2009-06-13

生物の地上進出時の逆境とは、なにか?(2)

前回のつづき です。
◆動物編

●「両生類:追い詰められ陸へ上った魚(1)」より《抜粋》
1.頭足類に追われ淡水域へ逃げ込んだ初期魚類
オルドビス紀中期、当時の海は体長5mにもなる頭足類(オウムガイの仲間)の天下で、体長10~20cm程度で満足なヒレもなく、藻類やプランクトンを餌としていた無顎魚類は、これら頭足類の格好の餌食だった。
シルル紀(約4.4億年前~)に入ると、カレドニア造山運動の影響で海が小さく浅く(=海退)なり、生存域が狭まり競争の激しくなった海で大型頭足類に追われた魚類の一群は、汽水域~淡水域に逃げ込まざるを得なくなった。
2.淡水域という逆境での進化:鱗・腎・肺機能の獲得
淡水域への逃避では、浸透圧の違いという壁に直面した。浸透圧で体内に水が浸入し破裂してしまうという逆境を、体表には固い鱗を、体内には血液中の余分な水分を濾過する腎機能を獲得したものが、淡水域に辿りつくことができたる。
淡水域は海に比べ水中の酸素濃度が低い。鰓だけでは不足する酸素摂取を補う空気呼吸の仕組みとして、食道が変化した肺を獲得したものが現れた。肺は比重の低い淡水での浮力調整装置にもなった。
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●「両生類:追い詰められ陸へ上った魚(2)」より《抜粋》 
3.巨大魚からの逃避と肺呼吸へのシフト
デボン紀(約4.16億年前~)に入ると、淡水適応した魚類は、顎を持ち肉食化したもの、養分の少ない淡水でのミネラル貯蔵庫としての背骨を獲得した硬骨魚類など多様な進化を遂げた。淡水の覇者は体長5mの巨大肉食魚ハイネリア。この天敵から身を隠すため、肉鰭類(腕状、葉状のヒレを持つ種)は水草の密生した浅瀬を生息場所にし、小魚などを主食にしていた。この頃は造山活動の最盛期で、気候変動が大きく陸地では乾季・雨季が生じていた。乾季には干上がる浅瀬に棲む彼らは、鰓呼吸から肺呼吸の比重を高めていった。
4.水中での「足」の獲得~さらに陸上へ
浅瀬で生い繁る水生植物をかき分けて移動する必要から、肉鰭類の一部には、鰭の付け根の骨を変化させ四肢の原型を獲得したものが現れた。厳しい種間闘争圧力と乾燥と湿潤が繰り返す生存環境の中で、より水際に追いやられたものが約3.6億年前に両生類となった。
粘膜状の皮膚を手に入れ、皮膚呼吸により肺呼吸の補完を可能にしたものが現在の両生類の系譜。さらに陸地へ追いやられ、乾燥に適応できるような鱗と卵殻を獲得したものが、爬虫類・哺乳類へと進化した。
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●「生物の陸上進出 ~魚類から両生類への一連の流れ」より《抜粋》
デボン紀末期、乾燥化と酸素濃度低下などの環境の激変が始まる。
  
乾燥化により川が無くなっていく(湿地帯が取り残される)中で、
川に住んでいた条鰭類と肉鰭類はそれぞれ違う戦略を取る。
条鰭類は、(ヒレを発達させていなかった為)海へ戻る。【現在の魚類のほとんど】
肉鰭類は、(既に発達させていたヒレを使って)陸上生活に適応する。【両生類へ】
※条鰭類は「肺があり」「腎臓があり」「うろこがあった」為、
 低酸素状態の海に戻り生き残る事が可能だった。
※肉鰭類は「肺があり」「腎臓があり」「うろこがあり」「ヒレが発達していた」為、
 陸上生活に適応することが可能だった。
  
この時、海に戻った条鰭類が現在の魚類のほとんどを占める。
肉鰭類の中で海に戻ったものがシーラカンス。
この時、陸上に上がった肉鰭類が陸上動物の祖先。
最後の最後まで弱者だったものが、各種機能を獲得していく。そして、環境の激変が起こった際に、それまでに獲得した各種機能を進化させて適応した弱者が生き残ってきた!
大きな流れをキチンと読む

