2009-07-22

植物の病気って?1

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今日と明日は、話は変わって植物。植物と病気についてのお話です。
私達と同じ真核多細胞生物であっても、生体システムの根幹からして全く異なる植物。病気との関係も違うはず。さて、どんなふうになっているのでしょうか。
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この記事は、明治製菓のホームページなのかにある「Dr.岩田の『植物防御機構講座』」さまを参照し、主として要約させていただきました。大変有用な内容を公開してくださっています。お礼を申し上げます。
植物の病気・・・植物病理学、樹病学の中心
植物の病気について調べてみてわかったのですが、当該研究は、私たちと関連が深い植物種を中心に行われているようです。つまり、野菜、果実、穀物、観葉植物など市場取引の対象となる植物については、かなり研究されています(=病名等が固定されている)。その一方で、とりたてて問題として認識されない野生の植物等については、そこまで研究されていないということ。
したがって、現在研究されている成果から全ての植物に共通の性質を大きくは抜き出せるものの、詳細については、個別にみていく必要があるでしょう。本稿についてもそれは同様で、多くの植物について概ね共通している構造であるものの、全てにおいてはそうとはいえません。大きな構造として理解してください。
病気の原因
植物の病気の原因は、糸状菌(主にカビ)、細菌(バクテリア)、ウイルスの三つで大部分を占めます。なかでも、糸状菌(カビ)による病気が最も多く、病気の8割が糸状菌によるものといわれています。各々の特徴を概略すると・・・・・・
・糸状菌
糸状菌は、多細胞の「菌糸」から成る微生物で胞子を作って増殖します。キチン質による強固な細胞壁を持ち、薬剤に強い性質をもちます(水虫菌がしぶといのもこのため)。糸状菌には、死んだ細胞に寄生し腐生性の強い「死物寄生菌」と、生きた細胞にしか寄生しない「活物寄生菌」、両方に寄生できる菌、の三系統があります。
・細菌
細菌は普通、一個の細胞から成る微生物で、種類によって球状・楕円状・桿状(かんじょう=細長い柱状)など、さまざまな形状をしています。増殖は分裂により行われます。植物を加害する細菌の多くは桿状細菌で、鞭毛を持っており、水中を泳いで移動し、株にできた傷口や、葉裏の気孔などから植物体に侵入します。一般に、高温多湿を好む性質があります。
・ウィルス
ウィルスの特徴は、もはや述べる必要はないでしょう。ウィルス性の病気に植物が一度感染すると治療法が無いといわれています。しかも、伝染性の強いものが多いにも関わらず、その伝染経路(媒介昆虫など)について、まだ解明されていないことがあるようで、非常に厄介といわれています。
以下、本稿では、植物の病気として最も多い菌類について述べることにします。
病原菌となる微生物 ~病原菌は意外と少ない~
これまで確認された地球上の微生物種は10万(実際はもっといるハズ)。しかし、そのうち植物に感染して病気を発症させる種は、国内では約7000種(7%)です。これを一つの植物種に限ってみると更に少なくなり、例えば、イネでは79種(0.79%)ほどになります。
膨大な微生物種のうち、植物に感染する能力を持っている微生物は、本当にごくわずか。それ以外の微生物は、植物にとっては無害なのです。それはなぜでしょうか?
病原菌にならないのはなんで?
ごくわずかな種の微生物しか植物の病原菌となり得ない理由として考えられるのは・・・
1)微生物が植物に侵入し発病させる能力を持たないため
2)植物が潜在的な抵抗性をもっているため
3)植物が微生物の侵入を察知して免疫システムを働かせるため

と大別できます。
まず、1)については、微生物側の話です。
植物の表皮を破って内部に侵入する能力を獲得しているかどうか。これが第一のハードルです。傷口など偶発的な状況を介さず、主体的に植物の内部に侵入する方法には、物理的に表皮を破壊して侵入する方法(いもち病菌など)と、酵素などで化学的に表皮を分解して侵入する方法(リンゴ黒星病菌など)があります。
しかし、例え侵入できたとしても、病気を発症させるかどうかは別問題。これが第ニのハードルになります。植物の成分を栄養源として吸収し植物の生理機能を崩壊させる、植物細胞を溶解・腐敗させる酵素を分泌する、細胞機能にダメージを与え毒素を生産する、導管を詰まらせて水の吸い上げを阻害する、などの能力が微生物の側に備わっていないと病気は発症しません。
2)3)は植物側の防御機構の話です。
表皮を硬く厚くしたり、殺菌性物質の内部濃度を高く保ったりする予防的防御機構が2)の例。病原菌の侵入許してしまった後に発動する臨戦的防御機構が3)の例です。いずれも、逃避行動等で外敵から身を守れない植物にとっては、重要な機能の一部です。
微生物から見れば、1)の自分側の二つのハードルに加えて、2)と3)の相手側(植物)の防御機構をかいくぐる進化をした種のみが、病原菌となるわけです。したがって、感染対象を植物のみに絞り、更に特定の植物種のみに感染の的を絞らざるを得なくなります(植物の病原菌は動物には感染しない)。
多数の微生物種のなかで、ごくわずかな種しか植物への感染能力を持たない理由がわかりますね。
・・・・・・おっと、そろそろお腹いっぱいですね。今回はここまでにしましょう。
次回は、これら病気の原因に対して、植物がどのように防御しているのかを書こうと思います。
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List    投稿者 hayabusa | 2009-07-22 | Posted in ①進化・適応の原理4 Comments » 

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コメント4件

 andy | 2009.11.24 22:56

必死に逆境に立ち向かっていく様が良く伝わる投稿ですね。すごくイメージしやすかったです。
海から陸への進化は、生物にとって本当に決死行だったんですね。

 ファイテイングドックス | 2009.11.25 21:33

すんごい経験をして、生き延びているんですね。
適応するって、とにかくどんどん強くなる!っていうイメージがありましたが、「③餌がなくても泥の中でじっと待つ乾眠」など、動かず時間をかせぐっていう、実に、賢い進化もあるんですね。
関連が説明されているので、非常に分かり易いです!

 takesyo | 2009.11.28 19:34

andyさんコメントありがとうございます。
>必死に逆境に立ち向かっていく様が良く伝わる投稿ですね。すごくイメージしやすかったです。
ありがとうございます!!
何より嬉しい褒め言葉です。
投稿にあるように、生物の進化は全て追われた弱者が逆境の地へ逃げるところから始まります。
andyさんの仰る決死行だったのは、海から陸への進化に限らず、生物の進化史は全てなんです。
続きのkumasukeさんの進化史をご覧頂いたらお分かり頂けると思いますよ。要チェックです!!

 takesyo | 2009.11.28 19:45

ファイテイングドックスさんコメントありがとうございます。
>すんごい経験をして、生き延びているんですね。
そうなんです!!
その環境に適応しなければ絶滅してしまうような状態から、適応する事が出来た主だけが“進化した”と世間一般では言われています。
恐らくその進化できた種の何十倍、何百倍の種が絶滅していると思います。
その中で適応=進化できたのは、ホントすんごい経験ですね。

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