2006-11-02

進化とDNA変異について

生物の形態(かたち)や機能をみて行くと、進化とは、形態の基本構造を基盤にしながら、その先端部分を変化(変異)させて行っている。
例えば、脊椎動物を、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類とみて行くと。
魚類段階で、頭部(口、エラ、眼と鼻、脳)、胸部(前鰭、心臓のある部分)、腹部(消化器や生殖器がある部分)、尾部という大きな体節構造ができあがる。呼吸様式はエラ呼吸。
両生類の成体は、頭部(エラを失う)、胸部(肺ができ、前鰭が前肢に転換)、腹部(後鰭が後肢に転換)が地上生活に適応するために、大きく変化している。尾部は消滅する。呼吸様式は肺呼吸と皮膚呼吸に転換。
爬虫類と鳥類は、頭部、胸部(鳥類では前肢が翼に転換)、腹部の変化は少ないが、完全な肺呼吸を行う。(爬虫類のうち、蛇は四肢を失っているが。)
哺乳類は、頭部、胸部、腹部の器官種類は、爬虫類・鳥類とほぼ同じ。完全な肺呼吸を行う。
爬虫類・鳥類と哺乳類では、殻のある受精卵から子供が生まれるのか、雌の胎内で胎児が成長するのかで、大きな違いがある。
このように、生物は、一旦獲得した形態や機能原理の元に、直面した外圧に適応する、先端部分を転換して、進化していっている。
例えば、水中生活の魚類から、地上生活の両生類への変化(地上という外圧適応)で、先端機能(形態)の組み換えが大幅に行われている。
一方で、進化=形態(機能)転換 は、遺伝子(真核生物以降はDNAが主に担っているが)として、固定されている。
つまり、鳥類の受精卵にある「遺伝子=DNA情報」が、受精卵を、嘴の尖った頭部、翼を持った胸部、後肢を備えた腹部という形態をつくり上げ、鳥の雛を誕生させる。
では、真核生物から始まる、遺伝子=DNA情報の、原理獲得とその変異という構造が存在する筈である。
確かめられているものに、眼の進化がある。
単細胞段階で、眼点といわれる光を感知する場所があり、この眼点という構造(機能)が、延々と多細胞生物まで引き継がれている。

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例えば、渦鞭毛藻という、鞭毛(ベンモウ)で動きまわる単細胞がいる。
>藻類にも眼があると言ったら驚かれますか。もちろん私達の目のようにきちんとした像を結んでいるわけではないでしょうが,細胞の決まった場所に光を感じる部位をもっており,その情報に基づいて光に寄っていったり光から逃げたりします。このような運動を走光性と言います。そして光の受容部位の近傍にはしばしば眼点と呼ばれる構造があります。この眼点は光受容部に入る光を収束させたり,遮蔽したりすることにより細胞が光の方向を認識するのを助けていると考えられています。
>どの波長の光を感じることができるかは,その生物のもつ光受容物質に依存します。例えば緑藻のクラミドモナスではロドプシン,ミドリムシではフラビンが光受容物質であると考えられています。
>青色域はミドリムシなどに見られるフラビンタイプ,そして緑色(500nm付近)に反応するのはクラミドモナスに見られるロドプシンタイプの光受容体が特徴。
「渦鞭毛藻の眼~眼点と走光性に関する研究」(北海道大学理学部、系統進化学講座Ⅱ教室)
リンク

