2008-12-10

『P』の秘密(リンって、なに?)①

◆「リン」の発見
リンは、元素発見の歴史の中で、発見年代の記録のある最初の元素らしい。それは、ハンブルグのブラントという男によって1669年に発見された、という。彼は、尿を蒸発させてシロップ状にし、それを蒸留して得た赤色の液体を再蒸留したところ底に黒い沈殿物が生じたが、それを長時間焼く事で白く輝く物質(黄リン)を得たらしい。
1676年にはクンケルが、1680年にはボイルがリン元素を分離することに成功したが、製造法は公開しなかったにも関わらず元素としてのリンの存在は、徐々に一般に知られるようになった。1770年頃には、シェーレがリン灰石からリンを単離する方法とそれが骨の重要成分である事を明らかにした、という。(参考:「肥料になった鉱物の物語」高橋英一著)
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◆生物にとっての「リン」
「リン」に関するWikipedia情報を抜粋すると、以下の通り。
           

●リン(Wikipedia)
★抜粋★
生体内では、遺伝情報の要であるDNAやRNAのポリリン酸エステル鎖として存在するほか、エネルギー代謝に欠かせないATP(アデノシン三リン酸)など、重要な働きを担う化合物中に存在している。
また、脊椎動物ではリン酸カルシウムが骨格の主要構成要素としての役割も持つ。このため、あらゆる生物にとっての必須元素であり、農業においてはリン酸が、カリウム・窒素などとともに肥料の主要成分である。

●リン酸(Wikipedia)
%E2%98%85%E3%83%AA%E3%83%B3%E9%85%B8.jpg
★抜粋★
リン酸は(中略)、化学式 H3PO4の無機酸である。(中略) 生化学においては、DNA、ATPを構成するため非常に重要。(中略)またタンパク質の機能調節(またそれによるシグナル伝達)においてもリン酸化は重要である。これらのリン酸化は多くの場合ATPを用い、特定のリン酸化酵素によって行われる。

●アデノシン三リン酸(Wikipedia)
%E2%98%85ATP.bmp
★抜粋★
アデノシン三リン酸とは生物体で用いられるエネルギー保存および利用に関与するヌクレオチドであり、すべての真核生物がこれを直接利用する。 (中略)生物体内の存在量や物質代謝における重要性から『生体のエネルギー通貨』とされている。
リン酸基同士の結合(リン酸無水結合)は、エネルギー的に不安定であり、このリン酸基の加水分解による切断反応や、他の分子にリン酸基が転移する反応はエネルギーを放出する。
ATPのリン酸基の加水分解や転位反応は、ネットでの自由エネルギーの減少を伴うエネルギー放出反応となり、あたかもATPのリン酸基同士の結合の切断が生体内の化学反応の実質的な推進力となっているように見えるため、この意味において、この結合は『高エネルギーリン酸結合』と呼ばれている。

●高エネルギーリン酸結合(Wikipedia)
★要約★
リン酸のP-O間の結合エネルギーは一般の化合物と比べて特に大きいわけではないが、加水分解による切断時の標準自由エネルギーの減少は、通常のリン酸化合物の3000cal/mol程度に対して、ATPの加水分解における減少は7000cal/molにも達する。

どうやら「リン」は、生体内ではリン酸化合物として存在し、非常に重要な働きをしているようだ。 その最たるものとして「DNAの化学合成」を追ってみると、

ヌクレオチドは、4種類の塩基(A:アデニン、G:グアニン、C:シトシン、T:チミン)のどれか1つと、1つのデオキシリボースと、1つのリン酸が結合したもの。このヌクレオチドがリン酸と糖を介してヒモ状につながり、2重らせん構造をなすものがDNA。
%E2%98%85DNA%E8%A4%87%E8%A3%BD.bmp
ジッパーを開いて、それぞれを鋳型にして複製していく様子は上図の通り。はしごに例えると、2本のたて材と踏み段になる横材のなすH型の部品を繋ぐのが「リン酸」ということになるらしい。
2本のたて材との間隔は、わずかに2分子のヌクレオチド・サイズの幅に過ぎないが、縦には1億個のヌクレオチド(塩基配列)にも及ぶらしい。何とも心許ないヒモのように思われるが、生体内のほかの高分子に較べれば桁外れに丈夫な化学成分というのだ。それに、「リン酸」は関わっているのだ。

