2013-07-22

太陽系を探検しよう-35.火星は一つの大きな原子炉だった

 
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最近の火星探査の結果から、火星にはかつて海があったことがわかってきました。火星にあった水(H2O)は地球の軌道付近にあったもの(前記事参照)が混入したと考えられます。
 
では、海のように存在した水は、どうしてなくなってしまったのでしょうか。

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核分裂の連鎖反応が起きた
 
まず、小惑星側にあった酸化ウランUO2が火星に来ます。しかし、それだけで発熱を伴う連鎖反応は簡単に起こりません。火星には反磁性物質のベリリウムBeが大量にあり、これがモデレーター(原子炉において核分裂の連鎖反応を維持させる物質で、地球上で実用に供されているのは重水、石墨、ベリリウムなどである)として働いたのです。つまり、火星にあったU235とBeが火星の地層内で高濃度で混在し、火星はひとつの大きな原子炉になっていたと考えられます。
 
その仕組みは、まずU235からのα線がBeにあたってBeから強い中性子が放出され、その中性子がBeの層を通過して熱中性子となり、それをU235が吸収して核分裂(バリウムBaとストロンチウムSrに分裂する)起こすという緩やかな連鎖反応が、火星誕生以来ある時期まで続いていたと考えられます。
 
その結果、折角できた海や河川や湖沼の水は次第に温度が上昇し、最後には全部湯気となって火星全体を覆い、上空で冷えて凝縮した水は豪雨となって地上に大洪水を起こし、それは煮えたぎる熱湯の洪水で地上に貯まる間もなく再び蒸発するということを繰り返します。そのようなことを繰り返しているうちに、湯気の温度が高くなりすぎて、水分子の平均速度が火星の逃脱速度を超えてしまい、そのため火星には現在水はなく、かつてそれがあったことを示す痕跡だけが残っているのです。
 
 
高温高圧の水が脱出速度を超えた
 
火星の逃脱速度は5.0km/s。ジーンズによれば、逃脱速度(U)とガス分子の平均速度(v)において、v=U/4ならば数千年内に、v=U/5ならば数億年内に惑星から逃げ去ってしまう、ということである。火星におけるU/4=1.25㎞/sであるから水蒸気がもし1000℃になっていたら数千年で火星の水は失われてしまう計算です。500℃でもU/5=1.00㎞/sですから、水は数億年で逃げ去ってしまうことになります。
海や川があるうちはそれが地中の原子炉の冷却水となって連鎖反応の暴走を防いでいたわけで、それが全部干上がれば核分裂連鎖反応は暴走し、地下の原子炉は全部一斉に旧ソ連のチェルノブイリ原発のような状態になってしまったでしょう。
そのときの熱と圧力が惑星中最大の火山オリンポス(高さ25000m )を作り出し、その後の地層の冷却で地表が収縮し、発生した大きな割れ目が大峡谷として残っているのです。mars_02.gif
オリンポス火山の大きさ
参照・引用は、武田福隆著『太陽系の起源』(近代文芸社)

List    投稿者 kumana | 2013-07-22 | Posted in ⑫宇宙を探求するNo Comments » 

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