2020-06-12

野生ニホンザルのオニグルミ採食行動 ~採食技術とそのバリエーション~

本来、技術とは試行錯誤の塗り重ねで生まれる。実現塾(人類の起源)

霊長類は、試行錯誤の塗り重ねにより採食技術を獲得しながら、知能を進化させてきたと考えられます。 例えば、カニの甲羅を剥がして食べるカニクイザル等、サルは集団で試行錯誤の果てにその技術を身に付けたのでしょう。

今回は、野生ニホンザルのオニグルミ採食行動を観察した研究を紹介します。

 

京都大学 研究成果より。

野生ニホンザルのオニグルミ採食行動を観察  ―採食技術とそのバリエーション―

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概要

京都大学大学院理学研究科の田村大也博士課程学生は、宮城県金華山島の野生ニホンザルが行うオニグルミ採食の詳細な行動観察を行ったところ、身体的に十分に発達した個体の中でも、クルミの硬い殻を割って中の子葉を食べることができる個体と、殻を割れず子葉が食べられない個体がいることが分かりました。

また、クルミの割り方には4つの異なる型が存在し、多くの個体はそのうちの⼀つの型を好んで使っていました。さらに、身体的な力がオスに比べて弱いメスが使う割り方では、クルミを回転させたり、噛む歯を左右入れ変えたりするようなクルミに対する操作が、オスが使う割り方よりも頻繁に行われていました。

メスはクルミを頻繁に操作することでオスに劣る力を補っていると言えます。これらの研究結果は、ニホンザルがオニグルミの殻を割れるようになるには、身体的な発達だけでなく、適した採食技術の習得も必要であることを示唆しています。

本研究成果は、2020年4月15日にアメリカの国際学術誌「American Journal of Primatology」にオンライン掲載されました。

1.背景

霊長類が食べる食物の中には、食べる前に何か処理をする必要があるものが含まれています。例えば、殻に覆われたナッツの子葉や巣の中にいる昆虫、鋭い棘で守られている植物の葉や茎などがそれに当てはまります。

霊長類はこれらの食物を獲得するために、様々な工夫を凝らします。例えば、野生のチンパンジーでは、石をハンマーとして用いて硬いナッツの殻を割る行動や、細い枝を用いて巣の中からアリやシロアリを釣る行動(道具使用)が知られています。また、南米に生息するオマキザル類では、硬いナッツを岩や木の幹に打ち付けて殻を割る行動(基盤使用)が見られます。

このような採食行動は、食物を獲得するという課題の中で高度な認知能力や複雑な手・物の操作が要求されるため、霊長類の知能の進化を促進した要因の⼀つ として考えられており、 「取り出し採食仮説」と呼ばれています。

宮城県金華山島に生息する野生のニホンザルはオニグルミを⾷べることが知られていますが、殻を割るために石や岩などの道具や基盤は使いません。サルたちは自らの歯で硬い殻を噛み割り、中の子葉を取り出して食べるのです。しかし、ニホンザルがいつからオニグルミの硬い殻を割れるようになるのか、どのように割っているのか、その詳細は明らかにされていませんでした。

2.研究手法・成果

宮城県金華山島に生息する野生ニホンザル 36 個体を対象に、2015年および 2016年の9月から12月(オニグルミシーズン)に合計 106日間の調査を行い、400事例以上のクルミ採食行動を観察しました。

調査の結果、身体的な力が弱い 4歳以下の子供や 19歳以上の老齢個体はクルミを割ることができませんでした。身体的に十分に発達した7歳以上のオスではすべての個体がクルミを割ることができました。一方で、身体的に十分に発達したメスの中にはクルミを割ることができる個体と、身体的には発達しているのにもかかわらず、クルミを割ることができない個体がいることが分かりました。

さらに、クルミの割り方には4つの異なる型が存在し、多くの個体はそのうちの⼀つの型を好んで使っていました。力の強いオスでは臼歯で押しつぶすように殻を割る方法が多く観察されました。一方、オスと比べて力が弱いメスは、頻繁にクルミを回転させたり噛む歯を左右入れ替えたりして、噛む位置を調節して殻を割っていました。

このようなクルミに対する操作を頻繁に行うことで、メスはオスに劣る力を補っていると言えます。しかし、すべてのメスがこの割り方を使っているわけではなく、中には独自の方法で殻を割っている個体も見られました。これらの結果は、ニホンザル(少なくともメス)がオニグルミの殻を割り中の子葉を取り出すという課題を達成するためには、身体的な発達だけでなく、適した採食技術の習得が必要であることを示唆しています。

3.波及効果、今後の予定

今後は、これらのクルミを割る技術をサルたちがどのように獲得していくのか、その発達や学習の過程を明らかにしていきたいと考えています。

~以下略~

 

List    投稿者 seibutusi | 2020-06-12 | Posted in ⑧科学ニュースよりNo Comments » 

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