2020-07-30

【実現塾】多細胞化から雌雄分化へ

前回、分裂の原初的意味は、DNAが傷ついて死んでしまう前に、分裂して一から再構築することで、さらに長命化を図るという機能の獲得であり、その実現体が、40億年前の海底の熱水噴出口の近くで誕生した細菌=好熱菌であることを書いた。

この段階では、オスとメスへの分化機能は獲得していない。しかし、その機能は多細胞時代になって一気に獲得されたものではなく、単細胞時代から段階的に進化して現在に至っている。

今回は、その進化を追ってみよう。

実現論 前史 

ロ.雌雄の役割分化  

 生物史上の大進化はいくつもあるが、中でも生命の誕生に次ぐ様な最も劇的な進化(=極めて稀な可能性の実現)は、光合成(それによって生物界は、窒素生物から酸素生物に劇的に交代した)であり、それに次ぐのが雌雄分化であろう。生物が雌雄に分化したのはかなり古く、生物史の初期段階とも言える藻類の段階である(補:原初的にはもっと古く、単細胞生物の「接合」の辺りから雌雄分化への歩みは始まっている)。それ以降、雌雄に分化した系統の生物は著しい進化を遂げて節足動物や脊椎動物を生み出し、更に両生類や哺乳類を生み出した。しかし、それ以前の、雌雄に分化しなかった系統の生物は、今も無数に存在しているが、その多くは未だにバクテリアの段階に留まっている。これは、雌雄に分化した方がDNAの変異がより多様化するので、環境の変化に対する適応可能性が大きくなり、それ故に急速な進化が可能だったからである。   

 事実、進化の源泉はDNAの多様性にある。つまり、同一の自己を複製するのではなく、出来る限り多様な同類他者(非自己)を作り出すことこそ、全ての進化の源泉であり、それこそが適応の基幹戦略である。しかし、同類他者=変異体を作り出すのは極めて危険な営みでもある(∵殆どの変異体は不適応態である)。従って生物は、一方では安定性を保持しつつ、他方では変異を作り出すという極めて困難な課題に直面する。その突破口を開いたのが組み換え系や修復系の酵素(蛋白質)群であり、それを基礎としてより大掛かりな突破口を開いたのが、雌雄分化である。つまり、雌雄分化とは、原理的にはより安定度の高い性(雌)と、より変異度の高い性(雄)への分化(=差異の促進)に他ならない。従って、雌雄に分化した系統の生物は、適応可能性に導かれて進化すればするほど、安定と変異という軸上での性の差別化をより推進してゆくことになる。(注:本書では差別化という概念を、優劣を捨象した客観的な概念として用いる。)

 ☆☆変異促進機能という概念で生物史を読み解く

実現論で、 『進化の源泉はDNAの多様性にある。つまり、同一の自己を複製するのではなく、出来る限り多様な同類他者(非自己)を作り出すことこそ、全ての進化の源泉であり、それこそが適応の基幹戦略である。』とあるように、変異促進機能の代表格はDNAの多様性にある。

例えば、40億年前に分裂機能の獲得した、海底の熱水噴出口の近くで誕生した細菌=好熱菌という原初の細胞生命体の遺伝子は、この後に進化した大腸菌などの原核単細胞遺伝子に比べても半分以下の小さなものでしかない。

かつ、そのほとんどが現在も設計図として機能しており、生きていくために必要な遺伝子以外の蓄積はほとんどない。よって、遺伝子の多様性は極めて小さいく、変異促進機能もほとんど持ち合わせていない。

それに対して、その後の生物は普段使わない遺伝子を徐々に蓄積していく。その蓄積は、他の個体の遺伝子を取り込むこと等で実現される。

そして、危機時に、それまで他の個体から受け取り蓄積した「他遺伝子」を使い進化を遂げ、新種が生まれる。この新種の中から外圧適応的なものが現れる。そして、その新種がその後の世界を生き残っていく。

このような変異促進機能は最終的に雌雄分化=躯体分化に行き着く。それは同時に、多細胞化への道のりでもあり、多細胞化の最大の目的は雌雄分化の実現のためにあるともいえる。

それらを、単細胞時代から追っていくと、

☆30億~25億年前:接合機能の獲得(原核単細胞生物の誕生)

大腸菌などの原核単細胞生物は単純分裂だが、接合による遺伝子注入という変異促進機能を獲得した。接合によって、変異要素としての普段は作動しない「他の遺伝子」を蓄積。危機においては、この「他遺伝子」を作動させた新種の中から新しい適応態が登場する。そして、適応力が上昇したこの系統の生物だけが生き残っていくことになる。

例えば、大腸菌は、プラスミドと呼ばれる普段は使われていないを持っている。それを、危機に瀕した外圧適応度の低い繊毛の無い大腸菌に対して、接合により遺伝子を注入する。すると、その大腸菌は注入された遺伝子を使い進化を遂げ、繊毛のある適応度の高い大腸菌に進化するなどの現象が起きる。

Microsoft Word - 実現塾-09

 

図版は、こちら、  よりお借りしました

細菌の接合の概略図。1,ドナー細胞が性線毛を作る。2,性線毛がレセプト細胞に接合し、二つの細胞が近づく。3,移動性のプラスミドが切れて、DNAの一本がレセプト細胞に移動する。4,両方の細胞のプラスミドが再び円になって二本の鎖が合成され、性線毛が再生して新しいドナー細胞ができる。

