2014-10-24

健康・医療分野における微生物の可能性を追求する 08~日本の発酵食品の王様、麹(コウジ)

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前回のブログ記事で、自家製発酵食品で健康効果を検証すること、その候補として甘酒とケフィアを取り上げることを報告しました。今回はその一つ、甘酒を作り出す麹について学びます。

日本には麹を使った発酵食品が数多くあり、日本で発酵食品といえば麹と言っても間違いないぐらいです。具体的には、味噌、醤油、甘酒、清酒、焼酎、泡盛、食酢、漬け物、鰹節など。同じ麹を使いながら多様な食品が出来ているのに驚きます。

麹による発酵は日本を始め東南アジアに特有の技法です。中でも日本の麹は特別で、長い年月をかけて、有効性の高いコウジカビを選別することで作り出されてきた、日本特有の文化と言えます。日本では1000年前(平安時代末)には何億種類ものカビの中から有用なコウジカビだけを抽出する技術を開発し、鎌倉時代には蒸し米の上でカビを育て、どこにでも運べる「カビの種」を作る種麹屋(たねこうじや)が現れました。種麹屋はいわば、「世界最古のバイオビジネス」。この登場で、コウジカビは全国に広まり今に至ります。

日本の食文化を支えている麹ですが、そもそも麹とはどんな生き物なのしょうか。そして、このように多様な食品を作り出す仕組みはどうなっているのか、なぜ麹による発酵食品ななぜ健康に良いのか、今回はここを追及します。

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■生物としての麹

麹はかび=菌類の一種です。正確に言うと、麹(糀)は米などの穀物にコウジカビを繁殖させたもの全体(食品・食品材料)を指しています。生物の部分だけを取り出すと、コウジカビ(麹黴、麹菌)となり、アスペルギルス (Aspergillus) 属のカビの一種です。

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日本の発酵食品に使われるコウジカビのうち、代表的なのがニホンコウジカビ(Aspergillus. oryzae)です。この学名は米の学名oryzaから名づけられました。仲間にショウユコウジカビ(A. sojae)、タマリコウジカビ(A. tamarii)、アワモリコウジカビ(A. awamori)、鰹節に使われるカワキコウジカビ(A. glaucus:カツオブシコウジカビと書いている例も)などがあります。

 

カビの一種なので、胞子で増えます。空気中の胞子が食べ物などの上に落ちると、発芽して菌糸が伸びてコロニーを作ります。コロニーが出来ると、生殖を始めます。胞子をつける分生子柄が木の様に立ち上がり、枝分かれしてその先に胞子が着きます。胞子の色は黄色や黒などいろいろなものがあります。胞子による生殖は無性生殖で、コウジカビが有性生殖をしているところはまだ確認されていないそうです。

コウジカビ

 

 

 

 

 

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カビが増殖するために菌糸の先端からデンプンやタンパク質などを分解する様々な酵素を生産・放出し、培地である蒸米や蒸麦のデンプンやタンパク質を分解し、生成するグルコースやアミノ酸を栄養源として増殖するのですが、これがコウジカビが食品を発酵させる仕組みになっています。さらに、代謝産物として抗生物質やビタミン類などが生成されます。

■麹の発酵の仕組み

ニホンコウジカビは様々な酵素や代謝物を生産します。デンプンを分解するアミラーゼやたんぱく質を分解するプロテアーゼ(中性プロテアーゼ)を初めとしペクチン分解酵素・ペクチナーゼ、タンニン分解酵素・タンナーゼなども生産しています。またグルコース(ブドウ糖)の重合体で分解しづらいセルロース、それより強固な結びつきを持つヘミセルロースをも分解できる酵素(セルラーゼとヘミセルラーゼ)も作り出しており、これらを抽出して繊維質の分解や野菜の軟質化などを行う製剤も作られています。

アミラーゼ

 

 

 

 

 

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二次代謝産物として香料マルトールの原料であるコウジ酸、飲料や食品の酸味料としても用いられるリンゴ酸、グラム陽性菌の阻止効果のあるアスペルギリン酸(アスペルギルス酸)やゲオダインなど多数の物質を生成します。

コウジカビの持つ力のうち、でんぷんを糖に分解するアミラーゼの力を主に使ったのが甘酒、日本酒、みりん、酢です。甘酒は、お米のでんぷんが糖に分解され甘くなったものですが、酒は含まれていません。

これが本当のお酒になるには、酵母によるアルコール発酵が必要になります。酵母にはでんぷんを糖にする力はありません。コウジカビが作ってくれた糖を酵母がアルコールに変えるのが、日本酒や焼酎、泡盛の作り方です。

日本酒仕込み

 

 

 

 

 

