2009-08-03

生物の地上進出~地上世界は変異の大きな環境

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大陸棚がよい漁場になっているのはなぜでしょうか?
大陸棚とは水深200m以内の海底のことで、太陽光が届き、魚の餌となるプランクトンや海藻類が豊富に生息するのでよい漁場となるのです。
現在の大陸棚は1万7000年前のウルム氷期に海面が低下して出来上がったとされていますが、生物が光合成を始めた時もこのような海底付近に生息していたと思われます。
例え海上で暴風雨が吹き荒れても海中では水流や水温は安定し、ミネラルも豊富で生物にとってはとても環境の良い世界です。
一方で、生物の地上進出を考える時、そのような安定した海中世界とは全く異なる地上の環境外圧を捉える必要があります。今回は重力や乾燥だけではない、地上の環境をいくつか取り上げます。

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1.気温
安定した海中と異なり、地上は気温の年較差、日較差が大きいのが特徴です。特に植物が進出する前の地上世界は岩盤か砂漠の荒涼とした世界です。海岸や山脈付近でなければ湿度が低く晴れた日の気温差は現在の砂漠では50℃を超える事も珍しくありません。
(ただし太陽光度は現在よりも弱く、日較差はもう少し小さかったかもしれません)
また、熱帯以外では年較差が大きく、例えば現在の東京では30℃の年較差があります。
したがって、まずは年較差、日較差の小さな温暖湿潤な熱帯や亜熱帯の海岸付近で地上進出を果たしたと考えられます。

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2.風雨
風圧や暴風に伴う砂嵐、雨や雹など、時として生体膜を損傷する強い圧力が加わります。
このような外圧に適応するために丈夫な表皮を形成する必要があります。
また地表を流れる雨水は湿潤地帯では恒常的に起こります。
その他に大気圧の変異も海中より大きな外圧と考えられます。

3.紫外線
オゾン層が形成されたからと言って紫外線が完全にシャットアウトされたわけではありません。厚い表皮は紫外線から身を守るためにも役立っています。

いくら表皮が厚くて丈夫でも損傷を全く受けないことはありません。
例えば哺乳類では風雨や外敵によって傷つけられたり、紫外線によってDNAが損傷し癌化した細胞を発見し免疫細胞を活性化させるランゲルハンス細胞などによって地上の外圧に適応しています。(詳しくは当ブログ「皮膚の免疫監視役:ランゲルハンス細胞」をご覧ください。 )
地上進出は植物、動物ともに免疫機能の進化なしには成しえなかったでしょう。
一方、マイナスばかりではなく、古生代には地上に進出する要素も多くあります。

1.酸素濃度の上昇
太陽光度は一億年で1%増加していると言われています。年々光度が増し光合成生物を活性化させ酸素濃度が上昇して、地上に酸素を供給し始め、6億年前には酸素濃度は現在の1/10程度にまで上昇しました。
また、オゾン層が形成され、紫外線を減少させました。
ただし、酸素濃度の上昇は細胞を活性化させ老化を早めてしまい生殖サイクルに支障をきたす危険性もあります。

2.堆積岩の隆起
7.5億年前から海水のマントルへの逆流が起こり、海水面が200mほど低下した結果、大陸が広がり、大量の堆積岩が形成されました。この堆積岩に海底の生物の死骸、つまり植物の進出の基盤となる大量の有機物が含まれていたのです。

地上世界は変異に富んだ多様な環境だから多種多様な進化がなされたのですが、地上進出を果たすには大きな変異を乗り越えなければなりません。肺魚やクマムシのように乾眠という仮死状態で地上の変異に耐え抜くような適応戦略が初期の生物に必要だったのではないでしょうか。

List    投稿者 tsuji1 | 2009-08-03 | Posted in 6)“祖先の物語”番外編No Comments » 

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