2009-08-05

菌類との共生が植物の地上進出を支えた

 マツタケやトリュフと言えば、高級食材として知られています。

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これらは、真核生物の一つである菌類の仲間で、植物の根に取り付き、植物と共生する菌根菌の一種です。

マツタケは松、トリュフは樫に共生し、植物から糖などの光合成の産物を受け取る一方、水分やミネラルを植物に提供しているのです。

ところで、実は松や樫に限らず、ほとんどすべての植物がこうした菌類と共生していることがわかっています。

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 植物は光合成した有機物の10%を根から分泌する一方、根と共生する細菌から水分やミネラル類を供給されています。

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植物は、窒素・リン酸・カリという三大栄養素の中でも、とりわけ重要なリン酸の吸収を菌根菌に頼っています。菌根菌は、貧栄養の環境で進化してきたため、化学肥料などを与えて富栄養にしてしまうと、生きていけません。一度そうなれば、肥料を与え続けない限り生存できません。

大腸菌は、人間の腸に住み着き消化の働きを助けてくれますが、菌根菌は、植物にとって大腸菌のような存在なのです。

水生の植物では、水中からいくらでも水分やミネラル分を吸収できるため、根には体を固定する役割しかありません。しかし、陸上では水中のように潤沢な水分やミネラル分はありません。そこで、根を発達させるとともに、微生物との共生関係を構築することで、陸上に適応したのではないでしょうか。

4億年前の植物の化石からも、菌根菌の痕跡が発見されていることから、こうした植物と菌類との共生は、陸上に植物が進出したのとほぼ同時期のようです。

すなわち、こうした菌類との共生こそが、陸上に植物が進出できた背景にあると考えられるのです。

菌根菌との共生があると、植物の葉も厚くなる傾向があります。もちろん、植物の根が届く場所よりもずっと離れた場所まで菌根が伸び、植物が養分、水分をとりこむことができる「根圏」と呼ばれる領域がぐっと広がるため、過酷な条件でも植物の生存率があがります。また、植物の光合成が刺激され大量の二酸化炭素が酸素に変換されるという、環境に対する大きな利点もあります。それもそのはず、菌根はほとんどが炭素でできていて、植物に水分と養分を送る代償に植物から炭素を受け取っています。自然界でもっとも大きな量の炭素固定を行っているのが菌根だといわれます。土中の有機物中でも大きな割合を占めています。菌根はいったん接種されるとどんどんと繁殖・成長を続け、寿命が来て死んでからも土を豊かにしていくのです。
http://www.cleanplanet.info/lib/mycorrhiza/mintroduction.htm

こうした根と微生物との共生関係に着目したのが、化学肥料はもちろん農薬も有機肥料もまったく使わない無農薬農法で、豊かな根圏(こんけん)の形成が不可欠とされます。

下の写真はペチュニアの鉢植えですが、右側が菌根菌を与えたもの、左側が与えていないものだそうです。

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List    投稿者 blogger0 | 2009-08-05 | Posted in 6)“祖先の物語”番外編1 Comment » 

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コメント1件

 さき | 2009.12.26 17:38

イラスト付きでとてもわかりやすい投稿ありがとうございます!!
どんな状況においてもそこに可能性を見出し適応していく生物たちはすごいですね。その生物たちがいたからこそ今の私たちや他の生物が存在する。本当に毎回毎回、生物たちへの感謝気持ちでいっぱいになります。

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