2011-05-09

「放射性物質の内部被爆」シリーズ~放射性物質は、どのような経路で体内に取り込まれるか?

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政府やテレビでは、放射線量の影響について、外部被爆のみに焦点が当てられていますが、本当に怖いのは内部被爆=放射性物質の吸入や摂取です。
体内に取り込まれた放射性物質からは、至近距離から全方向へ放射線を放射するため、臓器や器官に大きな影響を及ぼすといわれている。
今回の記事では、体内に放射線が取り込んだ場合、どのような経路を辿るのか、そしてどこに蓄積されるのかをまとめていきます

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1.放射性物質は、どのような経路で体内に取り込まれるか?
放射性物質が体内に取り込まれるときの経路は次の3通りが考えられる。
1)経口摂取
放射性物質が含まれる水や食物などを飲み込むことによりその放射性物質が体内に取り込まれる場合。
2)吸入摂取
放射性物質が含まれる空気を吸い込むことによりその放射性物質が体内に取り込まれる場合。
3)経皮吸収
皮膚を通して放射性物質が体内に取り込まれる場合。ただし、皮膚はほとんどの放射性物質に対してその侵入を防ぐことができるので、傷口がある場合を除いてこの経路による放射性物質の体内への取り込みは問題とならない(水または水蒸気状のトリチウムを除く)。

以上より、皮膚から体内に取り込まれる可能性は少ないと考えられるので、ここでは「経口摂取(食べることで摂取)」「吸入摂取(呼吸による摂取)」に限って整理します。

2.経口摂取:食べることで放射性物質を取り込む場合
食物や飲料水に混入した放射性核種が経口摂取されると、消化管(胃腸管)で吸収され血液を通じて体内中に移動する。
消化管における放射性物質の体内への吸収率はその物理化学的特性に依存するといわれている。すなわち、元素としての性質とそれがどのような化学形態になっているかに大きく依存する。
放射性物質が水や有機物を構成するもの、あるいはナトリウムやカリウムのような1価の金属、塩素やヨウ素のようなハロゲンとの塩などを構成するものであれば一般的に消化管吸収率が高い。
一方、トリウムやプルトニウム(アクチニド元素)は、消化管吸収率は非常に低く、ほとんど吸収されずに排泄される。

放射性核種の消化管における吸収率は、このように放射性物質の化学的性質によって決まるが、年齢による影響もある。多くの放射性物質について、乳児は成人より消化管吸収率が高い
乳児と成人の消化管吸収率の違いはリンクを参照。
血液中に入った放射性物質は、その化学的性質にしたがって特有の体内組織(親和性臓器)に移行し、そこに沈着する。例えば、トリチウムやセシウムなどは全身にほぼ均等に分布・付着し、カルシウムやストロンチウムは骨に、ヨウ素は甲状腺に付着する。各組織に沈着した放射性核種は時間の経過にしたがい血液中に流れ、再吸収されるものもあるが、最終的には腎臓、消化管などから体外に排泄される。

3.吸入摂取:呼吸によって放射性物質を取り込む場合
呼吸によって放射性物質を摂取する場合、放射性物質は気道や肺に付着するが、体内への吸収は物理的・化学的特性に加えて、放射性物質の粒子径に大きく依存する。
気道に付着した放射性物質は、体内吸収率の高いものであれば経口摂取とほぼ同様の傾向を示す
セシウム-134,-136は経口摂取と同等の吸収率、セシウム-137は経口摂取の3倍の吸収率を示す。ヨウ素-129,-131,-133は経口摂取の概ね1/3の吸収率を示す(各放射線の吸収率の違いは未解明だが、気道にて吸収~組織間液・血液~各臓器へと移動する)。
しかし、プルトニウムは体液に溶解しにくい特性をため、吸入摂取特有の傾向を示す
大型~小型のプルトニウム粒子は気管に付着するが、気管にある繊毛が気道に入った塵埃などの異物を粘液とともに気道の上部に送すため、プルトニウム粒子は最終的には食道から体外に排泄される(吸い込んだプルトニウムの3/4)。
しかし、極小粒子の場合、肺の深部である肺胞に侵入し、長期間そこに留まり肺ガンを引き起こす原因となる(吸い込んだプルトニウムの1/4)
また、長い時間をかけて肺胞で吸収され、リンパ節を通り、最終的には肝臓や骨に蓄積することになります。
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原子力百科事典より引用

4.体内のどの臓器に吸収されるのか?
体内に取り込まれた放射性物質は、血液やリンパ液を通じて全身をめぐります。
各放射性物質の物理的特性によって、特定の臓器や組織に吸収される場合と身体全体に分布する場合があります。
代表的な放射性物質は、以下の通り。
・ヨウ素-131が、甲状腺に蓄積(蓄積メカニズムは追求課題)
・セシウム-137が、カリウムと化学的特性が似ているため、筋肉に蓄積
・プルトニウムは、吸引する場合、肺に蓄積。その後吸収され肝臓や骨に蓄積
・ストロンチウムが、カルシウムと化学的特性が似ているため、骨に蓄積
・トリチウム、カリウム-40、セシウム-137などは身体全体に分布するので全身が放射線の照射を受ける
・ウランは、吸引する場合、肺に蓄積。その他骨や腎臓に蓄積される(蓄積メカニズムは追求課題)
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原子力百科事典より引用

5.中間まとめ
・内部被爆で体内に摂取される経路は、「経口摂取(食べることで摂取)」「吸入摂取(呼吸による摂取)」の2通り。
・「経口摂取」の場合、放射性物質の物理的・化学的特性によって消化器管における吸収率が決まる(プルトニウムは吸収されない)
・消化器官における吸収率は大人と幼児でも異なる
・「吸入摂取」の場合、物理的・化学的特性に加えて、放射性物質の粒子径によって、吸収経路が異なる
・「吸入摂取」の場合、ヨウ素・セシウムの吸収量は凡そ「経口摂取」の場合と同じのため、「食べても」「吸っても」体内に吸収される
・プルトニウムは、極小の粒子が肺胞に蓄積し、肺がんを引き起こす

各放射線物質が体内でどのように取り込まれていくかが見えてきました
次回の記事では、福島原発の現在の放射線物質の流出度合を元に、どのような経路でどのような放射線物質が体内に取り込まれる危険性があるかをまとめていきます。

List    投稿者 andy | 2011-05-09 | Posted in ⑪福島原発問題1 Comment » 

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コメント1件

 日本を守るのに右も左もない | 2012.07.16 18:30

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