2007-09-15

闘う遺伝子 Y染色体

Y染色体が性決定に重要な役割を果たしている、という事は有名ですが、このY染色体はかなり特徴的な働きを担っているようです。
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【書評】アダムの呪い11」より

ミトコンドリアは性的志向に影響を及ぼす可能性はあるが、Y染色体にも含まれているので性決定の主要な起爆材料とは言えない。Y染色体こそやはり性決定の役目を身につけたものである。ところがY染色体は細胞分裂による突然変異に襲われやすい。精巣内では毎日休まず精子生産が行なわれており、DNAコピーが繰り返される。60歳男性の場合でもDNAが精子に入り込む前に細胞が1000回もコピーを繰り返しているというのだから驚きだ。一方女性は年齢に関わらず卵細胞は受精前に24回しか分裂しない。百代さかのぼってみてもミトコンドリアが危険な細胞分裂を2400回しか経験しないのに比べ、Y染色体は500000回のコピーを繰り返す。ミトコンドリアもまた食べたものを燃やすときに副産物としてフリーラジカルを発生させ、DNAを危険にさらす。ただし女性の体内でミトコンドリアDNAを貯蔵する生殖細胞内だけは酵素を使って燃やさない。エネルギーの視点で効率は悪いが、ブドウ糖を乳酸に転化させるという安全な方法をとる。女性の体内がミトコンドリアにとって防御された環境とすれば、間違いなく男性の体内は戦火の中でサバイバルをしている状態だ

(ちなみに、「アダムの呪い」ブライアン・サイクス著書:ちらっとだけ読みましたが、独特なイデオロギーが感じられる為、部分的な参考に留めた方が良さそう)
Y染色体というのは、特殊な場合を除いて哺乳類の場合に雄となる為に不可欠な遺伝子情報を持つとされています。
そして、
X染色体とY染色体の遺伝子数の差が14倍?! なのは何で??
でも書かれていましたが、

X染色体には、1098個の遺伝子があることが分かっています。一方で、Y染色体にはたったの78個しか遺伝子が見つかっていません。

実際には、Y染色体に含まれるSry遺伝子や、SOX9、RSPO1といったいくつかの遺伝子及びホルモンの作用によって、雄化が進められる仕組みとなっているようですが、それにしても何故Y染色体だけが、少ない遺伝情報と過酷な突然変異を持っているのでしょうか?
それは、遺伝子レベルでの役割分化、機能分化の結果だと考えられます。
原核細胞から真核細胞への進化の段階においても、細胞の持つ器官の数が一気に増え、かつ減数分裂を行う性染色体が作られた時点で、「安定と変異」を担う役割特化が推し進められています。
そして、Y染色体だけがひたすら変異獲得の役割を担う事によって、X染色体の安定度はより高められる、という方向で進化してきたのが、我々人類の男と女の違い、という事なのでしょう。
男は闘ってナンボ。Y染色体は、闘争存在の鏡、って事ですね。

List    投稿者 kawait | 2007-09-15 | Posted in ①進化・適応の原理No Comments » 

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