2020-09-11

性(オス・メス)は、進化の原動力であり、多様な環境に適応できるシステム

生物史から観ると「細胞の誕生,真核細胞の誕生、そして単細胞から多細胞への変化は、進化の上で画期的なできごとと言われています。又多細胞生物というのは,構成細胞1つ1つが機能的にも形態的にも分化し,役割り分担していて,細胞集団全体(個体)として一定の形態的特徴をもち,個体としての機能的な統合がある,という特徴をもっています」参照:【実現塾】多細胞化から雌雄分化へ

その進化の中で

性(オスとメス)を観ると「進化の原動力であり、多様な環境に適応できるシステム」そして「共に生きるという生命の大原則」と言えます。

以下に

奇跡のシステム・性】について生物史からまとめている記事を転載します。

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【奇跡のシステム・性】

オスとメスという性のシステムは、いつどのようにして生まれたか?

(前略)

単細胞生物を襲った絶滅の危機、これが性の誕生に関係があるのでは無いか?と東京大学の黒岩博士は考えています。博士が注目しているのは、クラミドモナス(直径10マイクロメートル(mm)の双鞭毛の単細胞緑藻の一種で、池、湿った土壌、排水路によく見らる)という僅か数十分の一ミリの単細胞生物です。太古の生物と同じように、普段は単純に分裂して増えます。このクラミドモナス、が、栄養不足になるとどうなるか?栄養分の全く含まれていない水の中に入れてみると、バラバラに動いていたクラミドモナスが所々で集まり始めました。よく見ると二つの細胞が震えながら近づいていきます。やがてお互いに結びつき、一つになったのです。

クラミドモナスは栄養不足に陥った時、二つの細胞が合体し一つの細胞として生き始めたのです。今度は合体した細胞を栄養のある所に戻してみます。一週間後、合体した細胞は再び分裂を始め、増えていました。しかし、分裂する前の細胞とは、大きさや色が微妙に変わっているものがありました。分裂する時に、これまでとは違う何かが起こったのです。

性の始まり

二つの異なる細胞の合体、それが性の始まりではないか?と考えられています。太古の海で絶滅の危機に直面した時、あるものは生き延びる為に隣の細胞と助け合い、お互い足りない栄養を補い合おうとしました。二つの細胞が一つになって、共に生き始めたのです。その結果、この単細胞生物は遺伝子DNAを体の中に2組持つようになりました。やがて合体した細胞は、これまでと違う分裂の仕方を始めました。まず2組のDNAがそれぞれコピーされ、4組のDNAが作られます。そして、厳しい環境にも生き残れる可能性を求めるかのように、DNA同士が近づき1部を相手のものと入れ替えます。

次に、それぞれ違う組み合わせを持った4組の遺伝子は、一つ一つの細胞に分かれてゆきます。この細胞が同じようにして出来た細胞と出合い、再び一つの細胞になります。親と違う新しい生命の誕生です。合体と分裂、そして、その度に起こる遺伝子の組替え、そのサイクルこそが性なのです。こうして性は、子供を生む度に生命の新しい可能性を広げていったのです。

オスとメスという性のシステムの完成

14億年前、長い間続いた単細胞の世界に大きな飛躍が訪れました。多細胞生物の誕生です。最初はニハイチュウのように僅か30個足らずの細胞で出来た生き物でした。しかし、バラバラだった細胞が一つになって生き始めた事は、生命の歴史の中で画期的な事でした。

大阪市立大学の団まりな博士は、性を持ちはじめた生物が多細胞生物への進化につながったと考えています。団博士は、性を持ちはじめた細胞の互いに協力し合う性質が、多細胞生物を生んだと考えています。細胞は2組の遺伝子をコピーして分裂していきました。そして、細胞同士がつながり一つの体を作っていきました。互いに協力することで、様々な環境の変化に適応できる複雑な体を作っていったのです。

子供を作る時には、一部の細胞が他の細胞とは違う分裂をはじめます。遺伝子DNAの組換えを行いDNAを1組だけ持つ細胞を作り出します。これが子孫を残す為に特別に作られた細胞、生殖細胞です。そして、新しい体を作るために他の生殖細胞との出合いを求めて離れてゆきます。多細胞生物は、単純なものからより複雑なものへと進化していきました。

様々な個性が作り出すMHCが種の絶滅の危機を乗り越える

1859年、オーストラリアがイギリスの植民地であった頃、ハンティングを楽しむ為に本国から僅かなウサギが持ち込まれました。このウサギは1年で平均12頭もの子供を産みます。オーストラリアには天敵のキツネがいないこともあって、急激に増えていきました。ウサギの大繁殖は、作物や牧草に大きな被害を与えました。様々な撲滅作戦が行われましたが、いづれもうまくいきませんでした。

そこで、オーストラリアの化学産業省は、アメリカからあるウイルスを輸入しました。それはウサギだけに感染し、やがて死をもたらすというものでした。撒かれたウイルスは、瞬く間に広まり次々とウサギは死んでいきました。2,3年でウサギは絶滅したかに見えました。しかし、この作戦は失敗でした。確実に感染すると考えられていたこのウイルスに対して、一部のウサギは、抵抗力を持っていたのです。

