2007-02-11

「清潔信仰」が自己免疫疾患を呼ぶ②

ちょっとあいてしまいましたが、「清潔信仰」が自己免疫疾患を呼ぶ①のつづきです^^

藤田氏は、日本に帰った’72年から研究に没頭。その年、回虫とアレルギーの関係について初発表した。そして’77年には、回虫のアレルギー抑制物質を解明した。

実は、回虫の排せつ物中の『分子量2万の物質(ESC)』が人体においてIgE抗体をつくる機能を活性化させているのだそうだ。

その物質だけ取り出して使えないか、という研究をされてはいるようだが、やはり回虫との共生の微妙なバランスでないとうまく機能しないようだ。
igekoutai.bmp
画像はここから⇒healthクリック
藤田氏は、アレルギー疾患は、「日本人のとめどもない清潔志向に原因がある」と言っている。清潔になったらアレルギーが増える?それはいったいどういうことなんだろう?

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実際、様々な殺虫剤・消毒剤・消臭剤。最近は、なんでもかんでも抗菌仕様。若者の清潔志向は激しいようで、中には、自分の汗やうんちのにおいを消す薬までせっせと飲んでいる若者もいるらしい。ほとんど神経症的なまでの清潔志向だ。確かにこれには異常性を感じる。

「不潔ぎらい」は、多量の資源を無駄に使用し、その結果、不必要な物がどんどん地球上を汚染していくということにもなる。「清潔」は実は、環境汚染を増長しているだ!!
これこそ「清潔病」という名前の病気です。ウイルス、細菌、寄生虫などの微生物との共生を絶った結果が、人間本来の免疫力を弱めてしまったわけですから。(藤田氏著『清潔はビョウキだ』より)

幼児の免疫機能も、ある程度の外圧に晒されて初めて正常に形成されてくる。過度の潔癖は、肉体の抵抗力の弱い子供をつくる。
幼児期の子育てで過剰に神経質になっている例をよく見掛けるが、あえて回虫を飼えとは言わないが^^;)、ある程度の圧力に晒すことでそれに対応する能力を獲得するという生物としてあたりまえの視点を持つべきなのではないかと思う(もちろん、生まれてごく初期には感染症には配慮しなくてはならないが、その時期を過ぎたら過剰に潔癖なのはかえってマイナスだと心すべし!)。

体から出るものを忌み嫌うことは、当然、ヒトに共生している寄生虫や細菌を「異物」として排除しようとする。その結果、人間が本来もっている免疫システムまでも弱めてしまうのだ。
全く「異物」が目に入らず、また全く「異物」とつき合わないでいると精神的にも免疫力が低下する。そのような人々だけで構成される社会は、社会全体の免疫性が低下したものになるであろう。(藤田氏著『清潔はビョウキだ』より)

なんか「清潔信仰」は、自らのイデオロギーと異なるものを徹底排除するキリスト教原理主義にそっくりではないか…

上の事例は、回虫ではなくサナダムシの話だが、ヒトのサナダムシはライオンとハイエナを最終宿主にしているものに最も近縁だそうな(およそ100万年前くらい前に枝分かれしたとの分析結果。実に長いつきあいやな~^^;)

始原人類は、もともとそれら肉食動物と同じ釜の飯を食う仲間(?)。彼らの食べ残した骨・肉をあさってかろうじて生きていた(http://www.rui.jp/ruinet.html?i=100&c=1&t=6)そうなので、寄生虫もその時一緒に拾ってしまったのだろう。
人類の身体は、もともと寄生虫や腸内細菌が共生していてはじめてまともにいられるように、何百万年の歴史の中で形成されてきた。それを、たった数十年の流行の「清潔信仰」で大きく踏み外してしまっている。アトピーやアレルギーを発症する人は無視できない確率になって、今後も増え続けていきそうだ。この問題は、病気への対応策という次元ではなく、生命の適応原理の問題として考えていく必要があるかもしれないよ。

<追記>
一昔前に、O-157という大腸菌のによる集団食中毒があったが、

参照:http://www.sinbun.co.jp/kenkou/o157/o157.html

食中毒の原因となった同じ給食を食べ、O-157に感染していながら、入院が必要なほどの重症の子どもは、全体のたった一割だった。下痢程度の軽症ですんだ子どもが6割、残り3割は全く症状がなかったとのこと。

「清潔信仰」が自己免疫疾患を呼ぶ①で書いたように、腸内にはさまざまな種類の菌が100兆個以上も混在し、腸内細菌叢を形作っている。これらの菌類は、バランスを取りながら、外部から侵入した菌と対抗している。しかし、体力や免疫力が弱いと、このバランスが崩れやすく、ちょっとした異物にも負けて反応してしまう。

子どもというのは、抵抗力がまだ形成途上なので弱いけれど、上に書いたように全員がO157で発病するわけではない。むやみに消毒したり、抗菌の製品ばかりそろえたりして神経質になり過ぎると、かえって腸内の有用な菌が少なくなり、菌に対する抵抗力が弱まってしまう。衛生管理が要らないとは言わないが、無菌状態がいいとは決して言えない

やっぱり、子どもはできるだけ外で遊ばせて、雑菌まみれにすることで^^;)、免疫力を高めるうえでも、感染症への抵抗力を養う意味でも必要!ということだと思う。

というわけで、みなさんも「清潔信仰」の洗脳から自由になって、もっとサナダムシと仲良くしよう!(って違うか^^;)
メーカー企業は、人々の不安を煽って、清潔志向に付け込んでカネ儲けすんのはやめよう。

List    投稿者 nanbanandeya | 2007-02-11 | Posted in ⑤免疫機能の不思議1 Comment » 

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コメント1件

 アイラブサイエンス | 2006.10.15 9:42

世界を一周する大きな雲「マッデン・ジュリアン振動」とは何か?

科学大好き!アイラブサイエンス!このブログでは、最新科学の?をなるべくわかりやすくコメントします。
もう北海道では、今朝氷点下を記録したところも…。…

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