2015-05-07

動的平衡の中に組み込まれた、波動伝達が生命の証

生命の適応力には驚愕する。どんな仕組みで適応してるのだろうか?

その適応力を模倣して、金儲けをする研究が分子生物学を利用した医療分野だが、まったくといっていいほど成果が出ていない。それは、近代医療に関わる治療を何も行わなわず、生命の適応力にゆだね、自然治癒力を高める生活だけのほうが、よほど効果があることからも明らかだ。

この理由のひとつは、金儲けになる研究のみに研究費を集中的に投下する金貸しに支配されたマスコミや学者の世論ミスリードもある。しかし、もっと深いところでは、生命の適応力に対する同化の決定的不足から、近代科学の機械論的思考法のみで、対象をわかったつもりになるという思考法の問題もある。

そこで今回は、この思考法から脱却するための、生命の本質となる、より根源的な適応システムについて考えてみたい。

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機械論的な生命観とは、

1.脳機能は特定機能ごとに局在する、つまり、脳は様々な機能を持った機械パーツを組み立てたものである

2.中枢神経からの指令によって体の各機能が機械のように動く

などの理論であるが、

生物は、外圧に対して恒常性を維持するシステムを持っている。これが外圧適応態である生命の根源的なシステムだ。しかし、その具体的な内容はあまりわかっていない。

例えば、外圧を捉えてどこかの細胞に伝えるための神経という伝達システムは、司令塔として重要だが、すべての細胞を協調させるには少なすぎる。ホルモンの分泌による信号伝達は、もう少し広範囲だが、そのスピードは心もとない。

動的平衡の中に組み込まれた、波動伝達が生命の証

のように、生命は単なる機械論では説明のつかない、創発的秩序化能力を持ち合わせている。もしこれを認めず、機械論からしか生命を見れないならば、生物の各部分に指令を与え、パーツである機械を動かしているものを認めるしかなくなる。

それでは実態がつかめないので、論理を整合させるためには『神』を組み込むしかなくなるが、それでは科学にならない。

しかし現実に、すべての細胞が自発的に何がしかの原理で協調することで、私たちは生きている。その協調のヒントが動的平衡にある。

 まず、水分子の中の水素原子は、瞬時に離れたりくっついたりして、常に入れ替わりながら、その機能を維持している。水の中に浮かぶ、生体分子も同じで、その構成原子を入れ替えながらも、分子としての機能を維持し続ける。

次に、生体分子自体も分解され、また合成される。これは、傷ついたタンパク質や変性したタンパク質が蓄積して機能(≒秩序)が失われていく前に、それらを体外に排出して機能(≒秩序)を維持していく。言い換えると、増加したエントロピーを体外に排出する、というシステムである。

よく話題になる傷ついた生体分子を発見して、修復する修復酵素のピンポイントの働きの前に、このような広大な秩序維持システムがある。このような、システムの機能を維持しながら、その構成要素である生体分子が常に合成され、同時に分解される反応系を動的平衡と呼ぶ。

が、このシステムにはもうひとつ重要な働きがある。それは、生体分子の相補性に関係している。相補性とは、ある生体分子と、それとぴったりかみ合う生体分子の関係のことをいい、片方の分子を鋳型にして、もう片方をつくるDNAの合成反応などがそれにあたる。

これらの反応は、外圧の変化が少ない場合、生体分子の合成により緩やかに濃度が上昇し、分解によりそれが緩やかに下降するという一定のリズムを持った波動を作り出す。

それが、外圧変化により、相補性のある片方の生体分子が消費されていくと、くっついたり離れたりしているもう片方の生体分子は、減った量を認識し、新しい生体分子の合成を促すセンサーとして働く。

つまり、短時間に繰り返される動的平衡反応そのものが、外圧変化を全身に伝える機能を担う。これも、波動として伝わるが、平常時の緩やかな一定のリズムとは異なる。このような、動的平衡が作り出す、外圧に対応した波動変化の伝達により、生命の恒常性は維持されていく。

動的平衡の中に組み込まれた、波動伝達が生命の証

緩やかの結合分解を繰り返す、相補的なタンパク質の合成による濃度上昇と、その分解による濃度下降の作り出す作り出されるこのリズムを、振動子(オシレーター)と呼び、細胞分裂などの制御に関わる体内時計としての機能も持っている。

このような、創発的秩序化能力を作り出しているのが、生体の膨大な分子数を前提とした、動的平衡という反応系なのだ。この反応系が作り出す恒常性維持のための波動伝達こそが、生命の証でなないだろうか?

List    投稿者 sinsin | 2015-05-07 | Posted in ①進化・適応の原理No Comments » 

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