★ブログ紹介★
途中の「概念図」の絵柄を拝借させていただいた、「 ぐうたら能無し教授の日記(坂口謙吾)」がおもしろい。その中でも、シリーズものの『アンチョコ種話集』は、
気楽に読んでください 。文系出身の読者や中学生高校生を念頭に置いて、なるべく専門用語は避けて書いたつもりである。
との触込みとおり、専門用語や化学式で煙に巻くようなことがなく、そして、学術論文のように肩肘を張っていない分、むしろ著者が潜在思念で感じ取っている事を自由闊達に展開しているように思う。お勧めです。

—————————————-
★「リン」の話は、生物系から脱線しつつも、続きます。興味があったら、読んでください。
   by びん

List    投稿者 staff | 2008-12-10 | Posted in 未分類 | 7 Comments » 

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コメント7件

 ピンクジャック | 2009.01.15 3:00

マリグラヌールって、おもしろーい!
人工的につくれるのに自己複製するなんて、すごい!
興味深い物質(?)ですね。
マリグラヌールが形成される過程とか、自己複製する過程をもっとよく調べれば、生命の起源が色々わかりそうですね☆☆

 のだおじさん | 2009.01.17 19:34

>マリグラヌールが形成される過程とか、自己複製する過程をもっとよく調べれば、生命の起源が色々わかりそうですね☆☆
本当にその通り、今は結晶のように出来ると想像してますが、中空のマリソームが先に出来て、中にアミノ酸複合体が充填されていく、という記載もあります。
どなたか知っている人が居られたら教えてください。

 KAM | 2009.01.23 3:16

マリグラヌールの自己複製の過程、面白そうですね。
マリグラヌールについて考えているうちに、「自己複製」と「自己組織化」の区別があいまいになってきました。
自己複製=すでにある構造を鋳型にして、同じ構造を複製する。
自己組織化=物理化学的な作用などにより、ひとりでに生長して構造を作る。
という感じでしょうか。
自己複製と呼べるかどうかは、出芽したものと、元になっているものとの間の相同性が、どの程度あるのかにかかっている気がします。
マリグラヌールは、ラングトンの自己複製するセルオートマトンと似ている気がしました。
ラングトンのセルオートマトン「ループ」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%88%E3%83%B3%E3%81%AE%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%97
JAVAアプレットはこちらで見れます。
http://www001.upp.so-net.ne.jp/suzudo/loop.html

 のだおじさん | 2009.01.24 19:35

KAMさんようこそ
自己複製と自己組織化の定義、KAMさんの定義と同じイメージで使っていました。
加える点があるとすると、生命は複数の分子、器官が組み合わさった複雑な構造をしており、その複雑な構造が複製されることでしょうか。
また、環境に対してある程度の自立性を持っていることも条件になると思います。温度や、材料の濃度が変動しても、ある程度は自立的に環境に適応し複製できることです。
マリグラヌールは、複数の分子は持っていそうですが、温度や材料濃度などは環境に依存している可能性が高く、生命の3歩手前と考えました。

 のだおじさん | 2009.01.24 21:00

マリグラヌールの形成過程について、るいネットに投稿しましたので、興味のある方はご覧ください。
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=197793

 KAM | 2009.01.28 23:25

のだおじさん さんへ
貴重な情報、ありがとうございます。
マリグラヌールの話をうかがって、修飾海水の条件(組成や温度など)によって、マリグラヌールの形態とか複製のパターンなどがどのように変化するのか、または、しないのかに興味が沸きました。
粘菌の子実体形成などでも、環境の条件を変えると形がかなり変わるそうですので、マリグラヌールの形というのも、どのくらいの幅があるのかを考えるのも面白いかと思いました。
よいきっかけをいただいたので、僕も調べてみたいと思います。

 のだおじさん | 2009.01.31 23:25

>よいきっかけをいただいたので、僕も調べてみたいと思います。(KAMさん)
マリグラヌールも面白いですが、なんで屋劇場の生命の起源もおすすめです。是非そちらも見てください。

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