2012-07-05

シリーズ 超極小『素粒子』の世界19 ~現在の原子モデルとは?~

皆さん、こんにちは 😀
今回は、シリーズ 超極小『素粒子』の世界15 ~原子や電子ってどこまで観測されているの?~に続き、量子物理学を原子モデルに適用して成功したと言われているボーアの原子モデルに迫ってみたいと思います
ただ、ボーアと言われても、ご存知じゃない人もいると思うので 🙄 、最初にボーアさんの成果をご紹介です ボーアさんとは
1.(これまでの1重軌道のモデルから)同心円の複数軌道のモデルを提示

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2.周期表に繋がる原子モデルを提示
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では、続いて、もう少し詳しくボーアさんの成果について、紹介してみたいと思います
シリーズ 超極小『素粒子』の世界15 ~原子や電子ってどこまで観測されているの?~の記事で、長岡さんやラザフォードの原子モデルに対しては、
>電磁気学の理論によると、原子核の周りを周回運動する電子はエネルギーを失い、原子核に引き寄せられてしまうはずだからです。
という理由により、当時は支持が得られなかったことをお伝えしましたが、ボーアはどのような方法でこの問題を突破したのでしょうか 😀
①ボーアの原子モデル
この際、光を波と考える古典力学の理論を捨てるべきではないかと、ボーアは考えました。では、それに変わる理論とは、なんだろう?それは、「光のエネルギーは、とびとびである」とするプランクのエネルギー量子仮説(1900年)。そして「光はhν(プランク定数×振動数)というエネルギーを持った粒」と考えるアインシュタインの「光量子仮説」(1905年)です。
ボーアは、この2つの仮説を土台にして、ラザフォードの原子モデルを、次のように考えてみました。プランクのエネルギー量子仮説を原子の構造に置き換えてみると、原子のエネルギーは「とびとび」になるはずだ。この軌道を「量子化された軌道」と呼ぼう。
さらに、電子は「動くと光を出してエネルギーを失う」はずであるが、例外的に、ある軌道上を回っているときには、同じエネルギー状態にあると考える。こうすれば、ひとまず電子はエネルギーを使わないで安定している。だから、光を出してエネルギーを失わなくてもいい。これは「定常状態」と呼ぶことにする。 
以上の考えをまとめると、電子はどこかの軌道上を安定して回っていれば、光を放出しない。したがって、エネルギーを失った電子が原子にぶつかって、大きさを保てなくなるようなことはない。  

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②原子の線スペクトル
また、ボーアは、原子のスペクトルの式の意味を理解することが、原子と電子の謎を解くことだと考えました。
古典的な物理の理論では、電子は原子核のまわりを回りながら光を出してエネルギーを失い、やがて、原子核に向かって落下してしまうと先に説明しましたが、その時に原子が出す光を観測すると、エネルギーを失うにしたがって、振動数が少なくなってしまう。そのため、特定の振動数が、はっきり現れる「線スペクトル」にはならない。つまり、古典理論では、原子の出す光のスペクトルは説明できないのです。
そこで、ボーアはアインシュタインの「光は「hν」というとびとびの値のエネルギーを持った粒」だという考え方を取り入れることにしました。
電子は、いくつかある軌道の中でも、外側の軌道を回っている時のほうがエネルギーは大きい。もし、外側の軌道を回っている電子が、それより内側の軌道にジャンプすれば、余分になったエネルギーhνぶんだけ、光量子となって出ていく。反対に、内側の軌跡を回る電子が、hνのエネルギーを持つ光量子を吸収すると、今度は電子自体が外側の軌道にジャンプすると考えればいい。ボーアは、このように、電子がある軌道から別の軌道へジャンプすることを「遷移(せんい)」と名づけました(または量子飛躍とも呼ぶ)。
この考えで原子のスペクトルを見てみると、遷移のたびに光量子がやりとりされるから、その時の光の振動数が「線スペクトル」となって、しっかり現れることになるというわけなのです。
 
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ただし、このモデルは、水素の線スペクトルの説明はできましたが、ヘリウム以降の説明ができず、のちにドイツの物理学者ゾンマーフェルトによって改良が加えられています。ボーアは電子の軌道を円と考えたが、ゾンマーフェルトは、これを楕円軌道に置き換え、かつ水素以外の原子でもエネルギーが、とびとびになることを説明できるように式を一般化させました。
③電子配置と周期表
もう一つ、ボーアの成果として、元素は電子配置によって、性質が左右し、その軌道が周期表の周期と対応していることを説明したというのがあります。一番外側の殻にいくつ電子が納められているかによって、元素の性質(結合のしやすさ)が決まってくるということ、またそれぞれの殻には収まる電子の最大数が決まっているということを提示しました。
(最初の表で、一番左の列が最外殻にある電子(価電子)が1つの元素、2番目の列が価電子が2つの元素・・・そして、最右列が全ての殻の電子が埋まっている状態、つまり、結合しにくい元素というようになっています
また同周期の原子では、原子番号が大きくなるほど原子核の電荷が大きくなって電子が強く引き付けられるため原子半径は少し小さくなるのだそうです このあたり、なかなかおもしろそうですよねーー
④その後の原子モデル
さらに、その後、実際には電子の位置と運動量は同時に知ることはできず、ある点における電子の存在確率でしか知ることはできないことが分かっています。(電子の位置を測定するためには、波長の短いガンマ線を当てる必要があるが、エネルギーが強いため、電子自体がとばされてしまうため。)
そして、現代の量子力学では、電子はもはや「確定した位置と速度を持つ点」ではなく、波動関数であらわされる存在であり、空間におけるこの確率は、雲のようにぼんやりと分布するものになり、このモデルを電子雲モデルと呼んでいます。
簡単に言うと、単純な同心円ではないということです。
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以上見てきたように、ボーアモデル、さらにそれ以降分かったことから考えられる現在の原子モデルとは?
1.電子は何重もの軌道半径を描いている
2.各半径は一定の軌道ではなく、ゆらぎを持っている。但し、ゆらぎの範囲は軌道とは重ならない。

イメージ図としてはこんな感じ (色の濃い部分が電子の存在する確率の高いところ
20080910185449.jpgel_cloud23.jpg
以上、2回にわたって、原子モデルの変遷を押さえてきましたが、しっかり観測されてはいないとは言え、線スペクトルや、周期表など、現象として確認され、現実世界の中で生かされているということが分かっていただけたかと思います
あとは、いろんな現象と照らし合わせ、そうだと考えれば、全ての面において、スッキリするという仮説、モデルになっているか
このあたりは、引き続き、いろんな現象を押さえながら、見ていけたらと思っていますので、楽しみにしていてくださいね

List    投稿者 tateko | 2012-07-05 | Posted in ⑬相対性理論・量子力学・素粒子No Comments » 

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