2008-04-24

ボルボックスの同類認識機能?

ボルボックスは、群体を形成する生物として有名ですね。
群体を形成するには、同類(仲間)とそれ以外とを見分けているはずですが、
彼らは、どのようにして同類を認識しているのでしょうか?
250px-Volvox_aureus%5B1%5D.jpg
<ボルボックスの群体:ウィキペディアより引用>
今日は基礎調査編として、その謎に少し迫ってみます。
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●ボルボックスの特徴
・外側に数千個の体細胞からなる一層の細胞層があり、その内側に十数個の生殖細胞がある。
・体細胞間はゼラチン状の構造(原形質連絡)により結ばれている。
・何千という数の細胞が協力しあって、群体全体として泳ぐ。
・群体には、前後があり、決まった方向に泳ぐ。前の細胞は大きくまばら、後ろ側の細胞は小さくて密につまっている。また、娘群体は、必ず群体の後寄りでつくられる。
Vol-daughter-s%5B1%5D.jpgbol%5B1%5D.gif
リンクより引用>

・娘群体は表裏が反転する。生殖細胞が約2000個の細胞に分裂し終わった後、インバージョン(反転)が起きる。(生殖細胞は、親の身体とは反対に球体の外側、体細胞(鞭毛)は内側を向いている。それが反転して生殖細胞が球体の内側に入り、体細胞(鞭毛)が外側を向くことで、泳ぐことができるようになる。)
リンクより引用>

・日中、池の水の温度が高いときは池の表面の光があるところに集まっている(正の走光性)が、夕方、池の水の温度が低くなってくると光から離れて、池の底に向う。このように光に対する応答は環境の温度によってかわる。
・マイナス電極に集まる性質(負の走電性)を持っている。
・光と負の電気の両方の刺激が加わった場合、それらを合成する方向に動く。
リンク参照)

おそらく、正の走光性や負の走電性は単細胞時代から獲得された認識機能→運動機能であると思われるが、ボルボックスの場合は、それらの運動が群全体で起こることが大きな特徴である。群全体で泳ぐ時に、体細胞の鞭毛が協力して同じ方向に運動することや、インバージョンも、娘群体が協力して起こることから考えて、ボルボックスの細胞どうしが、同類(仲間)と認識し合っていることは間違いないであろう。
●どのようにして同類を認識しているのか?
ボルボックスの細胞どうしは、原形質連絡糸と呼ばれる糸で結ばれている。原形質連絡糸は、生体の原形質の細胞膜などの微細な孔や細胞間の空隙を通って糸状にのびたもの。各細胞間における原形質連絡を行なっている。
volvox1%5B1%5D.jpgvolvox2%5B1%5D.jpg
リンクより引用>

>ボルボックスの原形質連絡は,細胞質分裂が不完全に起こり,一部の細胞膜が娘細胞間で繋がった構造として元の分裂面上に形成される。クラミドモナスでは原形質連絡は形成されないが,IAR1タンパク質の局在部位である分裂面は,InvA (遺伝子)の局在部位である原形質連絡ができる部位と似ており,原形質連絡の祖先となった構造や過程と関係しているかもしれない。(西井一郎氏の論文参照)

また、「ボルボックスのインバージョンは、 微小管の上をキネシンと呼ばれるタンパク質(分子モーター)が移動することによって引き起こされる。キネシンは原形質連絡(ブリッジ)に結合し、原形質連絡(ブリッジ)と共に移動する。」とされる。(西井一郎氏のレポート参照)

やはり、ボルボックスの同類認識機能には、細胞膜と膜を結びつけるタンパク質が密接に関わっていると思われる。原形質連絡を形成し、群体となったのも、細胞膜が娘細胞間で繋がったことに起源があるらしい。おそらく、細胞膜が持っていた同類認識機能が、ボルボックスの同類認識機能の原点にあるものと推察される。(継続追求)

List    投稿者 fkmild | 2008-04-24 | Posted in ①進化・適応の原理1 Comment » 

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 非常勤講師はつらいよ | 2008.06.10 6:20

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