2009-12-03

遺伝子の共同体~進化の歴史は共同性の塗り重ね

 前回の「生物はいつから群れを作るようになったの?」では、一匹で「ウニョウニョ」していると思われている単細胞生物が、バイオフィルムをつくり身を寄せ合い、お互いに情報を交換しながら必死になっ生きていることが分かりました。
 人類、サル、動物、多細胞、単細胞、全ての生物が、共生体・共同体=群れとして適応・存在しており、群れるのは生物の摂理だと言えるでしょう。
 ここではよりミクロに見ていき、生命の誕生と進化に非常に大きな役割を果たしている物質「遺伝子」がどのような摂理にもとづいて機能しているか学んでみたいと思います。
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 以下に、るいネット「遺伝子の共同体」を引用しながら展開していきます。
1)一個の遺伝子が単独に働くことは在り得ない

 真っ当な分子生物学者なら、生物の維持と進化の単位(主体)を、一つの細胞内に存在する全DNA(人間の場合、この全DNAの中に約十万の遺伝子が組み込まれている)orゲノムに置くだろう。その根拠は、少なくとも二つある。(補。細胞質遺伝etc.DNA変異によらない、全く別の進化様式が存在することは、間違いないと私は考えていますが、ここでは便宣的にDNA方式に限定して、話を進めます。)

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画像はこちらからお借りしました。

 まず第一に、一個の遺伝子が単独に働くことは在り得ない。どの遺伝子も数十、数百、数千の他の遺伝子群と連鎖的に化学反応を起こしてはじめて何らかの働きを持ったアミノ酸や蛋白質を作り出すことが出来る。しかし、そうして作り出された一つの蛋白質だけでは、生命を維持することは出来ない。結局、十万の遺伝子が緊密に連動し、協働してはじめて生物は維持され、進化してゆく。要するに全DNA(ゲノム)とは、まぎれもなく十万もの遺伝子の共同体である。

 日々世界中の研究者が、遺伝子について研究している。
 中でも「性決定遺伝子」「長寿遺伝子」「恋愛遺伝子」など、さまざまな働き(をすると言われている)の遺伝子が発見されているが、その働きがその遺伝子単独に還元される事はない。
 また特定の遺伝子(DNA領域)を損傷したノックアウトマウスを用いた実験が行なわれていますが、往々にしてこのノックアウトマウスに何も欠陥が出てこないことがあるようです。これに関して福岡伸一氏は、ノックアウトした受精卵は発生過程において、遺伝子の相互作用により、欠損した遺伝子を補う別のメカニズムを形成し、共同的システムを回復していると書いています(「生命と非生命のあいだ」より)。
整理

・遺伝子はその全体が常に協働することで生命体を維持しており、群れの構造を有している。
・単体の遺伝子だけを取り出して、その働きを議論しても意味が無い。

2)変異遺伝子は残りの遺伝子群と適応的でなければならない

 第二に、ある遺伝子が変異を起こした時、その変異遺伝子は残りの十万の遺伝子群と適応的でなければならない。もし他の遺伝子群と不適応ならば、自然環境etcによって淘汰される以前に、まず細胞内部or個体内部で修復蛋白群をはじめとする組換え系の物質群や蛋白質の致死化学反応あるいは免疫細胞によって体内淘汰されて終うだろう。従って、まず一個の遺伝子が在るのではなく、まず共同体的な遺伝子群があり、その中でのみ、かつ全遺伝子と適応的である場合にのみ、一個の遺伝子は存在し得るのである。(注:体内淘汰されない限りは適応なので、ごくまれに個体にとって有害な遺伝子が存在することも在り得る。)

 遺伝子は複雑かつ大量の構成要素によりできています。構成要素が多い分、変異する遺伝子はめずらしくありません。
 しかし、複雑であるがゆえに変異体を放置しておくと遺伝子全体が不適応態になってしまいます。ですから当然のごとく修復酵素が存在し、随時修復していきます。
 事例として、DNA分子の異常や損傷は1日1細胞あたり最大50万回程度発生することが知られています。原因は、正常な代謝活動に伴うもの(DNAの複製ミス)や環境要因(紫外線など)です。修復が追いつけば正常が保たれますが、追いつかなければ老化、癌化につながっていきます。(参考
 つまり、異常遺伝子は他の遺伝子群と適応的でなければ体内淘汰されるのです。
○整理
・遺伝子は調和があってはじめて、変異適応も可能で、さまざまな働きをする事も出来る。
3)「全遺伝子の共同体」こそが進化の単位である

