2014-09-21

【乳酸菌はどのようにしてヒトの免疫機能を正常化するのか?】ー3.腸は脳を支配している?

不安

 

 

 

 

(引用:http://nikkancareism.jp/archives/820

さて、今回は精神と腸内環境にどのようなつながりがあるか見ていきましょう。

今まででは、乳酸菌を摂取することにより、アレルギーやガンなどの病状が改善された事例は多く出ていましたが、新たに腸内環境を整えることが精神面に影響を与えるという事例はあまりありませんでした。マックマスター大学の消化器病学者であるStephen Collins教授も述べている通り、慢性的に腸の調子が悪い人は精神的にも不安を抱えていることが多く、これまでその原因は謎に包まれていました。

しかし、今から示すような事例が出てきたことにより、通常、腸内細菌の多くは消化を助け、エネルギーを作り出し、病気の原因となる悪いバクテリアを排除してくれるものですが、時によって内臓の動きを悪くし脳にまで悪い影響を与えることもあるのではないかと考えられるようになってきました。例えば下痢や便秘・ガス過多による下腹部の張りなどの症状が起こる過敏性腸症候群(注1)を経験した人の80%が不安とうつに悩まされます。また自閉症の人の腸内バクテリアは異常といえるレベルにまで数が増えることが多いのです。その他、研究者が行った実験をご覧下さい。

※注1)過敏性腸症候群:腸の検査や血液検査で明らかな異常が認められないにもかかわらず、腹痛や腹部の不快感を伴って、便秘や下痢が長く続く病気のこと。

◆臆病なマウスに冒険好きのマウスの腸内バクテリアを移植すると、臆病が治る

Collins教授らが2013年に行った研究からは、腸内のバクテリアの種類を変えられたマウスは振るまいが変わるということが分かっています。実験では臆病なマウスと冒険好きなマウスの2種のマウスを用い、一方のマウスの腸に存在したバクテリアをもう一方に移すということが行われました。はじめ冒険好きのマウスは暗い場所に入れられると柵の中で光を求めて動きまわっていたのですが、臆病なマウスのバクテリアを腸に入れられると暗闇の中の探索をやめたとのこと。反対に、臆病なマウスに冒険好きのマウスの腸内バクテリアを移したところ、冒険好きなマウスがそうだったように大胆な行動を起こすようになったそうです。Collins教授によると、これは脳由来神経栄養因子(注2)と呼ばれる、脳内の神経細胞の成長促進や維持を行うタンパク質のレベルが上昇したことが原因と考えられています。

※注2)脳由来神経栄養因子(略称:BDNF):脳内の神経細胞の成長を促したり維持したりする作用をもつタンパク質。記憶や学習においても重要な働きを持つとされる。BDNFは脳内で分泌され、学習・記憶を促すだけでなく、情動のコントロールや食欲を抑制し、また認知症やうつ病の予防にも効果的であるとされる。

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◆発酵乳を飲むと不安が減る

マウスは人間ではないので、Collins教授の研究によって腸のバクテリアが直接的に人間の精神に作用するとは言えません。しかし、自身のことを「懐疑的」だと称するカリフォルニア大学のEmeran Mayer教授も「動物の実験で得られたデータのいくらかは人間に対しても通用する」と認めています。

Mayer教授は腸内のバクテリアと人間の脳のつながりを証明した人物。2013年にMayer教授らによって発表された研究では、体にいい影響を与える微生物「プロバイオティクス(注3)」を含んだ発酵乳を健康な女性12人に1日2回・4週間にわたって摂取してもらい、他方で別の女性11人にプロバイオティクスを含まない牛乳を1日2回・4週間にわたって飲んでもらいました。

Mayer教授は実験の前後に女性たちに恐れや怒りを感じている人の写真を見せながら脳スキャンを行ったのですが、実験後、プロバイオティクスを摂取したグループの女性は恐れを感じる顔に対しての反応がプロバイオティクスを摂取しなかったグループと比較して減少していたとのこと。「プロバイオティクスを摂取した女性たちはネガティブな感情を『恐ろしいもの』として知覚しないようになっていたのです。また彼女たちの脳はストレスに対して反応しにくくなっていました」とMayer教授。プロバイオティクスを摂取した女性たちは実験後とくに気分の変化を伝えませんでしたが、不安やストレスには苦しまなかったそうです。Mayer教授らは現在、自閉症の子どもを対象に腸内バクテリアを移植するなど、さらなる研究を続けています。

