2008-12-19

細胞分裂のタイミングは、どのように決められるのか?

%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%83%8A1219.jpg
ユーグレナ藻 

細胞分裂とは、生殖の起源であり、生命にとって最も基本的な活動です
細胞たちは、いったいどのようなタイミングor条件下で、分裂を開始するのでしょうか

例えば、十分に栄養を蓄えて体積が約2倍になったら? たぶん、そうした内識機能(内部認識)だけでなく、これから分裂して増殖しても大丈夫そうか? というような外識機能(外部認識)も関わっているのだろうと推測します。
では、細胞分裂は、具体的にどのようにコントロールされているのでしょうか
単細胞生物の事例で考えてみたいと思います

気になる続きはポチっと押してからどうぞ
ブログランキング・人気ブログランキングへ
にほんブログ村 科学ブログへ

 にほんブログ村 科学ブログへ



●ユーグレナの細胞分裂
単細胞生物ユーグレナ(ミドリムシ)の細胞分裂は、基本的に にしか起こらないそうです。
(実験室でも同様で、良好な栄養条件下で、12時間毎に光を点けたり消したりする明暗条件下においてやると、暗期に分裂し、次の明期を2匹で迎える)
これは昼夜 という外部条件に合わせて、細胞自身が分裂周期を調節していることを意味しています。

そこで、明暗を3時間毎に切り替えてみるとどうなるか?
このサイクルだと、ユーグレナは明暗認識によって細胞周期を調節することができなくなります。そうするとユーグレナはあきらめて、自分が体内に自然に持っている分裂周期に従うようになり、だいたい30時間に一度ずつ分裂を繰り返すようになるそうです。

一日より少し長いこの内在的な周期を概日周期or概日リズムといいます。
この概日リズムという生理現象は、動物、植物、菌類、藻類などほとんどの生物に存在しているといわれます。

※参考:「細胞の意志」団まりな著 NHKブックス

●概日リズムがあるのは、なんで?
外界(宇宙~地球)との関係、昼夜の関係でリズムが規定されているのであろうことは、容易に想像がつきます。概日リズムは生命がまだ陸上進出する以前に獲得されたことは確実なのですが、いったいなんで?

生命を考える(後藤健氏) 「概日リズムと環境適応」の論考を参考にまとめてみます。

ユーグレナに限らず、原生生物の細胞分裂は、夜 に行われる事例が多い。これが概日リズムの起源と考えられます。
なんで夜なのか? その理由は、おもに「光」 です。

過度の光エネルギーは細胞成分を損傷させます。またDNAやRNAなどの核酸は紫外線を直接吸収することによって損傷を受けます。(核酸の本来の機能からすると、核酸の光吸収は「余計な」過程)
原始の海において、紫外線や可視光による光損傷は、オゾン層が無いぶん、強かった  それを避けるために、分裂過程は夜行われるようになったというわけです。
(※光損傷に対する防衛とともに、活性酸素障害に対する防衛も考えられます。シアノバクテリアによって光合成が行われるようになってからは、活性酸素による酸素毒の細胞損傷も問題になります)

もう少し詳しく言うと、細胞周期の中で、紫外線に対する抵抗性が高いのは「G2期」。昼はおもにG2期ですごし、S期(DNA複製)やM期(分裂)などの危険な過程はおもに夜へ、ということのようです。

※かねてから、細胞周期にG2期があるのは、なんで 🙄 が疑問だったのですが、この答えも「光損傷からの防衛」説が有力だと思います

●細胞周期のコントロール(分裂の調節)はどのように行われているか?
最初のユーグレナの事例から考えると、細胞分裂の認識は、大きく二重構造になっているのではないかと思われます。

概日周期が基底にある。しかし、その生理時計に全て支配されているわけではない。
概日周期をベースにしつつ、環境条件etcを認識しながらコントロールしているのだろうと思われます。

後者については、外識と内識を繋ぐ細胞の認識機関(受容体、膜タンパク質etc)の協調的な働きが関与していると思われますが、このあたりは次の機会に。。。 8)

List    投稿者 iwaiy | 2008-12-19 | Posted in ①進化・適応の原理No Comments » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.seibutsushi.net/blog/2008/12/633.html/trackback


Comment



Comment