 
成る程、と思った投稿に、こんなのもありました。

●「酸素濃度の上昇は遺伝子変異を促進する?」より《抜粋》
5.5億年前 カンブリア紀に突然酸素濃度が10%にまで上昇。
カンブリアの大爆発における生物の適応放散に先立ち、それ以前に遺伝子変異が蓄積されていたと考えると、その時期における突然の酸素濃度の上昇は遺伝子変異に大きく関わっているのではないか?
石炭紀から酸素濃度が上昇し、最大で30%近くにもなったらしい。
この時代において生物は魚類→両生類→爬虫類という進化を遂げ、のちに恐竜へと巨大化していきますが、ここでも酸素濃度の上昇による遺伝子変異の蓄積があったのではないか?
酸素を利用した細胞内でのエネルギー産生によって、エネルギーを必要とする複雑な高等生物の進化を可能にしました。しかし同時に、非常に強い酸化力を持った活性酸素が細胞内で遺伝子に悪影響を及ぼしたり、機能障害を引き起こしたりすることもあります。
生物にとって遺伝子変異は確かに毒となりますが、外圧適応態としての進化原理から見れば外圧変化に対する360°の適応可能性につながるとも考えられます。生物史は、激動する外圧に対して可能性収束し適応してきた歴史です。自身にとっての毒をも使って全的に適応可能性に収束するというように、何処で斬っても外圧適応の原理に貫かれていると感じます。
本文を読む

 
動物編は、『逆境⇒課題(どうする?)⇒可能性収束⇒実現態( リンク )』という展開が豊富なので、説明を要しないと思います。最後に、まとめて読まれる方のために、関連投稿のリンク集を再掲しておきます。
《逆境とはなにか? を考えるリンク集》
—————————————-
古生代の地球環境と生物進化
—————————————-
大気と海洋の変遷② 
—————————————-
両生類:追い詰められ陸へ上った魚(1)
—————————————-
両生類:追い詰められ陸へ上った魚(2) 
—————————————-
生物の陸上進出 ~魚類から両生類への一連の流れ
—————————————-
酸素濃度の上昇は遺伝子変異を促進する?
—————————————-
両生類→哺乳類への進化における外圧状況
—————————————-
史上最大の大量絶滅
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五度の大絶滅
—————————————
哺乳類最大の危機「ペルム期大絶滅」
—————————————-
逆境下で生物は進化した。
—————————————-
    by びん

List    投稿者 staff | 2009-06-13 | Posted in 6)“祖先の物語”番外編2 Comments » 

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コメント2件

 あいあい | 2009.08.17 16:23

身近にいるセミですが、こんな不思議があったとは驚きです!
素数年の周期で出現するセミがいることを初めて知りました。
こういった適応戦略の仕方があるのですね☆
そして、セミって、どうやって年数を数えていたのか不思議だったのですが、木の樹液の量から季節を感じ取っていたのですね。
地中の中でもセミも季節を感じ取っているのですね!

 くまな | 2009.08.26 3:33

日本ではセミの種類が30種類ぐらいいるといわれていて、多いのだそうです。ヨーロッパやアメリカではセミの種類はごく少ないそうです。
日本では種類が多いので、春から秋まで地域のよって出現の時期がズレていて、さらに、同時期に出現するやつらは鳴き方を変えて相手を間違わないようにしてます。
セミはもっとも無防備な羽化を朝方に行い、鳴く時間帯は朝や夕の天敵が少ない時間帯を狙います。
つまり、セミは弱い虫で、だから土の中で時間をかけて成長し、土から出ると短時間に生殖だけして死んでいくという戦略なんです。
セミは何年も土の中にいて、出てきたと思ったらすぐ死んでしまうので、哀れな虫だと思われがちです。
でも土の中にいるのが「虫」としての本来の姿で、我々が目にする成虫は生殖に特化した特別な姿だと考えれば、目的を果たせばすぐに死んでしまってもかまわないわけです。

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