※注3)プロバイオティクス:人体に良い影響を与える微生物。または、それらを含む食品、製品。

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◆腸内の状態が変わると自閉症の行動が変わる

さらにカリフォルニア工科大学で研究を行う神経生物学者のElaine Hsiao教授も腸内バクテリアが自閉症に与える影響について調べる1人です。

人間と同様に自閉症のマウスにおける腸内にも異常が起こっていることがあります。オモチャと他のマウスという2つの選択肢が存在する箱にマウスを入れた場合、自閉症でないマウスは他のマウスと遊ぶという選択肢を選び、自閉症のマウスはオモチャを選ぶ傾向があるのです。また仲間内で会話を行う場合、自閉症のマウスは仲間を呼ぶ声が小さく短いということ、さらに木の削りくずと大理石が入った瓶の中にマウスを入れると、自閉症でないマウスは大理石を削りくずの中に埋めるのですが、自閉症のマウスは大理石を埋めたり掘り返したりを繰り返すということも分かっています。

そこでHsiao教授が自閉症のマウスに3週間にわたってバクテロイデス属(注4)のバクテリアを含むアップルソースを投与したところ、いくつかのバクテリアの値が正常に戻り、マウス自体の振るまいも変化しました。

バクテリアを含むアップルソースをマウスに与えたところ、自閉症のマウスは大理石を埋めたり掘り返したりという行動をやめ、コミュニケーションの方法も普通になったのとこと。ただし「オモチャか他のマウスか」という選択肢ではオモチャという選択肢を選ぶままだったそうです。※注4)バクテロイデス属:嫌気性の腸内常在菌の一群。
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◆まとめ

腸内環境を整えることで、なにかしら脳に良い影響を与えていることは確かでしょう。その1つの理由として考えられるのは、脳は腸から進化したということです。

生物がそもそも誕生したのは、40億年以上前のことであり、たった1つの単細胞からなる単細胞生物として出現し、そこから多細胞生物へ進化していきました。その多細胞生物が、生き延びるために進化する過程で、1番はじめに「腸」という器官を作り出したのです。例えば、イソギンチャクやヒドラといった生物は、腸だけしか持ち合わせておらず、脳や心臓といった器官がありません。彼らは、入り口から入った食べ物を消化し、入り口から排出するという単純な構造で成り立っています。彼らは、まさに脳ではなく、腸でさまざまな判断を下していると言えるでしょう。

腸は、脳の指令なしに独自で、体内に入った有害物質をブロックしたり、また独自に、状況に応じて解毒作用を行ったり、さらには肝臓などの他の器官に対して指令を出したりしているのです。こうしたことが出来るのは、脳以外の臓器では非常に珍しいことなのです。

さらに、脳よりの腸の方が正確な判断を下します。脳は食べ物が安全かどうか判断出来ませんが、腸は出来ます。ファーストフードやコンビニ食品など食品添加物が多く含まれている食べ物も見た目が美味しそうであれば、脳はだまされ、多くの人は食してしまいます。しかし、腸は「この食べ物は体に良くない!」と吐き出したり、下痢を起こしたり、体が毒されてしまわないような判断を下すのです。このように、脳の誤った判断に無理やり腸を従わせていることが現代の様々な病気の元凶になっているとも言えます。

生物進化の歴史からみて、腸はあらゆる器官の原点である。また、実験データから腸内環境を整えることが脳に良い影響を及ぼしていると言える。
以上より、腸は脳を支配していると言えるのではないだろうか。

(参考文献)「乳酸菌生活は医者いらず」 藤田紘一郎

List    投稿者 seibutusi | 2014-09-21 | Posted in ④脳と適応, ⑩微生物の世界No Comments » 

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