2008-04-21

大腸菌の認識機能

daityoukin.jpg
<大腸菌 感染症のページリンクより引用>
前回の記事にあるように、生物は常に環境の変化(外圧変化)を感知しそれに適応することで生きています。
特に大腸菌などのバクテリアは、温度や栄養条件、pH、浸透圧、集団密度などの外環境が大きく変化するので、それらに適応できなければ生き残ることはできません
少なくとも、原核単細胞段階でも、何らかの認識機能が働いていることは疑う余地はなさそうです
今回は、原核単細胞の大腸菌の認識機能について、さわり部分を記事 にしてみます

その前にいつものヤツをお願いします
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■走化性・温度走性(走熱性)
大腸菌の持つ特性で、最も研究が進んでいるのが、前回の記事にありました走性です。
中でも走化性・温度走性(走熱性)についての研究はかなり詳しく行われています。

ちなみに、走化性とは、化学物質の濃度などに反応して遠ざかったり、近づいたりする性質のことを言い、温度走性(走熱性)とは、温度勾配に反応して、高温域に近づいたり、低温域に近づいたりする性質のことを言います

【大腸菌の走化性】
大腸菌の場合は、アミノ酸や糖などの栄養物質(誘引物質)に向かって近づき、金属イオンやインドールの有害物質(忌避物質)から遠ざかります。

【大腸菌の温度走性(走熱性)】
大腸菌の場合は、温度変化に反応し、温度の高い領域に移動します。

■大腸菌の行動
みなさんもTVとかで大腸菌の群を見たことがあると想いますが、彼らをよくよく観察してみると、まっすぐ泳いでは方向転換し、またまっすぐ泳ぐことをくり返しています 🙄
ランダムに動いているように見えますが、実はこの行動が先に述べた走化性・走熱性をもとにした基本行動となっているのです
大腸菌は好き勝手に動いていたわけではないのですね~

どのやって動いているのかと言いいますと、大腸菌は数本の鞭毛をもち、根元にある鞭毛モーターを回転させながら泳ぎ回っているのです
下図のように鞭毛が左回転すると束ねられてスクリューのようになり、推進力を得て直進(スムーズ・スイミング)します。一方、右回転すると束がほどけて方向転換(タンブリング)をします。

zu01.jpg
<大腸菌の極で鼻のようにはたらくセンサーリンクより引用>

大腸菌は鞭毛の回転(右回転と左回転の2種類)を駆動させることで、動くことができるのです。

左右の回転の切り換えは自発的に起きていますが、誘引物質や温度勾配があると、その切り換え頻度が変わり、直進と方向転換を組み合わせて試行錯誤を繰り返しながら適した方向へ移動するのです
(温度勾配の例で言えば、たまたま暖かい方へ向かったとき直進する確率が高くなり、逆に冷たい方へ向かったときは方向転換頻度が上昇します。)

また、大腸菌は体長約5μmと小さいため、菌体の前後で温度差や物質濃度の差を直接比較することはできません
しかし、液体中を毎秒10-20μmの速さで素早く泳ぎまわることで、自分の周りの温度差や刺激物質濃度の時間変化を感じているのです 🙄
つまり、大腸菌菌は少し前に自分がいたところの温度や刺激物質濃度を何らかの仕組みで「記憶」していて、それを現在の温度や濃度と比較して行動を決定していると考えられるのです 😀

■高感度センサーの仕組み
それでは、どのような仕組みで、環境の変化を読み取っているのかを見ていきましょう。

大腸菌の極で鼻のようにはたらくセンサーリンクより、引用させていただきます。

こちらを参照しながらお読み下さい。

さまざまな外的刺激を認識する走化性受容体は、細胞膜上にある膜貫通型の2つの細長いタンパク質が対になったホモ二量体で、細胞質側にはヒスチジンリン酸化酵素CheAが結合しており、それがべん毛モーターに情報を伝達します。

【誘引物質の刺激がない時】
CheAが活性化されており、細胞内にある応答調節因子であるCheYのアスパラギン酸残基をリン酸化し、リン酸化したCheYがべん毛モーターの右回転(方向転換)を起こします。

つまり、細胞は方向転換してその場を離れようとするのです。

【誘引物質の刺激がある時】
逆に誘引物質が受容体に結合すると、CheAは不活性のままで、リン酸化型CheYの濃度が下がり、べん毛モーターは左回転(直進)する。つまり、今の方向へ泳ぐのがよいと「判断」するのです。

小さな細胞が餌に向かって走るという一見簡単そうに見える行動も、このように細かな調節の組み合わせで支えられていることがわかってきたのである。

尚、大腸菌の同類認識の仕組みはどうなっているのか?大腸菌は型の異なる相手と接合を行うのですが、どうやって、同類異型個体を見分けているのか?などなどがあり、まだまだ認識機能には秘密がありそうです 😉

これについては、細胞膜(膜タンパク質、糖鎖)がなんらかのかかわりを持っていることは間違いないとは想いますが、今後の追求課題としていきます

今回はここまで。以上、やっさんが送りしました
次回は、真核単細胞のゾウリムシの認識機能についてレポします。お楽しみに

List    投稿者 marlboro | 2008-04-21 | Posted in ①進化・適応の原理2 Comments » 

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コメント2件

 さんぽ☆ | 2008.05.27 16:33

免疫機能と受精の関係って、まだよく分かっていないのですね。
確かに、異物である精子を攻撃せず、受け入れる仕組みは不思議がいぱいですね。
今後の追求、楽しみにしています♪

 25歳 | 2014.04.01 21:49

O157は気持ち悪い。

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