2011-07-28

今週の福島原発(7/20-7/26)福島原発は収束に向かっている?

先週、7月19日に東電から新しい工程表が公表されました。敷地境界の放射線量の値が安定していることから、ステップ1の目標「放射線量が確実に減少傾向になっている」の達成を確認したとなっていますが、一方で同じ報告書に発電所港湾内の放射能濃度は依然として高いとも書かれています。
単に、放射性物質の漏れ出す場所が、大気中から海水中に変わっただけで、メルトダウンした原子炉から相変わらず放射性物質は漏れ出し続けているのではないでしょうか。本当に福島原発は収束に向かっているのか、今週の福島原発の動きを見てみましょう。
◆一週間の動き
今週一週間の福島原発の動きをNAVER より引用
7/20 台風接近により作業の見合わせ
 出典47NEWS
7/21 水処理システムが自動停止
 出典 時事ドットコム
7/22 3号機の燃料プール冷却を一時停止
 出典 時事ドットコム
7/23 汚染水浄化システム復旧作業が終わり運転再開
 出典 FNNニュース
7/24 無人ヘリによる1号機建屋上部のダストサンプリングを実施
 出典 RBB TODAY (ブロードバンド、その他のニュース)
7/25 汚染水処理システムのうち、塩分除去装置が停止
 出典 読売オンライン
7/26 炉内の燃料に直接散水、冷却方法変更
 出典 日本経済新聞
今週も、循環冷却は動いたと思ったら止まりを繰り返していて楽観を許さない状況です。福島原発の事故の被害を出来るだけ小さく報道しようとする政府・東電に変わって、引き続き出来る限り正確にお伝えしていきます。
今週は、「原子炉の冷却方法を変更するのはなぜ?」、「セシウム牛問題の本質は?
」、「放射性物質による土壌汚染の食物への影響」
をお届けします。
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◆3号機の原子炉の冷却方法を変更するのはなぜ?

東京電力は26日、福島第1原子力発電所3号機の原子炉内にある核燃料を効率よく冷やすため、冷却水の注水方法を変更する作業に着手すると発表した。緊急炉心冷却装置(ECCS)の配管などを転用、冷却水が燃料に直接降り注ぐようにする。原子炉圧力容器の温度を早く下げる効果があり、原子炉の水温がセ氏100度を下回る「冷温停止」の早期達成を目指す。2011/7/26 日本経済新聞より引用