 第一・第二の当然の帰結として、ダーウィン的な自然淘汰は、常に全遺伝子群(ゲノム)に対して働く(正確には、全遺伝子群が作り出す、全形質に対して働く)。それが、全遺伝子の共同体を進化の単位(主体)とする根拠である。

以上の認識を踏まえつつ、【生物進化と共同体・群れの構造】を整理してみたい。
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◎生物進化と共同体・群れの構造
(1).生命誕生の初期には、不完全な有機物同志が互いの機能を補完する形で、生命物質群(アミノ酸→タンパク質、ヌクレオチド→RNA→DNA、ヌクレオチド-タンパク質複合体→中心体原基etc)を形成し、次第に細胞という単位にまで進化を果たしてきたらしい。
(原始生命と群れ【仮説】)
※遺伝子群をはじめとする生命物質群の共同体的なはたらきは、生命の維持と進化の主体である。このシステムは全ての生物に共通する基幹構造である。

(2).細胞という身体を獲得した生命=原核生物(細菌)は、“単細胞生物”という名称からイメージするような「一匹一匹でウニョウニョ」などではなく、その歴史の初めから『バイオフィルム』というコロニーを形成し、相互に情報伝達を行いながら生存してきた。
(生物はいつから群れを作るようになったの?)

(3).原核生物から真核生物への大進化においては、同種の細胞同志の接合によって有性生殖(性)という極めて精巧な変異システムが生み出され、また異種細胞同志の共生によって真核細胞の誕生をみた。
(4).性システムを獲得した真核細胞は、やがて群体~多細胞生物へと進化を遂げる。多細胞生物の身体は、それぞれに機能特化した体細胞及び、神経ネットワークや免疫ネットワークによって調和的に機能する、細胞の共同体である。
(5).全ての多細胞生物は、規模の大小の差はあっても例外なく『群れ』をつくって生存し、外圧に対する適応可能性を高めている。
(動物が群れを作るのはなんで?)

(6).サル時代に獲得した共認機能、人類の観念機能は、群れ→集団や社会を秩序化していくための機能とも言える。
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★生命の進化とは、ミクロの有機物質の状態から連綿と塗り重ねられた、【共同体の階層化の過程】と言える。
★始原生命時代と同様の生命物質群をはじめ、細胞内組織、細胞、個体、集団と、その後に獲得された要素群が入れ子のように共同体を成し、同時かつ調和的に機能している。

List    投稿者 h100p | 2009-12-03 | Posted in ①進化・適応の原理6 Comments » 

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コメント6件

 mame | 2010.07.18 0:21

知らなかったことばかり!!@0@
>全ては膜タンパク質の改良・組み換えの産物であるという大共通項がある
私たち生き物にとって、膜タンパクというのが大きな存在であることを勉強できました。
そこで飢餓状態と膜の厚さについて質問なのですが、膜融合をするときの飢餓状態とは、則ち膜が1.5mm以下になることですか?では、膜が自然に1.5mm以下にならなくても膜融合できるように同類接着膜タンパク質を取り込んでいるとは、膜融合を飢餓状態でなくてもできるようにしたということでしょうか?

 nannoki | 2010.07.18 1:11

mameさん、コメントありがとうございます★
ちょっと言葉足らずでした。1.5nm以下というのは膜の厚みではないんですね。細胞と細胞との膜の間の距離なんです。1.5nmより離れているとお互いの細胞膜同士は融合しないのですが、それを融合膜タンパク質を使って1.5nm以下まで近づける事ができたということです。相手をグッとと引き寄せるイメージですね。
ちなみに接合膜タンパクは膜の外についているイメージで、その接合膜タンパク質を膜の中に貫通させたものが融合膜タンパク質です。

 サミぃ | 2010.07.20 6:34

いつも御世話になっております。図の著作権はどうなっているのでしょうか。心配です。レポートはゼロでした。

 まーやん | 2010.07.23 18:10

難しい内容ですが面白いですね^^

 nannoki | 2010.07.24 22:18

サミィさん、コメントありがとうございます☆
著作権は考慮していますが、一つだけ引用元のリンクを忘れていましたね。お気遣い、ありがとうございます♪これからも、宜しくお願いします。

 nannoki | 2010.07.24 22:21

まーやんさん、コメントありがとうございます☆
難しい内容だな~と私も書きながら思いました。最後まで読んでくださりありがとうございます♪

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