2020-11-12

縄文人が感染していた古代ウイルスから、縄文人の生活実態を探る

縄文体質とは何か?」6つのキーワードで見てきました。
“自然”・“職人気質”・“仲間意識”・“はたらく”・“性”・“信仰”リンク
縄文体質を濃厚に持っている日本人。縄文人とはどんな人々だったのか?様々な追求がされています。

また、>我々は陸地だけでなく海水も含めて、膨大な数のウイルスに囲まれて生きているリンク
ウイルスについても、その実態が明らかにされてきています。

今回は、縄文人の歯髄から得られたDNAに含まれるウイルスのゲノム配列を解析して、縄文人の生活様式やウイルスの進化過程を探ろうという研究 を紹介します。

縄文人の時代においても、人類はウイルスと共に生きていたことが分かります。

 

国立遺伝学研究所プレスリリース(2020年9月28日) より。

縄文人が感染していた古代ウイルスのゲノム配列を特定
~縄文人ウイルスから解き明かすウイルス進化過程~

概要

過去に日本列島で生活していた縄文人(1)のゲノム配列(2)を調べることにより、縄文人のルーツや目の色、お酒に強いかなど、さまざまなことがわかってきました。一方で、縄文人がどのようなウイルスに感染していたのかをはじめとしてわからないことも種々残されています。

情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所の西村瑠佳さん (総研大遺伝学専攻大学院生) と井ノ上逸朗教授らの研究グループは、縄文人の歯髄から得られた DNA を用い、そこに含まれるウイルスのゲノム配列を決定し、解析を行いました。その結果、11 種類のウイルスのゲノム配列が見つかりました。

中でも Siphovirus contig89 (CT89) (3)と呼ばれるヒトの口腔内に生息するウイルスについては完全長のゲノム配列データを得ることができました。さらに現代の CT89 ウイルスとゲノム配列を比較した結果、本研究で見つかった CT89 のゲノム配列は、CT89 の祖先型ゲノム配列を反映していることが示唆されました。

今後は、CT89 ウイルスがどれくらいの速さで進化してきたのか、どのような進化過程を辿ったのかなどを詳細に解析するとともに、糞石をはじめとする縄文人化石の他の部位にも注目し、縄文人に感染していたと思われる古代ウイルスを多く見つけていく予定です。

縄文

 図 1:古代 DNA からわかるさまざまなことの今と未來

 古代人骨の化石に残存する DNA を抽出し、そのゲノム配列を調べることで、どの生物由来の DNA か推定できる。多くの DNA は古代人に由来し、それらの情報によって古代人のルーツや表現型などの解析が盛んに行われてきた。
一方で、古代人骨から DNA を採取すると、古代人に感染していた細菌やウイルスに由来する DNA も含まれていることがわかってきた。細菌やウイルスのゲノム情報に注目することで、古代人の生活様式や病気、ウイルス進化について推定できる

 研究の背景

古代人骨の化石には DNA が残存しています。この DNA を採取すると、古代人由来の DNA だけではなく、古代人に感染していたと考えられる細菌やウイルスの DNA も一緒に採取されてくることがわかっています。

このウイルス DNA に注目し、古代から現代にかけて起こった塩基配列の変化を調べることによって、ウイルスがどのような進化を遂げたのかを考察することができます。すなわち、このように古代人骨の化石から採取したウイルスの塩基配列を現代のウイルスの塩基配列と比較することで、現代のウイルスの塩基配列のみに注目した際に生じる時間的なバイアスを排除した進化過程の推定が可能になるのです。

しかしながら、日本列島で過去に生活していた縄文人に感染していたウイルスをはじめとする微生物の研究は進んでいませんでした。そこで、本研究チームは、縄文人にどのようなウイルスが感染していて、そのウイルスはどのように進化してきたのかを解き明かすことに挑戦しました。

本研究の成果

縄文人骨の歯髄に含まれる全ての DNA の塩基配列を次世代シークエンサー(4)で決定しました。その中で現代のウイルスと類似の塩基配列を持つゲノム配列を探索したところ、11 種類のウイルスのゲノム配列を見つけることができました。中でも約 3800 年前の北海道船泊遺跡の縄文人骨から見つかった  Siphovirus contig89

(CT89) というウイルスはほぼ完全なゲノム配列が復元できました。この CT89 はヒト口腔内の細菌に感染するファージ(5)であることがわかっています。3800 年前の人骨から完全長のファージ配列を再構成した例は世界で初めてです。さらに、現生の CT89 のゲノムは部分配列しかデータベース上に登録されていませんでしたが、今回の解析により、未知の領域の配列も明らかにすることができたのです(図 2)。

図2

 図 2:縄文時代の CT89 とデータベース上の CT89 のゲノム構造

 上段に縄文時代の CT89 のゲノム構造を、下段にデータベース上の CT89 のゲノム構造を示した。矢印はそれぞれのゲノム上に存在する遺伝子を示している。中でも機能を持つと推定されたものは色をつけて示してあり、遺伝子名が記されている。どの遺伝子もウイルスに特徴的な遺伝子であることがわかっている。灰色の矢印は推定タンパク質である。また、左上の領域はデータベース上には登録のない、新たに同定された領域である。

~以下略~

用語解説

(1). 縄文人
約 2900~16000 年前に日本列島で生活していたとされる古代人。古代人化石の年代は年代測定技術を用いることで推定が可能である。

(2). ゲノム配列
ある生物の持つ全てのDNA 塩基配列を指す。

(3). Siphovirus contig89 (CT89)
健康な現代人の口腔内から見つかったウイルスの一種。

(4). 次世代シーケンサー
数億に及ぶDNA の断片を高速に配列決定できる装置の総称であり、この装置を用いることによって大量のゲノム配列を決定することが可能となる。

(5). ファージ
ウイルスの中でも細菌を宿主とするウイルス。]

(以上)

 

List    投稿者 seibutusi | 2020-11-12 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 

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