2009-09-02

チンパンジーの顔認識

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画像は動物園の「ど」!さんよりお借りしました。
 
まずは京都大学霊長類研究所HPからの引用です。
 

顔は社会的に重要な刺激であり、ヒトでは視空間的注意を容易に捕捉することが知られている。チンパンジーにとっても顔は社会生活を送る上で重要な刺激であるが、顔に関連する注意のメカニズムについては不明な点が多い。そこで、本研究では若いチンパンジー3個体に単純な反応時間課題の実験に参加してもらい、顔や非顔刺激を含む先行手がかりがいかにチンパンジーの視空間注意を補足するかを検討した。その結果、標的刺激が出現する位置にチンパンジーの顔が先行して提示された場合、逆の場合に比べて反応時間が有意に速くなるという手がかり効果が認められた。このような効果はバナナの写真を先行手がかりとした場合には認められなかった。さらに、この効果はヒトの顔に対しても生じたのに対し、倒立提示されたチンパンジーの顔では認められなかった。このことは、今回の先行手がかりによる注意の捕捉効果は、チンパンジーが顔刺激を「顔」として処理した結果生じている可能性を示唆している。


 
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予測はされていましたが、やはりチンパンジーは顔を顔として認識し、そこからより多くの情報を得ようとしていることが明らかになりました。
原猿においては、顔の毛があり、表情もそれほど豊かではありませんが、真猿においては、顔の毛がなくなり、より表情が読み取りやすく、表現しやすくなっています。この違いからは、集団内若しくは個体間におけるコミュニケーションが声や動作などよりもより複雑化し、情報量も多くなっている、つまり、意思疎通がそれまで以上に重要になっていることが伺えます。
(この実験はチンパンジーだけであるので、少なくともチンパンジーにおいてはそれが証明されたことになります。)
 
また、チンパンジーにおいては、表情以外にも、「言語」表現も豊かになり、それによってもコミュニケーションを図っていることから、明らかに集団内における共認がそれまで以上に重要な位置を占めるようになっていることはほぼ明らかでしょう。
 
また、全ての類人猿は“笑う”という実験結果も合わせて考えると、類人猿における「表情」の重要性はより確かなものと言えるでしょう。生存圧力に立ち向かう存在である生物を考えた場合、少なくとも“個体”ベースで考えたときには表情が豊かになり、表情からより多くの情報を得ようとする必要はなく、“集団”を意識の中心に持ってきたときに初めてその必要性が生まれます。
そう考えると、やはり霊長類においては集団内の共認内容がそれまで以上に非常に重要なものになっているということなのでしょう。それも、“笑う”という方向に進化していることを考えると、それは外圧に立ち向かうと言うことよりも、集団内の結束をより高める、コミュニケーションによる充足や安心をより高める方向に進化していることが伺えます。

List    投稿者 hadou | 2009-09-02 | Posted in 3)地上へ進出した哺乳類(原猿から真猿へ)No Comments » 

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