2008-05-20

神経堤(神経冠)ってなに?

『神経堤(神経冠)細胞』というのをご存知でしょうか

体のさまざまな組織にあり、神経や筋肉などになる多能性を持つ「神経堤(しんけいてい)幹細胞」が、採取した組織によって存在する割合が違い、異なる性質を持つことを、岡野栄之・慶応大教授らがマウスの実験で突き止めた。この細胞はヒトにもあり、将来、患者由来の細胞を使った脊髄(せきずい)損傷などの治療に役立つ可能性があるという。

神経堤は将来、脳や脊髄になる部分と皮膚になる部分の境界に存在する細胞の集団。脊椎(せきつい)動物の発生初期だけに現れ、成長すると消えてしまう。
~・後略・~

神経堤は脊椎動物のボディプランを支える細胞であり、外胚葉、中胚葉、内胚葉という3つの胚葉に次いで「第4の胚葉」と呼ばれています。

どういうこと・・・

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神経堤細胞は、ヒトを始めとする脊椎動物以降の生物にのみ存在する特有の胚組織です。神経冠細胞は、発生初期に神経管形成時に神経管背側より出現し胚全体に移動します。そして固有の定着部域において、末梢神経細胞、内分泌細胞、顔面および顎の軟骨・骨細胞等、脊椎動物を特徴づける多くの細胞種に分化することが知られています。

いわば幹細胞のような全能性を持っていて様々に分化し、脊椎動物の頭部発生には主要となってくる細胞群です。つまり、神経堤が脊椎動物のボディ-プランを支える胚組織であることを意味しています。

神経堤細胞の全てが分化多様性を持っている訳ではありません。神経堤は移動前において既に様々な文化能が制限されており、移動後の定着部域に応じて、下の表に示すように脊椎動物のボディ-プランを特徴づける多くの細胞種に分化しているようです。

【神経堤由来の細胞・組織】神経堤より)












体 幹
末梢神経系背根神経節
交感神経節
副交感神経節
神経系の支持細胞(グリア細胞・シュワン細胞)
ロ-ハン・ベア-ド細胞
副腎髄質(クロム親和性細胞)
色素細胞
頭 部
末梢神経系知覚神経節三叉(Ⅴ)神経節・顔面(Ⅶ)神経節
舌咽(Ⅸ)神経節・迷走(Ⅹ)神経節
副交感神経節毛様体神経節
骨・軟骨組織
結合組織
造歯細胞



神経堤(冠)細胞の移動経路
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上表からも神経堤は様々な細胞や組織に分化していることが分かり、分化能に富んでいると言えると同時に、上表に挙げた様々な細胞や組織は、当然のことながら胚体内のそれぞれに特異的な領域に分布しなければなりません。つまり、神経堤細胞は移動能にも富んでいることが分かります。

神経堤由来の細胞はそれらの場所まで長駆移動していきます。例えば、消化管に分布する神経細胞や支持細胞も神経堤由来ですが、最初顎部に生じたこれらの神経系の前駆細胞は、消化管のほとんど後部末端近くまで移動していきます。また、体幹部の同じ領域から生じた神経堤細胞についても複数の異なる移動経路が利用され、それぞれの移動経路に特徴的な細胞種が分化します。

つまり、このような脊椎動物ボディ-プランの成立は、重要な特徴(分可能・移動能)を担う神経堤の出現に負うところが大きいと同時に、神経堤の進化的起源は脊椎動物への進化史を解くひとつの鍵であるように思われます。

また、当ブログの『多細胞生物の細胞接着』で紹介されている「細胞接着」についても神経堤の起源が関係しているように思われます。

<参 考
神経冠発生機構の進化発生生物学
東北大学 細胞生物学講座 器官構築学分野
neural crest cells

List    投稿者 yoriya | 2008-05-20 | Posted in ①進化・適応の原理No Comments » 

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