2010-04-15

哺乳類の起源と歩み~原モグラ時代の性闘争「弱者ゆえの本能進化と雄雌分化」

哺乳類の起源と歩みシリーズ、前回は(現存する哺乳類の大部分の祖先である)原モグラのおかれた生存状況と適応放散について学びました。
■前回のポイント  
巨大隕石の衝突は、粉塵による太陽光の遮蔽→植物絶滅+寒冷化を引き起こした
生き延びた哺乳類(原モグラ)は、小型爬虫類・肉食鳥類の登場によって、大型爬虫類時代以上の危機的生存状態となった
逆境下におかれた哺乳類(原モグラ)は弱者故に適応放散した

今日はその続きです。
現哺乳類に特徴的かつ普遍的に見られる本能はどのように獲得されてきたのか? 
この点について考えてみたいと思います 🙄

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「実現論 前史:ハ.哺乳類(原モグラ)時代の性闘争本能」より引用します。

原モグラは、土中に隠れ棲むしかなかった弱者であり、それ故にいくつかの特徴的な本能を発達させている。
中でも哺乳類の哺乳類たる最大の特徴は、弱者が種を維持する為の胎内保育機能(それは、危機ゆえに出来る限り早く多くの子を産むという、危機多産の本能を付帯している)である。
しかし、卵産動物が一般に大量の卵を産み、その大部分が成体になるまでに外敵に喰われることによって淘汰適応を実現しているのに対して、胎内保育と産後保護の哺乳類には、適者だけ生き残ることによって種としてより秀れた適応を実現してゆく淘汰適応の原理が働き難くなる。
そこで、淘汰過程が成体後に引き延ばされ、成体の淘汰を激化する必要から、哺乳類は性闘争=縄張り闘争の本能を著しく強化していった。
実際、性闘争を強化した種の方が適応力が高くなるので、性闘争の弱い種は次第に駆逐されてゆく。
かくして哺乳類は、性闘争を極端に激化させた動物と成っていった。
モグラの場合、性闘争に敗け縄張りを獲得できなかった個体(=大半の個体)は、エサを確保できずに死んでゆく。

もちろん、性闘争=縄張り闘争の本能は、脊椎動物の前から殆どの動物に存在しているが、哺乳類は、この性闘争(=縄張り闘争)本能を淘汰適応の必要から極端に強化した動物である。
その場合、種を存続させる為には、闘争存在たるオスがより闘争性を強めると共に、メスたちの外側で外敵に対応した方が有利である。
従って、とりわけオスの性闘争(=縄張り闘争)本能が著しく強化されることになる。
現哺乳類の祖先と考えられているモグラの場合、メスも性闘争(=縄張り闘争)をするが、オスの闘争はより過激で、その行動圏はメスの3倍に及ぶ。
従って、概ね3匹のメスの縄張りを包摂する形で1匹のオスの縄張りが形成される。
これが、哺乳類に特徴的な首雄集中婚の原型である。

■ 魚類、両生類、爬虫類の性闘争は?
哺乳類の性闘争の激しさに対して、魚類、両生類、爬虫類の性闘争はどの程度なのでしょうか?
哺乳類は、角や牙を使って闘い大怪我を負う事もありますが、魚類、両生類、爬虫類は、メスの周りにオスが群がって早い者勝ち、もしくは大きさ比べなどのディスプレイが主流です。
比較的激しいものでも噛み付く、ぶつかるといったところまでで、血みどろの性闘争を繰り広げるものはほとんど見あたらないようです。
例えば・・・
サケ:産卵が近いメスが穴を掘り始めると近くのオスが集まり、つがいになるためのけんかが始まります。けんかの方法は大きさ比べ、噛み付き、体当たり。普通大きい方が勝つ。
ヒキガエル:一匹のメスに複数のオスが群がるカエル合戦が見られます。最近の観察事例では、交尾期の前半はメスも多く余り争いは見られないが、後半にはメスが少なくなりオスが群がる様子が見られたそうです。
メラーカメレオン:全長60cm。雄同士が出会うと威嚇し、鼻を突き合わせて争います。
メキシコドクトカゲ:有毒なトカゲの1種で、強力な毒を持つが、雄同士は鉤爪のみで闘い、決して噛みついたりはしません。
キングコブラ:雄同士で闘うときには噛みつかず、上半身で捻じ伏せようとします。
ウミガメ:交尾の際、雄は雌の甲羅に爪をかけて固定するが、他の雄がやってきて後肢に噛みつきます。息切れしそうになったつがいは必死に海面で呼吸。他の雄たちはやがて諦めるそうです。

