2008-09-19

小さなRNA(続編)

こんにちは。
今日は、8/26のエントリー 小さなRNAの多様なはたらきの続編です
少し角度を変えて、小さなRNAと脳の関係について考えてみます :D

ノンコーディングRNAは、以前はただのジャンクのように考えられていましたが、近年になって、生命現象に非常に重要な役割を果たしていることが分かってきており、研究者の間でも脚光をあびている領域です 8)

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RNA研究の最前線 : SCI(サイ) 
(↑RNA研究を知る入門サイトとしておすすめです)
レクチャー第3回 より

小さなRNAは、実は脳の形態形成にも重要であるということもわかってきています。この実験はどういうものかというと、小さなRNAをつくるために重要な酵素、Dicerの変異体をつくると、小さなRNAは作られないということがわかります。Dicerの変異体を解析していくと、おもしろいことに軸形成とか全体の体のパターンというものに影響しているようにはみえない。最終的に大きくなるにつれて形がおかしくなり、大人にならないんですが、最も影響を受けているところは、脳の構造がおかしくなってきている。

しかもこれが最も重要な実験なんですが、Dicerはたくさんの小さなRNAを作るわけですけど、miR-430というmiRNAを変異体に戻すと脳の形態形成がワイルドタイプに近づく。つまり特定の小さなRNAは、特定の組織の形態形成に非常に重要な役割を果たしている、ということを示している非常に重要な実験です。

では先ほどのmiR-430は何をやってるのかというと、母方からもちこまれるmRNAがあって、発生過程である程度使われるんですが、母性mRNAをある程度つぶしてしまうことに小さなRNAが関わっている、ということがわかった。母親の支配からから自分の支配に変えるスイッチを担っている分子である。小さなRNAはいろんなことに重要です。

「Dicer」というのはRNAに作用する分解酵素の一種で、二本鎖のRNAを切断することによって、小さなRNAを生成します。この小さなRNAがmRNAに干渉して遺伝子発現を制御したりします。

しかし、小さなRNAが脳・神経系の形成に重要な働きをしているというのは驚きです

もう少し調べてみたところ、2004年に、ニューロン新生の運命決定を制御するRNA発見の記事がありました。
-脳内でニューロン新生の運命を司るRNA-2004年3月19日 発表 より

このRNAは、約20塩基の二本鎖という形状を持つ非常に小さい分子ながらも、神経細胞(ニューロン)の分化の際に重大な役割を果たす。このRNAはニューロンの遺伝子発現を抑制する負の転写因子であるNRSF/RESTタンパク質によって認識されるNRSE/RE1の配列を持っており、このタンパク質および遺伝子の設計図であるDNA上のNRSE/RE1配列と相互に作用することによって、ニューロン遺伝子群の発現を引き起こす。その結果、未分化状態だった神経幹細胞はいくつかの分化経路の中から、特異的にニューロンへと分化の道をたどるようになる。
このRNAは細胞の核内に存在し、遺伝子発現の初期段階である転写過程をDNAおよびタンパク質との相互作用により制御する役割を持つ、全く新規のRNAである。小さなnon-coding RNAがもつ細胞の働きを制御する役割の場が、もっと拡張されることを示唆することとなった。

smRNA(スモールモジュラトリーRNA)と名付けた新機能性の小さなRNAは、細胞の核内で遺伝子情報をコードする設計図であるDNAと、その設計図上にやってきて特定の遺伝子の発現のOn/Offを制御する機能性蛋白質(転写因子)の双方に作用する、全く新しい部類のRNAモジュレーターである。

DNA設計図上に配列特異的(NRSE/RE-1と呼ばれるニューロン特異的な遺伝子にコードされた配列)にこのsmRNAがやってくると、「この配列の下流にコードされた遺伝子(産物)を今から生産開始しなさい」という命令がはいり、それまでその部位で遺伝子の発現を押さえていたリプレッサー(抑制)タンパク質(NRSF/RESTタンパク質)が、その性質を変えアクチベーター(活性化)タンパク質に化ける。その結果、神経幹細胞をニューロンへと導いていくのに必要な多くの遺伝子の発現が始まり、ニューロジェネシスが起こる。

このsmRNAはDNA設計図上で発現場所を指示すると同時に、既にある1つの重要な蛋白質の性質を全く別の性質へ変化させる役割をもつ。特定の遺伝子群の指定、タンパク質の二面性のコントロール、の指示を出し終えると、成熟ニューロンへと神経幹細胞が進行する前にこのRNAは密やかに姿を消してしまう。

おそらく、小さなRNAは(まだ発見されていないものも含めて)非常に多くの種類があり、脳・神経系に限らず、様々な器官形成に関わっている可能性が高いと思います。細胞間のコミュニケーション、シグナル伝達にも関わっているかもしれません。

また上記研究にある、小さなRNAがDNAとタンパク質の双方をコントロールする役割を担っている点は注目だと思います :o
生命起源(RNAワールド仮説)~進化の過程において、この小さなRNAはどのように進化し(変異し)、どのような役割を果たしてきたのか

(なお、「小さなRNA」は原核生物の時代から存在しています)

List    投稿者 iwaiy | 2008-09-19 | Posted in ①進化・適応の原理4 Comments » 

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コメント4件

 ブーケ☆ | 2008.11.13 4:40

>原始地球にあったと考えられる物質で膜を作ってみるとどうなる??
なかなか面白い実験があるのですね!
私もついつい「現存している原始生物の膜=始めに出来た膜」って捉えてしまっていましたが、そうとは限らないですよね。
続き楽しみにしています♪

 北斗七星 | 2008.11.13 23:05

この学者さんは膜まずありき、という発想のようですね。
だからヌクレオチドが透過するかどうかだけを問題にしているようですが。
逆にヌクレオチドの成分(リン酸のP)によって膜が作られた(ヌクレオチドを含む物質群によって膜が作られた)。という逆の可能性も考える必要もあるのではないでしょうか?

 北斗七星 | 2008.11.14 0:56

コメント追加です。
ちなみに、細胞膜の特徴はグリセロールエステルにリンが結合することで、二重膜を形成していることです。

 arinco | 2008.11.15 10:59

>ブーケ☆さん
コメントありがとうございます。続きがんばります!
>北斗七星さん
逆にヌクレオチドの成分(リン酸のP)によって膜が作られた(ヌクレオチドを含む物質群によって膜が作られた)。という逆の可能性も考える必要もあるのではないでしょうか?
そうなんです。リン脂質ってどっからできたの?と思っていたのですが、先にヌクレオチドがあったとしたら、既にリン酸って存在するからそれを使った。という仮説も立てられるんですよね。その視点でも考察してみます。ありがとうざいます!

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