現在3号機への注水は通常の給水配管を利用しており、圧力容器横の給水口から水を供給した場合、圧力容器とシュラウドと呼ばれる炉心の覆いとの間を通り、燃料棒の下から給水されます。
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資源エネルギー庁 「原子力2010」より引用
今回見直された冷却方法は、冷却水を燃料棒の上部から直接散水する方法で、非常時の炉心冷却装置の配管を利用します。燃料棒が滝に打たれる形になり、冷却効果が高いとされている。少量の冷却水で効果的に冷やせれば、漏れ出る汚染水を減らせる利点もあると考えられています。
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緊急被爆医療研修のHPより引用
『なぜ冷却方法を変えたのか?』
まず考えられるのが、3号機の圧力容器内の温度が高温状態になっているということではないでしょうか。現在の注水方法では冷温停止状態にすることが難しいため、直接放水方式に切り替えたと予想されます。
2011年07月03日(日) の時点で、原子炉給水ノズル温度が146.4℃ 、容器下部温度が122.8℃とされている。参照:http://atmc.jp/plant/temperature/?n=3
しかし、以降の容器温度が更新されていないため、現在の状況は不明です。
一方で、3号機は既にメルトダウン→メルトスルーしており、燃料棒が容器の底に溜まっている又は容器を突き抜けて格納容器に飛び出していると考えられています。その場合、直接放水するによる効果は見込めず、従来の給水方式の方が効果が高いかもしれません。
あるいは、メルトダウンはしているのものの、一部は燃料棒の形状を保っており、容器の底が開いていることで容器内に水が上手く溜められない状態なのかもしれません。
いずれにせよ、正確な状況が分からないため断定することはできませんが、今後も3号機の状況は注視しておく必要があります。
◆セシウム牛問題の本質は?
マスコミを中心に連日セシウム牛報道がされていますが、なぜこのような問題がおきたのか、本質的なところに触れられることはありません。
まず、セシウム牛問題が起きた経緯を整理します。
この問題は、8日、福島県南相馬市の生産者から東京都の食肉処理場に搬入された食用の牛11頭から、国の暫定基準値の1キログラム当たり500ベクレルを上回る1530ベクレルから3200ベクレルの放射性セシウムが検出されたことが発端になっています(詳細はこちらをご覧ください)
原因は、放射性物質が撒き散った宮城県産のわらを牛が食べて内部被曝してしまったと言われています。
※豚のエサは輸入トウモロコシや大豆を原料とする配合飼料で、屋内で管理されているので、放射性物質がはいりにくいとされています。
※また、鶏に関してもエサは大豆などの配合飼料であり、放し飼いにされていなければ放射性物質がはいりにくいとされています。(参考:豚肉・鶏肉は放射能汚染の可能性小
食べ物に今回の問題の原因があるのは確かですが、それだけではないと思います。
下の図を見てください。この画像はカレイドスコープ「セシウム牛のストロンチウム、プルトニウム汚染の可能性は」で掲載された画像で、国会の質疑でもよく使われている群馬大学・早川由紀夫教授が作成した放射能汚染マップと、読売新聞が作成した7月18日時点で発覚したセシウム牛の頭数と産地のマップを重ねた物です。
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セシウム牛の「産地」と、早川教授の放射能汚染マップの汚染地域が、ぴったり合致していることが分かります(合致していないところは、赤丸のところだけです)。これより、事前に放射性物質の拡散を予測し、対応していればセシウム牛の問題は防げたことがわかります
日本政府はSPEEDIという緊急時迅速放射能影響予測システムを持っていましたが、事故後すぐは公表しませんでした。つまり、福島原発事故直後の政府・官僚の「安全です」「直ちに影響はない」報道に象徴されるように、自分達の保身に終止し、本当に必要な情報と対応を報道しなかったことが問題の本質ではないでしょうか。
このように考えると、すでに日本の国土は政府・官僚の報道以上に汚染されていることが考えられます。現在の土地や米をはじめとする穀物はどのような状況なのでしょうか?
◆放射性物質による土壌汚染の食物への影響
日本原子力研究開発機構福島県内の校庭を調査した結果を見ると、放射性物質の影響は競争5cmに留まっているそうです。密度が低く、深くまで放射性物質が浸透している可能性のあった砂においても、放射性物質が表層5cm 程度に留まっていることが分かります。そのため、土壌を掘り返した後であっても、掘り起こした深度から5cm下までを汚染域として捕らえることができるようです。
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この画像はこちらからお借りしました
日本放射線影響学会の福島原発Q&A(ver14)では農地の放射能汚染について次のように説明しています。

ヨウ素131 は、半減期が短いので放射性物質が飛来しなくなったあと、数ヶ月後には壊変して影響はなくなります。セシウム137 は、半減期が30 年と長いのですが、土壌に強く吸着されます。そして、その結合は、ほとんど離れない強固なものですから、ある程度時間がたてば、セシウムは土壌と結合することで徐々に植物へも移行しにくくなります。しかし、外部被ばくを少なくするとともに、セシウム137 で汚染されたちり・ほこりなどを体内に取り込んで内部被ばくをしないために表層5cm 程度を削って土を入れ替えることが安全に農業を続けるために必要です。いずれにしても、削った土を安全に処分する必要がありますので、原発からの放射能の放出が終息した後に、政府は、専門家の意見を取り入れて被ばく防護処置を速やかに実施する必要があります。

 どうも、農地の放射能汚染は土の表面5cmに留まり、セシウムは土と固着して植物に移行しにくいので大丈夫と言うことのようですが、表層5cm以下の放射能はゼロではありませんし、セシウムが植物に移行する量がどの程度少ないのかもはっきりしません。大丈夫と言っている機関が原発を推進してきた機関でもあり、日々摂取している食物への影響はどうなっているのか気になるところです。
さらには、6月、農水省が下水汚泥の農地還元に放射性物質汚泥の流通を認めました。『放射性セシウムの濃度が1キログラム当たり200ベクレル以下のもの』については、流通ルートなどを管理したうえで、肥料として利用できるとする新たな基準をまとめたのです。これにより、さらなる米の放射線物質汚染が拡大することになるでしょう。

List    投稿者 nodayuji | 2011-07-28 | Posted in ⑪福島原発問題No Comments » 

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