2009-04-20

脳の「共感スイッチ」(2)~情報の氾濫は共感能力を阻害する?

さて、昨日の続きですが、今日は「共感スイッチ」「共認機能」の発達障害の危険性についての指摘部分を紹介します。
脳の「共感スイッチ」:情報の氾濫は共感能力を阻害する?
より引用

一方、この研究は、現在のメディアのあり方についての興味深い議論も引き起こした。研究者によれば、共感を呼び覚ます脳のシステムが作動し始めるまでには平均で6~8秒かかるのだという。研究者がこの事実をメディア利用の習慣と結びつけているわけではないが、この研究の報道は、『Facebook』世代がやがて社会的に好ましくない行動をとるようになるのではないかという憶測をあおっている。

メディアの中でもいろいろな種類があるが、映像によるニュース報道については、同情という感情が神経生物学的に短絡的になってしまうという可能性があるかもしれない。たとえば、エピソードが連続的に語られていくときは、場面が次々に切り替わる形で語られる場合よりも共感の度合いがはるかに高くなる、という既存の研究がある。

また、『Journal of Broadcasting & Electronic Media』誌に掲載された、タブロイド[扇情的な大衆紙]的ニュース形式についての考察によれば、矢継ぎ早で刺激的な、視覚的な語り口は、生理的な刺激を与え、見たことを記憶させる度合いを強めるが、これは本来の題材が面白くないものであった場合に限られるという。すでに興味を引かれている題材の場合、タブロイド風の語り口は認知的に過負荷となり、深く心に刻み込まれるのを妨げてしまうというのだ。

さて、まだまだ続きますよぉ~。
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「素早いカット割りは、コンテンツが面白くない場合でも視聴者の目を引き、彼らの意識を引きつけたままにしておける。連続性を無視したMTV風のカット(ジャンプカット)は、多くのエディターが普通に使うようになっているが、画面にいつも目を向けさせる役目を果たす」
テレビニュースのアーカイブに取り組んでいるサイト『Vanderbilt Television News Archive』でディレクターを務めるJohn Lynch氏は、「今われわれが感じているのは、各シーンがどんどん短くなっていることだ」と語る。例えば今年1月にハドソン川に墜落した航空機の報道についてLynch氏は、プロデューサーたちが「レポーターの話や、何人ものニューヨーカーの目撃者たちのあいまに航空機の映像を少しずつ散らばらせては、また別の地点からの航空機のショットに戻していく」ことに着目している。「20年前に同じような事件が起きたとしたら、ずっと(航空機の)映像を追い続けたはずだ」

同情の念が、持続した注意を向けることでのみ引き起こされるとするなら、速いカット割りの編集ではこれが妨げられる可能性がある。そうなれば、他者の物語によって心底から感情が動かされる能力が退化するおそれがある。さらには子どもの適切な発達を損なうかもしれず、そうなれば形成過程にある子どもの脳には、生涯にわたる影響が残るだろう。研究をもっと進める必要があるのは明らかだが、この仮説には説得力があるように思える。

「物事があまりに速く起こると、人は他の人の心理的な状態についての感情を十分に体験しなくなる可能性があり、このことは倫理に影響する可能性がある」と、元々の論文の共著者であるMary Helen Immordino-Yang氏(南カリフォルニア大学)は語っている。

さて、しばらく前に、「テレビ脳」や「ゲーム脳」の危険性という議論が、物議をかもし出した事がありますが、今回の研究には一定の説得力があります。
また、実際に子供がテレビ画面に釘付けとなり、周りからの呼びかけに全く反応しない、といった場面もこれまで何度も目にしており、実感からしても素早い画面の移り変わりは、「共感スイッチ」が作動しないままに脳内刺激を与えている印象を強く受けます。
しかも、画面の切り替わりが早いほど、テレビを見て何かを感じたか?と問い掛けても、殆ど何も覚えていない、といった事もしばしば。このような状態が長く続けば、人としての重要な「共認機能」がまともに発達しない、といった可能性はおおいに有り得ると考えても良いでしょう。
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参考投稿
テレビ脳 (てれびのう)
テレビ脳 前頭葉の不活性化はヤバイ!
ところで、今回紹介した記事を目にした時、実は一番最初の一文に、最も違和感を感じました。

人間はもともと利己的だという見方もある

という一文です。
もろに、ドーキンスの「利己的な遺伝子」論の影響かいな、と思うような切り出しですが、そもそも「利己的な遺伝子」などというのものの根拠など全く存在せず、今や単なる文学的な表現に過ぎない、とも言われています。
あるいは、前稿と合せて考えてみても、「共感スイッチ」や「共認機能」が人類以前の段階で獲得された機能であり、それらの進化による共同性こそが、人類が逆境を乗り越え社会を形成してきた基盤である事は間違いありません。
よって、「もともと利己的である」などといった間違った解釈は、生物史を追究する上でもしっかりと正して行く必要があります。それは、今後の環境共生や地球・宇宙などの幅広い分野との協働の必要性といった課題においても、重要な事ですね。
という事で、今後も人類の脳、あるいはそれらを取り巻く地球環境、そして宇宙との関連性など、幅広く生物史の追究に取り組んで行きたいと想います!
参考投稿
遺伝子の共同体
「利己的な遺伝子」を切開する 1
「利己的な遺伝子」を切開する 2
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List    投稿者 kawait | 2009-04-20 | Posted in ④脳と適応No Comments » 

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