EYESPOT.gif
図は眼点の形態、上記サイトから。DタイプやEタイプは、眼の構造を既にもっている。
次は、多細胞生物で、脊椎動物の祖先である脊索動物のホヤ。(眼点が一つの細胞となる。)
写真はホヤの幼生(生命誌研究館の写真から)
slide.gif
>ホヤ幼生の脳には眼点と平衡器と呼ばれる2つの感覚器が存在する。いずれもメラニン色素細胞を1個含むので、実体顕微鏡で観察すると透明な幼生の頭(胴体)の中に黒点が2つあって、簡単に識別できる。眼点と脊椎動物の眼の関係に興味があり、そこで発現するロドプシンの遺伝子(オプシン遺伝子)を単離した。脊椎動物と無脊椎動物の眼で違ったサブファミリーのオプシン遺伝子が使われているのだが、ホヤの眼点には脊椎動物型のオプシン遺伝子Ci-opsin1が発現していた。このオプシンが眼点の光受容に関わっていることは、遺伝子ノックダウンと行動解析実験を組み合わせることにより証明できた。
>緑藻の光受容物質であるロドプシンが、ホヤの脳領域(器官)では、眼点細胞となっている。そして、ロドプシンという光受容物質が使われている。しかも、その遺伝子は、後の脊椎動物のつながる遺伝子(=DNAの特定領域)である。
「ホヤにおける遺伝子発現制御と遺伝子進化に関する研究」(兵庫県立大学生命理学研究科日下部岳広)
リンク

そして、人(哺乳類)の眼。(多数の網膜細胞で、光を受容している。)
ヒトの網膜には、明るさと色に対して、選択的に反応する2タイプ、4種類の細胞があります。2タイプとは、杆体 (rod) と錐体 (cone) です。3種類の錐体(青、緑、赤)がある。
杆体細胞は、明暗を識別する細胞で、網膜に1億5千万個も存在するが、その光受容物質が、上記のロドプシンというタンパク質である。
そして、3種類の錐体は、オプシンというタンパク質が光(色)受容物質となっている。オプシンは、アミノ酸配列が、ロドプシンと非常に似ており、ロドプシンを変異させることで、特定の光の波長に敏感に反応する受容物質に変異させたと見られる。
青オプシンは、ロドプシンと同じ348個のアミノ酸からなり、緑と赤オプシンは、364個のアミノ酸で、ロドプシンを変異拡張している。
このように、進化上の変異は、それ以前に獲得した形態・機能を変異させて、新しい機能を生み出している。
進化とは、塗り重ねであることが、分かると思います。
人の3色覚については、以下のサイトが詳しいです。
「色覚の原理と色盲のメカニズム 」
リンク

by leonrosa
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List    投稿者 leonrosa | 2006-11-02 | Posted in 6)“祖先の物語”番外編, ①進化・適応の原理4 Comments » 

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コメント4件

 りんご姫 | 2006.10.30 23:17

私はまだ独身♀子供も産んだことがない、「つわり」未体験者です。
「誤って飲み込んだオモチャのブロックが胸につかえて出そうで出ない状態」っていうのを読んで「ウッソ~~~~耐えられるかなぁ・・・できればノーつわりでお願いしたい・・・」って思ってしまいました!!!!!
でも、つわりにはちゃんと意味があるんですね~♪胎児を守ってくれてるんだぁ~♪♪勉強になりました(^-^)
つわりは妊婦の敵って、なんとなぁ~く思ってたけど、その意味が分かれば痛みにも耐えられそうな気がします★
でもでも・・・、できればブロックは飲み込みたくないなぁ・・・(笑)

 miya | 2006.10.31 19:57

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当たり前のように毎日過ごしていますが、体っていろいろな機能があって、本当にありがたいですね☆
今度つわりで苦しんでいる人がいたら、胎児を守るためにがんばってくれているんだよ☆と伝えようと思います。

 わたか | 2006.10.31 21:52

 私の友達は、「つわりは精神的なもの」だと言っていて、「仕事中、つわりなんかになってたまるか!!!」って思っていたら全くなかったそうなんですが、犬やサルにも見られるのなら本能機能を観念で押さえ込んじゃったのかな・・・・?
 「大事な時期に異物から胎児を守るため」というのは説得力がありますね。

 もも | 2006.11.04 23:05

日本の妊娠悪祖が0.02%と言われているのに対しアメリカ、カナダ、スウェーデン等では1%の人が妊娠悪祖だと診断されてるって話もあります。もしかすると、お母さんの自我とか不安とかとも関係あるのかも・・・・。

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