■ 現在のモグラの生態
mogura.jpg
※画像元:立川経済新聞
モグラは通常単独で、1頭あたり50~70m四方のトンネル網を縄張りとして生活しています。トンネルは餌場であり、かつ食糧の備蓄場所です。モグラは大食漢で1日あたり体重の半分以上の食事をします。12時間食事をしないと死んでしまうそうです。
数時間おきに縄張り内をパトロールし、胸や腹などの臭腺から分泌液をつけます。この臭いで縄張りがマーキングされ、隣り合ったものは互いの縄張りを侵さないようにして、ふだんは無益に争うことはありません。
しかし繁殖期になると、雄は雌を探すため縄張りの3倍以上もの範囲を出歩くようになります。他の雄に出くわすと激しい領土侵犯の闘いが起きます。
この性闘争=縄張り闘争に負けると、食料を失い当然死んでゆくことになります。

※参考投稿:原モグラが置かれた状況と性闘争

「実現論 前史:ハ.哺乳類(原モグラ)時代の性闘争本能」より引用します。

こうして、哺乳類のオス・メス関係を特徴づけるオスの性闘争の激しさと内雌外雄の摂理(本能)、および群れの全てのメスが首雄(勝者)に集中する首雄集中婚の婚姻様式(本能)が形成された。
このオスの性闘争の激しさと内雌外雄の摂理と首雄集中婚は、多くの哺乳類に見られる一般的様式であり、もちろんサル・人類もそれを踏襲している。
(学者の中には、首雄集中婚を「ハーレム」と呼び、オスの天国であるかの様に表現している者がいるが、それは全く見当違いである。オスはメスよりも数倍も厳しく淘汰されるというのが事の本質であって、その帰結が首雄集中婚なのである。)

■ 内雌外雄の摂理
哺乳類の集団は普遍的に「内雌外雄」の編成をとります。集団の内側にメスと子ども、外側にオスという同心円状の形態です。これは、オスの性闘争=縄張り闘争本能の強化と同時に、メスの胎内保育+産後保護による生殖負担の増大とが対になって形成されています。哺乳類における雄雌の役割分化(オス→闘争、メス→生殖)が内雌外雄の集団編成を生み出しているわけです。

エルク大鹿の集団
eruku.jpg
※画像元:環境goo
エルク大鹿は性闘争の勝者が20~30頭のメスを囲い、「単雄複雌型」の集団を形成します。なかには、オス一頭で60頭ほどのメスを従えることもあるようです。
繁殖期のオスは非常に興奮しており、常に落ち着きがありません。他オスの進入や接触に対して激しく攻撃します。性闘争=縄張り闘争が最大の課題であり、常に臨戦態勢なのです。

「単雄複雌型」のほかに、複数のオスで縄張りを形成する「複雄複雌型」の集団を形成する哺乳類も多く存在しますが、当然「内雌外雄の摂理」に従って集団は編成されます。サル・オオカミ・イヌなどが典型です。
こうした「複雄複雌型」の場合、集団にとって遠心力として働くオス同士の性闘争本能をどうするかが問題となります。親和本能によって性闘争本能を制御、あるいは力の序列原理で止揚することで集団構築を可能とし、外敵あるいは同類闘争に適応していったと考えられます。

※参考投稿:哺乳類の集団形成(3)~哺乳類の集団は『母系』が主流~

■ 本日のまとめ
哺乳類は弱者であったが故に、胎内保育+産後保護という生殖様式、性闘争=縄張り闘争本能の著しい強化という淘汰適応様式をとった。
哺乳類においては、メスの生殖負担の増大、オスの性闘争本能強化によって、雄雌の役割をより分ける方向で雌雄分化は進んだ。

List    投稿者 iwaiy | 2010-04-15 | Posted in 2)知られざる原始哺乳類No Comments » 

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