2011-02-05

雌雄の役割分化14~なぜ真猿や類人猿は乱婚をするのか

前回のテーマは、オス猿の序列統合でした。真猿以降の集団化した猿のオスは、日常的な序列闘争により力の序列を共認することで、性闘争を抑止して集団の崩壊を防いできました。そして、進化するにしたがって力の原理だけではない幅の広い共認形成力が、序列闘争の制覇力として求められるようになって行きました。

序列闘争と共認により、強固な序列規範を形成し、集団化した真猿や類人猿ですが、近年の観察結果では、ボス以外のオスとメスが交尾する乱婚が数多く報告されています。性闘争、縄張り闘争の本能を強化した哺乳類では、乱婚は珍しい現象です。なぜ、真猿、類人猿では乱婚が見られるようになったのでしょうか。

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チンパンジーのかけおち

チンパンジーは乱婚で優位のオスに交尾の機会が多いが、野生では下位のチンパンジーが「かけおち」することが観察されている。草陰に隠れていた気の弱いオスのところに、いつのまにか一匹の発情中のメスが寄り添っている。そして、一日、長い時は一週間以上も群れの中心から離れて遊動範囲の周縁へと「かけおち」する。時には、オスに手荒に叩かれたりしながらしぶしぶ「かけおち」するペアもいる。ニホンザルのDNA解析から、ボスよりも下位のオスの子孫の方が多かったという研究結果があることから、チンパンジーも同じようなことが予想されるが、まだ報告はされていない。

●ニホンザル(杉山幸丸編、サルの百科より)

野生状態におけるニホンザルの社会構造の研究によると、集団内の高順位のオスはメスを獲得してたくさん交尾を行っているものの、子どもの血液から父性判定をしてみると、子どもの数に父親の順位はあまり関係がない、という報告があります。
このことから、ニホンザルは集団内で明確な序列順位があるものの、必ずしも一匹のオスに複数のメスが集中する首雄集中婚ではなく、ゆるやかな婚姻関係(乱婚)を築いていることがわかります。

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この画像はこちらからお借りしました

●一般哺乳類で乱婚が少ないのはなんで?

哺乳類のオスの性回路は、メスの発情によってスイッチが入ると考えられます。性回路のスイッチが入ると、オス同士が血みどろの性闘争を始めます。メスが発情していないのにオスが血みどろの性闘争をしても交尾できないので無駄です。

一方で哺乳類のオスは、発情期の性闘争とは別に、日常的に縄張り闘争も行っています。これは、性闘争のスイッチが入っていなくても日常的に行っており、これにメスの発情と言う状況が加わると、縄張りを越えてメスの奪い合いが起こり、通常の縄張り闘争よりも激しい性闘争が始まると言う関係になっています。

そして、血みどろの性闘争の結果、負けたオスは敗従本能が働き性のスイッチがオフになり、縄張りを追い出されたらあきらめて、しつこく何度も性闘争を挑んでくる事はありません。これは、オスが集団を形成するシカなどにも見られる行動で、勝者以外のオスは交尾行動を起こしません。

さらに、一般的な哺乳類のメスは強者選択本能があり、性闘争に勝ったオスだけを受け入れます。従って一般哺乳類では乱婚的なオスメス関係はあまり見られません。

●真猿・類人猿は何で乱婚が見られるの?
これに対して、真猿、類人猿はオスもメスも大きく変化しています。まず、メスから見ていきましょう。

雌雄の役割分化12~サルの性収束と雌雄解脱共認で見たように、真猿・類人猿のメスは闘争上の役割欠損から強力に依存収束、性収束し、生殖と解脱充足という役割に特化していきます。そして、強者選択本能を雌雄解脱共認が上回るようになったと考えられます。つまり、メスも性的な充足を求めるようになります。

これに加えて、メスは闘争上の役割欠損から存在不安を抱えており、強く自我収束します。自我とは与えられない評価に対する欠乏であり、メス同士のボスをめぐる争いに負けて、ボスに省みられないメスは、別のオスを挑発して性的存在価値を確認しようとします。このようにして、日常的にメス発の性的な挑発が行われるようになります。

次にオスですが、猿の集団ではオスは日常的に序列闘争を行っており、序列を共認しています。そして、発情期になってから血みどろの性闘争を繰り広げるような事はしません。共認によって性闘争を抑止しているのです。他の哺乳類のように敗従本能で性を封鎖するのとは大きな違いが有ります。

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この画像はこちらからお借りしました

真猿、類人猿のオスは、敗従本能で性のスイッチをオフにしている訳ではないので、ボスの目を盗むことができれば、交尾をすることも十分可能な状態だと考えられます。

●まとめ
真猿・類人猿のオスは敗従本能ではなく、序列共認で性闘争を抑止し、メスは強者選択本能ではなく雌雄解脱共認と自我収束からオスを挑発し受け入れるようになっています。

そういう意味では真猿、類人猿はその集団がおかれた外圧状況により集団共認が変化する事で婚姻形態も変化すると考えられます。今よりも同類闘争が激しかった時代には、序列共認がより強固であり、ボス以外のオスは性を完全に封鎖し、メスも自我を封鎖した、ボス集中婚であったと考えられます。

現代の猿で乱婚が多く報告されるのは、生息数の減少により同類闘争圧力が弱まり、序列共認で集団を維持していくのが困難になった結果であり、ボスも他のオスがメスに手を出すのを、見逃さざるを得なくなったからだと考えられます。

List    投稿者 nodayuji | 2011-02-05 | Posted in ③雌雄の役割分化No Comments » 

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