2014-08-14

『菌塚に合掌』・・・日本の食文化を支える縄文の精神性

111106nattopower-thumb-350x250-30366ある食べ物をおいしい、または、まずいと感じることで、食物を摂取する、しないの判断をしています。例えば、塩分が不足すれば塩辛いものが欲しくなり、それを十分摂取すると、もうほしくなりません。また、体に悪い物質は、臭いとかまずいとかで、食べたくなくなります。

これは、体に不足する栄養素を摂取する行動をとるために、不足する栄養素を『おいしい』、体に悪い物質は『まずい』と、脳が判断して指令を出しているからです。このような感覚は、本能に基づく感覚で、過酷な自然の中で生きてきた、人類500万年の歴史の中で形成されてきたものです。

今でも、深い部分ではこのような感覚を、誰でも持っていますが、現代の人工物質まみれの食生活の中では、『おいしい』『まずい』の感覚すら、狂ってきています。 たとえば、市場社会では、商品としての食品は、安く大量に生産でき、腐らず長持ちしおいしいと感じる、必要があります。

そうすると、腐らないように大量の防腐剤や、刺激の強い人工調味料を加え、鮮度も深い味わいもなくなった加工食品が作られます。 そして、それこそが価値ある商品であると、膨大なお金を使ってTVCMでこの狂った観念を刷り込み染脳することで、販売量を拡大してきました。

しかし、本来の味わい深い自然な伝統食品からすると、最初にこれらの人工食品を口にしたとき、なんらかの違和感をもつはずです。しかし、狂った観念の染脳により、この違和感に蓋をされ、ただ刺激が強いだけの人工調味料の味を『おいしい』思い込み、正常な、味覚が麻痺してきたのではないでしょうか?

そうすると、本来の味わい深い自然な伝統食品とは、どんなものであり、それを再生するにな何が必要なのか?という課題が見えてきます。それは、自然の摂理に即した食の再生が、健康問題解決への糸口だけでなく、その奥には『人はどのような生き方をすべきなのか?』という深い問題意識を含んでいるということだと思います。

今回はこれらの糸口を紹介します。

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京都曼殊院に、人類をずっとさせてきてくれた菌類への感謝の気持ちを表した、菌塚があります。人間と他の動物はまったく異なり、神に似た特別な存在であると考える西洋人には理解できない石碑でしょう。しかし、このようなものを建立する精神性が、日本の食文化を支えてきたのだと思います。

ちいさきいきもの 菌類への謝恩の碑文(曼殊院・菌塚)

fe246109-s酵素工業の萌芽期・昭和初期の事業家が京都の東山・曼殊院に菌塚を建立している。その菌塚のホームページが2003年に開設されている。設立時の新聞報道記事や設立に賛同した産官学の諸氏が建立への賛同を碑文や記念誌に掲載している。日本人の縄文気質が色濃くうかがえ、ちいさきいのちへのいとおしき想いと菌類への謝恩が綴られています。

 画像はこちらからお借りしました

○設立者の碑文

私の一生の仕事とした 昭和初期の酵素工業は いわゆる萌芽期というべきもので、そこには幾多の試練が横たわっていた。 幸い近年学問のめざましい進歩により、新しい酵素が続々と開発されて、多くの分野に重要な役割を果たしていることは よろこばしいかぎりである。しかしその光の影にひそむめに見えぬ 無数億の夥しい微生物の犠牲にあまりにも無関心な人間の身勝手を反省し菌恩の尊さを称えようと、私は比叡山の西麓、名刹曼殊院門跡の霊地に菌塚を建立した。

先ず最初の仕事は建立場所の選択であった。日頃尊敬する紫野大徳寺、立花大亀老師のご助言によって曼殊院門跡を訪ね山口ご門主にお目にかかり、つぶさに菌塚の趣旨を説明し適当な敷地のご協力を懇請した。ご存じの通りこの付近一帯は歴史的風土特別保存地区に指定されており、きびしい制約がひかれているが、門主の深いご理解とご支持を得て、この地を確保できたことは幸いであった。次に感謝にたえないのは斯界の泰斗、坂口謹一郎先生が菌塚の題字の揮豪を引き受けてくださったことであった。 これによってこのたびの企てが半ば成功したと称して過言ではあるまい。さらに先生にはご上洛の機会に寸暇を さき、曼殊院門跡を表敬訪問をしてくださる等こまかいお心遣いをいただいた。あまつさえ菌塚建立をたたえる短歌をいただいた。

これのよに ゆかしきものは この君の 四恩のほかの 菌恩のおしえ

めに見えぬ ちいさきいのにち いとおしみ み寺にのこす いわのいしぶみ

菌塚は とわにつたえめ この君の 菌いとほしむ たうときみこころ

身にあまる光栄 頭の下がる思いである。

菌塚は これら物言わぬちいさきいのちの霊に謝恩の意志をこめて建てたものであるが、同時に菌にかかわる人々が風光に勝れたこの地を時折訪れて、菌塚に話しかけしばし頭をやすめるとともに、菌類の犠牲に報ゆる仕事をなしとげることをめいめいが約束できたら、いかにすばらしいかと思うものである。(元大和化成株式会社 取締役社長 笠坊武夫)

○次に賛同者の皆様から菌塚建立への祝辞を照会する。

・菌塚の建立に拍手(丸尾文治 東京大学名誉教授)

地球が生れて、そして何億年かして

小さな、小さな生命が

地球の上に、現われた、

それ以来、この小さな生き物は、常に

地球の上で、最も重要な役目を

つとめて来た

恐竜が天下を取ったと思われた時も

そして、人類が地球の主人となったと

思っている現在にあっても

微生物は、常に、目に見えぬ裏方として

地球の上で、一番大きな、一番大事な仕事をつづけて来ている

小さな小さな微生物が、この地球を

生命が生き続けて行ける環境に

保ちつづけるための、大きな、大事な仕事を

絶えることなく続けていろ

そしてまた、私達人類に、無限の喜びを

与え続けてくれている

この小さな生命の

大きな、大事な仕事をた⊥える

菌塚の建立に

心からの拍手を棒げる。

・菌塚に合掌(本江元吉 九州大学名誉教授)

たまきはるいのちを生きてちさきもの

いとなみてあるおおいなるわざ

天が下いきとし生けるものはみな

等しきものを人はおごりて

いく京のいのちを殺しつくりたる

ものをうばえるごうの哀しき

菌塚のこんりゆうここになしたもう

君がみわざはあやにとうとし

菌塚をおろがむかなた自然の理

はろかな光りみほとけのかげ

祈りこそ努力のあかし合掌は

照り返しうむ望みへのみち

いまはこれねぶつとなえむ手をあわせ

山川草木悉皆成仏

目に見えぬ小さな生き物にも感謝し、みんな仲間と感じながら生きる縄文の共同体的精神性。これこそが、日本の食文化を支えてきたのです。つまり、自然の摂理に即した食の再生 には、縄文の共同体的精神性の再生が不可欠ということなのです。

List    投稿者 sinsin | 2014-08-14 | Posted in ⑩微生物の世界No Comments » 

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