されている

■真核生命はプラスミドを核に吸収統合した?

古細菌、原核細菌、原始的な真核生命では細胞内に見られるプラスミドが、進化するにしたがってなくなっていった理由として、単純に失われたのではなく、核内に吸収統合されていった事が考えられます。その理由として以下の点が上げられます。
1.真核生命の染色体遺伝子情報は古細菌や原核細菌に較べて多く、真核生命でも進化するにしたがって増えていることから、新たな遺伝子情報を核内・染色体内に取り込むシステムの存在が予想される。
2.原核細胞では角膜がなく細胞質に遺伝子が浮かんでいるのに対し、真核細胞では遺伝子は核内に保護されており、核膜内に遺伝子を収容する機能が存在すると考えられる。
3.細胞分裂の際にも、原核細菌は比較的大雑把な分裂を行っているのに対し、真核生物では微小管で一つ一つの染色体を正確に分裂させており、遺伝子を完全な管理下においている。
真核生物は細胞内小器官を高度に発達させる一方で、それらの多様な器官を統合する機能も発達させました。その進化の過程で、細胞質に単独で存在していたプラスミドも核内に統合されていったのだと考えられます。
先に紹介した、「核小体は、もとはプラスミドだった?」も、原始的なアメーバ鞭毛虫ではリボソームRNAを細胞質内のプラスミドが作っていたのに対して、生命が進化するのにつれて、プラスミド遺伝子が核内に取り込まれ、リボソームRNAを核小体(仁)で作るようになったことを示していると考えられます。
以上の仮設にもとづいて生命の進化を整理すると以下のようになります。
プラスミド生命共同体:単独では増殖できない単純な遺伝子同士が協力することで増殖できる

原核細菌:単独で増殖できる遺伝子のセットを染色体として持つと同時に、付加的な機能を持つ遺伝子をプラスミド遺伝子として細胞内に共生させている。

真核生命:細胞内小器官を高度に発達させると同時に、器官を統合する機能も発達させ、全ての遺伝子を核内に集約。

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