2009-02-03

生命の起源はタンパク質か?ヌクレオチドか?

1月25日に行われた第99回なんでや劇場の最後は、生命の起源について追求しました。生命は以下の4段階で発生したと考えられています。(「海洋科学から見る水惑星の多角的視点にたつ基礎研究」研究報告書より)

1)原始大気からシアン化水素、シアノアセチレン、ホルムアルデヒドなどの簡単な反応活性物質が生成する段階
(2)反応活性物質からアミノ酸、核酸塩基、糖、脂肪酸、炭化水素などの低分子化合物が生成する段階
(3)低分子化合物が脱水縮合しながらつながり、タンパク質、核酸、多糖、脂質などの高分子化合物が生成する段階
(4)高分子化合物が相互作用しながら集合し、複製や代謝などの機能をもった原始生命が発生する段階である。

この4段階の中で原始生命が発生するために中心的な役割を果たしたのが、ヌクレオチドであるという仮説が、劇場会議で展開されました。
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■一般的な生命起源仮設
一般的な学説の例として、先ほど紹介した「海洋科学から見る水惑星の多角的視点にたつ基礎研究」研究報告書の生命起源仮説を要約して紹介します。

核酸が先だとする説は次のような問題がある。自己複製する長鎖のRNAはまだ見つかっていない。単一の塩基組成のヌクレオチド鎖はできるが、RNAのような4種の塩基を含む混合ヌクレオチド鎖はつくれない。リボザイムが古い生物の分子化石であることの証明がまだ不十分である。原始地球を模した環境下では、長鎖のRNAを鋳型なしで合成することはまだ難しい。タンパク質などと複合体を形成しないかぎり、RNA単独では原始スープの中で安定して存続できなかったと思われる。
タンパク質が先に出現したという見方はどうだろうか。原始地球環境下では、核酸よりタンパク質の方が容易に合成されることが観測や実験によって明らかである。この説の最大の弱点は自己複製。タンパク質は核酸のような便利な情報システムをもっていない。20~40個ほどのアミノ酸がつながったポリペプチド鎖が自然につくられ、それらの中からより複雑な二次構造を自己触媒的につくるものが現れたとしたら、それは一種のおおざっぱな複製だったと考えてもよいだろう。
第三のシナリオは、核酸が先でもタンパク質が先でもない、両者が最初から共存していたという可能性である。原始地球に存在した原始スープの中には、隕石や彗星から持ち込まれたものを含めて、アミノ酸やモノヌクレオチドなど多種多様な有機物が存在していただろう。こうした環境の中で、RNAワールドが誕生した。他方、同じ原始スープ中に存在したアミノ酸も無生物的に重縮合をくり返し、20~40残基がつながったポリペプチドがつくられた。これらの進化したポリペプチドは、同様に進化し多機能化したポリヌクレオチドと協力して、それぞれが単独ではもち得なかった新しい高度な触媒機能を実現するRNP(リボヌクレオプロテイン)ワールドを生み出した。

■なんで屋劇場の生命起源仮説
上記の核酸とタンパク質が協力し合って生命を作り出したという生命起源仮説は、分かりやすい部分もありますが、核酸とタンパク質の関係や起源を、協力という言葉であいまいにしているという感じもします。
これに対して、なんで屋劇場の生命誕生仮説が優れているのは、複雑なタンパク質や核酸が形成される前に、単体のヌクレオチドに着目している点です。
生命活動を詳細に見ていくと、RNAやDNA、巨大タンパク質が機能するために、核酸の材料であるヌクレオチドが重要な役割を果たしています。有名なのが劇場でも紹介されたATPとGTPです。ATPは生命活動を支えるエネルギー源であり、GTPは細胞内シグナル伝達やタンパク質の機能の調節に用いられています。
ヌクレオチドはリン酸結合によってAMP(リン酸1個)→ADP(リン酸2個)→ATP(リン酸3個)とリン酸を増やすことでエネルギーを蓄積できる性質があります。このエネルギーが、生命活動の元になっていると同時に、高分子化合物を生成するエネルギー源にもなっています。

■ヌクレオチドが複雑なタンパク質や核酸の合成をリードした
原始スープの中のアミノ酸やヌクレオチドが重縮合をくり返し、複雑なタンパク質や核酸を形成していく過程が完全な偶然に任されていたと考えるのでは現在のような有機生命体が出来上がる可能性は無限に小さくなります。ATPやGTPがエネルギーを使い積極的に誘導材の役割を果たしたと考えると、高分子の合成に明確な秩序が生まれ現在の生命につながったことが合理的に説明できます。
また、ヌクレオチドが高分子を誘導する際には役割分担があり、ATPが核酸、GTPがタンパク質、UTPが多糖、CTPが脂質の高分子化を誘導したとも考えられます。

List    投稿者 nodayuji | 2009-02-03 | Posted in ①進化・適応の原理1 Comment » 

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コメント1件

 matsu子♂ | 2009.04.05 21:40

>変異は「たまたま」に起こるのではなく外圧に規定されていると考える方が自然ですね。
たしかにそうですよね。生物の進化は外圧ありきってことですね。

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