体の中の細胞には、免疫の働きに重要な役割を持つ組織があります。それはMHCと呼ばれ病原菌を異物と認識するいわば門番の働きをしています。このMHCの構造を見ると上の部分に独特のくぼみがあります。侵入してきた病原菌を異物と認識すると、それをこのくぼみで捕らえます。このMHCには多くのタイプがあります。くぼみの違いによって、捕らえる事のできる病原菌の種類も違ってきます。この違いが、様々な病原菌に対して抵抗力のあるなしを決めるのです。

そして、どんなMHCを持っているかは、人の場合、主にABCなど6種類の遺伝子です。しかも、6つの遺伝子のそれぞれに様々な種類がある事が知られています。例えば、Aでは20種類以上、Bでは50種類以上というように実に多くの種類があります。両親からどのような遺伝子を受け継ぐかによって、その人のMHCのタイプが決まるわけですが、それらの組み合わせの数は、何と数十億通りになるといわれています。性によって遺伝子の組換えが行われるたびに、様々なMHCの組み合わせが作り出されます。オーストラリアのウサギも、多様な種類のMHCを持っていました。その事が、予測できないウイルスの脅威から生き残る事を可能にしたと考えられています。

(中略)

生命が多様性を確保する為の不思議で巧妙な仕組み

生命にとって、どれだけ広い多様性を持てるか?どれだけ多くの個性を持てるのか?それは、生き残る為に重要な意味がありました。性のシステムの中には、その多様性を限りなく広げようとする不思議な仕組みがある事がわかってきました。アメリカ・カルフォルニア大学のスコフィールド博士は、生命が多様性を獲得する仕組みについて興味深い研究を行っています。スコフィールド博士はが注目している生物は、ヨットハーバーなどに棲むホヤの仲間です。

ホヤは、集まって群れを作って生きています。僅か1ミリほどの小さな個体が集まって管で結ばれ、栄養をやり取りするなど強く結びついています。白いグループと茶色の部ループの同じ種類のホヤ、この2つは持っている遺伝子が大きく違っています。その違うもの同士を近付けてみます。すると、管が通じ合うこともなく離れてゆきます。異物と判断して拒絶してしまったのです。本来自分と遠い遺伝子と結びつく事はないのです。しかし、子孫を残す時には、先ほどと全く逆の現象が起こります。

遺伝子の近い同じグループから、精子と卵子を取り出して受精させてみます。精子が近づいても受精は起こりません。卵子は、遺伝子の近いものを拒絶するのです。続いて、互いに異物として拒絶した2つのグループから精子と卵子を取り出し、遺伝子の遠いもの同士で受精させてみます。今度は卵子は精子を受け入れて分裂が始まりました。性のシステムが働く時には、自分となるべく異質なものと結び合う性質があるのです。

受精はいつも違う遺伝子を持っているもの同士で、行われるようになっているのです。同じもの同士で受精すると、同じ遺伝子が蓄積することになるからです。生命は可能な限り多様性を広げる為に、出来るだけ自分と違うものと結びつこうとするのです。子宮に入った精子は、女性にとって異物です。異物は本来免疫細胞によって排除されます。しかし、精子は例外です。性のシステムが働く時、異物の精子がなぜか受け入れられるのです。この不思議で巧妙な仕組みも全て、多様な生命を生み出す為にあるのです。

精子と卵子、オスとメスの出会いを確実にする為の方法の進化

(前略)

オスとメスの出合いも大きく変わりました。精子や卵子は、空気中に出されると乾燥して死んでしまいます。そこで、精子を直接メスの体内に送り込む体内受精が始まりました。そして、オスとメスが互いに引き合い仲良くする事が、必要になったのです。互いに引き合う為に体の形を変え、また様々な求愛行動も生まれました。オスとメスがいる事が、生命の世界をより豊かにしているのです。

共に生きるという生命の大原則

性のシステムは、オスとメス、男と女を作り多様な生命の世界をもたらしてくれました。そして、性のあり方が進化する中で、ボノボのように単に子孫を残すだけでなく、今を生きるもの達にとっても大きな意味を持つようになったのです。私達人間も、まさにそのような生き方をしているとも言えるのではないでしょうか?性は、実に不思議なものです。性のシステムは、違うもの同士が結びつくことから始まりました。男と女、オスとメスがいて、そして出合い、寄り添い、協力し合う、ここにも共に生きるという生命の大原則があるように思えます。

進化の原動力、性のシステム

太古の海で2つの細胞が協力する事で始まった性のシステムは、豊かで多様な生命を地球にもたらしてくれました。まさに性こそが、内に秘めた進化の原動力だったのです。子宮の中を精子が行きます。2億もの精子は、それぞれ違う遺伝子DNAを持っています。その中のたった一つが、卵子と結びつく事ができるのです。

精子は卵子にとって異質な細胞です。しかし、精子が卵子の表面に達すると、卵子を守っていた壁が開き、精子を迎え入れるのです。これがすなわち、受精です。精子のDNAが卵子の細胞の中に入ってゆき、精子と卵子、2つのDNAが寄り添うように近づいていきます。そして一つの細胞の中で共に息づき始めるのです。太古の昔、異なるもの同士が共に新しい生命を作り出した性のシステムは、今、私達にも絶えることなく受け継がれているのです。

List    投稿者 seibutusi | 2020-09-11 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 

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