2009-04-03

090329なんでや劇場レポート3  生命は変異を継承していく存在


 
3日目の今日は、変異と中心体の関わり、そして生命の本質を考えていきます。
 
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■2度目の大変異 ~有糸分裂・減数分裂~
 
大変異は、生物史上、2度しか起こっていない。1度目は、中心体原基と生体膜による生命誕生。そして2度目が、今回扱う有糸分裂・減数分裂システムの確立である。
 
真核生物の誕生前後、地球環境は氷河期で、寒冷乾燥化、栄養枯渇状況だった。高い自然外圧に対し、ある生物種は、変異可能性に賭け、同種の細胞で寄り集まり休眠。外圧が緩むと、互いの遺伝子を交換して、変異体を生み出し、活動を再開する適応戦略にでた。これが、おそらく2倍体の起源。(例:クラミドモナス
 
寄り集まった細胞が再び活動するためには、正確に分裂する必要がある。その仕事を担ったのが、中心体をはじめとする細胞骨格。有糸分裂・減数分裂の確立により、精度の高い細胞分裂機構と、同種との遺伝子交換(組み替え)による小変異システムを獲得した。
 
以降、外圧適応は小変異で対応できた。このため、大変異は起こらなかったと考えられる。
 
◆なんで2倍体?複数倍体でも良いのでは?
植物や昆虫には、4倍体、8倍体等、偶数倍体が存在する。一方、奇数倍体は自然には存在しない。分裂時、正確に2分する必要から偶数倍体が残ったと考えられる。人工的に奇数倍体を創ることはできるが、子孫は残せない。(例:種なしスイカ
 
参考 減数分裂システム
 
 
■性分化で小変異を高度化
 
小変異システムの獲得以降、「変異」と「安定」を役割分化した種は、さらに高度化している。
 
●殖産分化 保存(生殖細胞)と仕事(体細胞)がまず機能分化。これが多細胞化の起点。
 
●精卵分化 精子(変異配偶子)と卵子(保存配偶子)が分化。変異と保存が分化。
 
●躯体分化 精子をつくる躯体(オス)と卵子をつくる躯体(メス)が分化。
 
外圧適応のためには、変異のみでは危険で、それまでに塗り重ねられた遺伝情報も同時に保存する必要がある。一方、矛盾する2つの性質、「変異」と「安定」を、一個体で担うには負担が大きい。「変異」を司る性と、「安定」を司る性に分化することで、種として安全に変異できるようになった。
 
Y染色体ってなに?
哺乳類は、Y染色体で性が決まると言われているが、実際は性決定因子の一部が保管されているにすぎない。むしろ、Y染色体は、変異情報が蓄積されている変異染色体と呼ぶ方が相応しい。 
 
◆性の決定は必ずしも染色体だけではない?
爬虫類は卵が暖まる温度で性が決まる。クマノミなど一部の魚類は性転換可能。ウミウシ、カタツムリなど雌雄同体生物も存在する。
 
参考 オスメス分化の塗り重ね構造 卵子・精子の違い HY抗原 精子と変異
 
 
■変異を主導する中心体
 
中心体原基による生命誕生や、有糸分裂・減数分裂の確立のように、大変異は、中心体(及び原基)が深く関係する。また小変異システムでも、変異側、精子(変異配偶子)にのみ中心体が存在している。卵子(安定配偶子)はその形成過程で中心体を排除。中心体は変異を主導している可能性が高い。※中心体の変異情報、蓄積構造は今後の追及課題。
 
参考 中心体は「変異誘発装置」ではないか 
 
 
■外圧による変異で進化を捉える ~突然変異説と自然選択説を越えて~
 
突然変異説と自然選択説の2説は、現象の一端を示しているが、生命原理そのものは説明できていない。生物史を俯瞰すると、変異は大きく外圧が変わった時期に発現している。外圧状況と、これによる変異を同時に押さえることで、進化を捉えることができる。進化は偶然の産物ではない。外圧に対し、適応することで起こる。
 
参考 進化は可能性発 突然変異が偶然で無い証拠 突然変異を引き起こす外圧から類推 
 
 
■生命とは何か?
 
一般的には種の保存と言われているが、果たしてそうか?
 
今、地球上には200万種を超える生物種が存在する。極論すると、その大多数が絶滅したとしても、いくつかの種が生き残れば、生命は存在し続ける。その生き残った種と同時に、なんらかの変異システムも残れば、新たな変異が可能となる。生物進化は、変異の塗り重ね。生命は、変異を継承していく存在である。

List    投稿者 tanizaki | 2009-04-03 | Posted in ⑦なんでや劇場レポート2 Comments » 

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コメント2件

 andy | 2009.06.09 19:20

焼き芋からブドウ糖を摂取していたんですか~面白い!
恐怖の対象でである火を使用することが、脳容量拡大=生存可能性を広げたというのもとても興味深いですね。

 いわ | 2009.09.30 0:28

脳のエネルギー源には、ブドウ糖だけではなく
ケトン体も使われると聞きますが、どうなんでしょう?

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