 この原理からすると、細菌類はこれらの機能を利用して、抗生物質に対してもすぐさま変異可能であり、そのうちの一部は外圧適応的なものとなり、生き延び急速に数を増やしていくことで、耐薬品性細菌問題が発生することが解る。つまり、進化の原理をわかっていれば抗生物質の大量投与がどれだけ危険なのかはすぐわかることである。

 ☆二倍体の登場→中心体の登場

染色体が一つしかない一倍体より、染色体が二つある二倍体の方が、安定度と変異度を高めることができる。したがって、二倍体細胞が急速に進化してゆくことになる。ここでも遺伝子の多様性が高められている。

 また、二倍体が分裂する際、4つの染色体を2つずつのペアに統合するために、中心体が形成された。この中心体は、DNAよりはるかに複雑な構造を持って、2倍体の細胞分裂の複雑な過程を正確に制御する司令塔である。

 ☆20億~15億年前:核膜によるDNAの保護(真核単細胞生物の誕生)

原核細胞が、外から侵入してきた葉緑体やミトコンドリアなどの他細胞と共生することによって飛躍的に生存機能を高めた。その際、他細胞はそれぞれにDNAを持って分裂していくので、本体が分裂する際に、DNAが入り乱れないように、新たに核膜を作って本体のDNAを保護した。これが真核生物である。

 ☆12億年前:殖産分化(核分化)による遺伝子交配  ※生殖と生産の分化

ゾウリムシなどの真核単細胞生物は、普段は単純分裂だが、接合による遺伝子交配という変異促進機能を獲得した。これらは、細胞内に、生殖専用の小核と、代謝専用の大核の、二つの核を持つ核分化によって実現した。この小核遺伝子の交配によって、さらに優位な適応態を生み出すことができる。すべての細胞が小核・大核を持っているので、すべてが生殖細胞であるともいえる。

そして、接合の過程では、小核が戻り分裂し、小核の遺伝子の交換を行い、その後、大核の遺伝子を新しい小核遺伝子で総入れ替えする。これにより、単純分裂は500程度で限界を迎える細胞をリセットし、また単純分裂が可能になる。

これは、その後の雌雄分化した生物が、体細胞と生殖細胞の二種類の細胞で行っていることを、ゾウリムシは、一つの細胞の中で行っているともいえる。

 ☆精卵分化(配偶子)による遺伝子交配

二倍体が次第に、大きくて安定度の高い染色体と、小さくて運動性の高い染色体に役割分化してゆく。これが、精卵分化の起源である。精卵分化とは、栄養を溜め安定力は高いが運動能力はない卵子と、運動能力と変異能力は高いが極めて小さい精子への分化である。

その事例は、単純分裂するクラミドモナスという真核単細胞生物が集合した群体の中に現れる。群体の中の個体の一部が、配偶子という遺伝子交換用の、雌雄分化したあとの精子と卵子と同様の働きを持った細胞になる現象が挙げられる。しかし、雌雄分化とは異なり、配偶子を生みだす母細胞に雌雄の差はない。 ボルボックスhttpswww.s.u-tokyo.ac.jpjapress20185786#a6

 図版は、こちらよりお借りしました

☆10億年前:多細胞生物の誕生

これまで、生殖を担う細胞と生産(代謝)を担う細胞とは同一であったが、精卵分化をより促進するためには、多細胞化した方が、生殖に特化した細胞と生産(代謝)に特化した細胞を生み出すことができるので、適応上有利になる。(ただし、分裂する際には、もとの原核単細胞に戻る必要がある。)しかし、多細胞化の初期段階では、雌雄同体が一般的である。

さらに生産(代謝)に特化した多細胞は、適応力を上げるために、闘争能力=運動能力を発達させると共に、どんどん大型化していくことになった。7億年前、肛腸動物が登場。5億年前カンブリア大爆発(だいばくはつ)で、一気に大型化。

13.雌雄分化(躯体分化)

一つの個体が精子と卵子を持っている(雌雄同体)よりも、卵子だけを持つ個体と精子だけを持つ個体に躯体分化した方が、生殖機能と闘争機能=運動機能をはるかに高度に進化させることができる。従って、精卵分化は必然的に躯体分化=雌雄分化へと進んでいくことになる。

躯体の差が顕著に現れるのは、節足動物系では4.3億年前の昆虫類の登場、脊椎動物の系譜では初期両生類が登場する3.8億年前頃になる。

つまり、『雌雄分化とは、原理的にはより安定度の高い性(雌)と、より変異度の高い性(雄)への分化(=差異の促進)に他ならない。従って、雌雄に分化した系統の生物は、適応可能性に導かれて進化すればするほど、安定と変異という軸上での性の差別化をより推進してゆくことになる。』

雌は安定、雄は変異(闘争)という役割分化が、雌雄分化後の人間も含めた生物集団の統合原理になる。それに対して、現代の男女同権論や男女の中性化などの現象は、自然の摂理を大きく踏み外しているといえる。

 

List    投稿者 sisin | 2020-07-30 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 

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