太陽系を探検しよう-28.太陽系の起源、新説「磁場説」(1)
今回は太陽系の起源に関する新説を紹介します。提起しているのは武田福隆(たけだとみおき)さん。2009年に著書『太陽系の起源』で発表されました。経歴は教員、東京都の技術職員、化学メーカー勤務など、宇宙に関しては全くの素人という方です。今回紹介する説は「磁場説」ともいえる理論です。一言で云えば、原始太陽が超伝導体となり、それによる磁場が秩序となり現在の太陽系の姿が形成されたとするものです。
宇宙を統合している力=統合律を考える場合、地球や宇宙スケールでは、重力が支配的といわれます。しかし、この説に触れると、電磁力も大きく影響している可能性が感じられます。この著書の副題が「新しい宇宙論の始まり」と書かれている所以です。
本論に入る前に、まず、その著書の冒頭に書かれたユニークな「はじめに」の一部をご紹介しましょう。
人間の棲んでいる地球という天体が属している太陽系という惑星系の起源が分かったからといっても、ホンの一部の人の好奇心を満足させるだけであろう。
そのような好奇心に駆られて他の何物をも顧みず、約40年間に亘って考察を進めて来たバカな男がいる。(中略)昇進昇格に固執せず、宇宙の起源や太陽系の起源などに心を寄せ続けて来た男である。
ここに述べる太陽系の起源のヒントは昭和38年、彼が39歳の春、出勤途中の南武線の電車の中で閃いて、興奮のあまり、更新したばかりの定期乗車券を紛失した時の案である。
その時のアイデアを100%生かし、その後得られた新たな知見を加え、年金生活の十分な時間を生かしてまとめたのである。
では、その理論を要約しながら紹介します。
太陽系には元々全ての元素が存在している
天の川銀河の中心にあったブラックホールからガス塊がまき散らされる。このガス塊は超新星爆発の何千倍もの高温と高圧を受け、あらゆる元素および化合物を含んでいた。その一部が銀河中心から約3万光年の今の位置まで流れてきた。
参考図
(出典アストロアーツ)
原始太陽の誕生
ガス塊の中の物質はすべて微塵となって存在していた。微塵は気体から成るガス雲と共に、最初にブラックホールから飛び出る時に与えられた運動エネルギーによって、廻転運動をしていた。この廻転運動によってガス塊は少し横に拡がり、廻転の中心(重心)では核が生ずる。ある程度核が大きくなると、微塵を含む水素やヘリウムなどの気体成分がその上に降り積もる。このようにして誕生した原始の太陽は図―1のようなものであった。
(著書より)
原始太陽は超伝導体となり巨大な磁場に覆われる
核は高密度になり超高圧となる。その時原始太陽はまだ超低温のままである。このような超低温超高圧の組み合わせで直ちに想起させられるのは超伝導現象(金属などの電気抵抗がゼロになる現象)である。
最近では超高圧で極低温にすれば大抵の元素は超伝導体になると考えられている。水素は理論的には400万気圧なら常温で超伝導体になる。固体水素約4万kmの層厚があれば、その底部は超伝導帯となり、そこには超伝導が流れることになる。超伝導体には電気抵抗ゼロの超電流が生ずる。原始太陽にできる超伝導帯は原始太陽内の球面であるから、そこに生じる超電流は最初は乱流でもやがて原始太陽を一周する強大な環電流を形成したであろう。そのような環電流があれば、原始太陽は図―2のような巨大な磁場に覆われる。
(著書より)
物質は磁化率によって3種類に分かれる
全ての物質は、いずれも磁気に感応して独特の行動をする。感応の仕方により、物質は大別して次の3種類に分けられる。
①強磁性物質:磁場に入ると自分自身も磁石になる。鉄、クロム、ニッケル等。
②常磁性物質:磁場に入ると磁気の強いほうへ引きよせられる。酸化鉄や酸素等。
③反磁性物質:磁場の弱いほうへ押しやられる。殆どのイオン、有機化合物等。
強磁性を除いた物質の磁気に対する感応の度合いは磁化率で表される。
図―3は磁化率による分類図、表―2は主な物質の磁化率である。
(ポップアップ)
(ポップアップ)
単位はすべてcgs・emu・106です。
原始太陽の周囲は磁場で満たされます。周辺の物質はこれに晒され、磁力に対する感応差によってそのふるまいが既定されます。磁場による秩序が与えられることになるのです。その詳しい様相と多様な惑星が形成される必然構造は次回紹介します。
お楽しみに~
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.seibutsushi.net/blog/2013/01/1366.html/trackback