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日本酒に米と麹を加えて、さらに発酵させたのがみりんです。アルコール濃度が高いと酵母によるアルコール発酵は抑制され、コウジカビによる糖化が強く進むため、甘みが強くなります。日本酒のアルコールを酢酸菌で発行させたのが酢です。酢酸菌はアルコールを酢酸に変える働きがあります。

コウジカビの持つ力のうち、タンパク質分解酵素プロテアーゼの力を主に使ったのが、味噌です。味噌の材料はたんぱく質が豊富な大豆が中心で、味噌の旨味はたんぱく質が分解されたアミノ酸によるものです。材料の麹や米の比率を高くすると甘くなり白味噌になります。

糖を分解する力とたんぱく質を分解する力の両方を使ったのが醤油です。醤油は麦と大豆にコウジカビをはやした醤油麹から作られます。コウジカビにより麦のでんぷんが糖になり、大豆のたんぱく質がアミノ酸になります。これをさらに、乳酸菌と酵母で発酵させます。乳酸菌は糖から乳酸を作りアミノ酸を他のアミノ酸に転換します。酵母が糖からアルコールを作ります。

漬物は、麹の風味を食べ物に加えると同時に、食べ物の成分も分解し味を良くしたり、消化吸収を良くしたりします。

鰹節は、コウジカビの中でも乾燥を好むカワキコウジカビ(カツオブシコウジカビ)を鰹節の表面にはやすことで、水分を吸収し堅くすると同時に、たんぱく質をアミノ酸に分解して旨味を高めます。

■健康に良い理由

発酵食品が健康に良い理由は大きく分けて3つほど有ります。

1.発酵作用でもともと素材が持つ栄養分が分解され、消化吸収しやすくなる。

麹には、デンプンをブドウ糖や麦芽糖、オリゴ糖などの糖に変える『アミラーゼ』、たんぱく質をアミノ酸に変える『プロテアーゼ』などの酵素が含まれています。これらは、食品の栄養を消化・吸収しやすい形に変えてくれるのです。

2.発酵以外の代謝産物にも様々な栄養素が含まれ、それが体に良い。

コウジカビが繁殖するとき、B1、B2、B6などのビタミンB類が生まれます。B1はエネルギー代謝、B2は細胞の再生、B6は肌荒れや貧血を予防する働きがあります。しかも、吸収効率のいい天然型なのです。

ギャバというアミノ酸も作り出します。これは血圧降下作用や、神経の安定作用が認められています。その他、麹を使った日本酒には『α‐グリシルグリセロール』というコラーゲンや、ヒアルロン酸の生産を促す成分も含まれます。

3.腸内細菌のバランスを保つのに有効で、体に良い。

麹に含まれる酵素や栄養素は、腸内細菌のバランスを整える働きも。特にオリゴ糖は、腸内の乳酸菌・ビフィズス菌の効果をサポートしてくれます。腸内が健康になるため、便秘解消や免疫力のアップ、乾燥肌やニキビ、アトピーなどの肌荒れも改善が期待されます。

麹の健康効果

 

 

 

 

 

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これ以外にも、こんな健康効果も報告されていますので紹介します。

 清酒やその副産物には多様なペプチド性機能性物質が含まれており,「酒は百薬の長」を実証する効果が認められている。

①高血圧抑制効果

アンギオテンシン変換酵素(ACE)の活性を抑制することができれば血圧の過剰な上昇を抑制できると考えられる酒粕およびその分解物にACEの阻害作用があることを見いだし,9種類の関与成分を単離してそのアミノ酸配列を同定した

②貧血改善効果

フェリクリシン(Fcy)を代表とするフェリクローム類は,清酒中の着色原因物質として1967年蓼沼らによって同定された.Fcyは鉄錯体として高い貧血改善効果を示すことが明らかとなった.その他,各種血液生化学検査においてすべて良好であり,安全性に問題ないことも確認された.

③大腸炎改善効果

デフェリフェリクリシン(Dfcy)は,Fcyが鉄をキレートしていない,環状のペプチド部分のみの化合物である.フリーラジカルによって発生しやすいと言われている消化器疾患に着目し,Dfcyの作用を検討した.

デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を7日間自由に飲水させ,大腸炎を誘発した(コントロール群).テスト群にはDfcy(100 mg/kg/day)をDSS投与と同時に7日間経口投与した(テスト群).テスト群ではコントロール群と比較してすべての項目で有意な改善がみられた

醸造微生物を活用する食品素材開発より

お勉強はこれくらいにして、次回は実際に発酵食品を作って、味わって、健康効果を体感してみます。

参考:コウジカビ麹(こうじ)-からだにいいコトバ事典

 

 

 

 

List    投稿者 seibutusi | 2014-10-24 | Posted in ⑩微生物の世界No Comments » 

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