2011-06-01

「放射性物質の拡散予測」シリーズ4 ~海に流出した放射性物質はどこへ向かうのか?


前回の記事では、大気中の放射線量の拡散予測を行いました。
今回は、海への拡散に焦点を当てます:-)

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■海のチェルノブイリ
福島第一原発の事故で、海中にはどれ位の放射性物質が流出しているのでしょうか?
東京海洋大学名誉教授水口憲哉氏によると、その流出経路は少なくとも6つあります。以下、同氏『海のチェルノブイリ』(『世界』23年6月号所収)より引用。

①大気中に飛散して気流等により運ばれ海洋へ降下したもの。
②漏れ出た量。2号機の作業用ピットの亀裂からの流出が確認され漏出部はふさがれたが、その間に流出した放射能総量は10ペタ(10の5乗=1000兆)ベクレルのオーダーとなるという東海大学原子力工学科高木直行教授の試算がある。(中略)干潮で亀裂が発見されるまでに流出した量は試算に入っていない。
③地下水からの放射能汚染水の海への浸出。
④原発敷地及び周辺高濃度汚染地域から雨水と共に流れ込んだ量。
⑤2度の水素爆発等で敷地内に散乱した、高濃度放射能で汚染された瓦礫や残骸が、度重なる大量の放水によって海へ流入した量。(中略)
⑥意図的に捨てられた量。「低濃度」汚染水と称して海に捨てられた量は1万0393トンで、含まれる放射性物質の総量は約1500億ベクレルだったと経済産業省原子力安全・保安院は4月15日発表している。

その総量はチェルノブイリ原発事故と英仏の再処理工場を足してもなお上まわる海洋の放射能汚染(同上)になると、水口氏は警告しています。
   
   
   
■海流に乗って1000キロも拡散する放射性物質
では、このように流出した放射性物質は、海中でどのように拡散しているのでしょうか? 日本海洋学会では、シミュレーションに基づき次のような推論を公表しています。

事故から2カ月以上が経過し、海洋に放出された放射性物質はかなりの距離を運ばれていることが予想される。数値モデルによる予測ではいったん南下したのち北上するケースと、南下したのち黒潮続流に取り込まれるケースがある。また、モデルの予測計算結果と比較するために、JAMSTECが4月上旬に沖合30km観測点で放流したアルゴフロート(漂流型測器)の大半は、南に移動したのち黒潮続流に取り込まれ、東の海域へと急速に広がっている。

「日本海洋学会 東日本大震災関連特設サイト」より

放射性物質を含んだ汚染水は、海中に流れ込んでもすぐに溶け込まず、塊状になって少しずつ広がり、福島沖から(親潮に押されて)沿岸を南下し、その後、房総沖を東へ進む黒潮に合流することによって、一気に太平洋へ拡散しているものと考えられます。海中に溶け込みにくい理由は、汚染水の発生源が原子炉に注水されたものであったとすれば、その大部分は淡水であり、またその水温は海の温度より高いと考えられるからです。原発周辺の高濃度汚染地域から河川を通じて海へ流れ込んだ場合でも、淡水であることから、近い性質を持っているでしょう。
放射性物質を含んだ汚染水は、海流ばかりでなく、汚染水を浴びたり飲み込んだ海洋生物の回遊によって、さらに遠方かつ広範囲に拡散していきます。
1954年(昭和29年)3月1日、マーシャル諸島近海のビキニ環礁で行われた水爆実験では、5月下旬から6月にかけて日本の調査船が近海を調査した結果、ビキニ環礁から1000キロも東に離れた地点でも、汚染が確認されています。海中の拡散は、大気中の拡散に比べて目に見えにくいだけで、途方も無い被害をもたらす恐れがあるのです。
次回記事では、この海中の拡散によって、海洋生物への影響がどの程度のものになるのかを追求する予定です 8)
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おすすめ記事
『福島原発の汚染水:拡散の仕組み』
『1000km離れても放射能汚染されていた。ビキニ環礁の事例』
※冒頭の世界地図はサイト「地学教室」よりお借りしました。

List    投稿者 yaga | 2011-06-01 | Posted in ⑪福島原発問題No Comments » 

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