原核生物におけるDivIVAの役割(2)
まずは、前回投稿した記事( http://www.biological-j.net/blog/2008/10/000575.html )の原文に添えられていた顕微鏡写真をご覧ください。
【図3】
RacAの細胞極への局在はDivIVAによる。蛍光顕微鏡検査法写真で示しているのは、胞子形成時にRacA-GFPを合成している系統(SB272)(A)、MinD(SB314)(B)の変異体がRacA-GFPを合成している系統、およびMinDとDivIVA(SB319)(C)の変異体がRacA-GFPを合成している三つの系統である。
一番左の列は、細胞膜がFM4-64(赤)で染色され、蛍光を発している。 二番目の列は、RacA-GFP(緑色)の蛍光を発している。 三番目の列は、一番目と二番目とを重ねたもの。 そして、第四列は、FM4-64、RacA-GFP、およびDNAをDAPI(青)で染色し蛍光を発している三つを重ねたものを示している。なお、(C)の赤い線は細胞極を、白い線はRacA-GFP増殖巣の位置を示す。
毎度クリックしていただき、ありがとうございます。
  
前回翻訳した内容をごく簡単にまとめると、以下のようになります。
●RacA
複製されたDNAを両極に引っ張っていくのが、RacAというタンパク質の役割です。DNAの周囲にくっつき、細胞の両極にあるDivIVAへと引っ張っていきます。DNA上の、RacAを合成するための領域は複製開始点であるOriCの傍にあります。(前回記事の図A)
●DivIVA
「細胞分割タンパク質」の一つです。”Div”はDivision(分裂)の略のようです。細長い形をした桿菌の場合、DivIVAは細胞の両極にあり、RacAと反応して、複製されたDNAを引っ張っていくことになります。
今回のケースだけかもしれませんが、DivIVAが変異体の場合、空の前胞子を形成する、という点が気になります。
●MinCD
MinCDは細胞分裂に関与するタンパク質で、細胞成長期にはDivIVAが両極につないでいます。胞子形成時にはDivIVAから解放され、細胞全体に広がっていきます。MinCDは細胞分裂を妨げる性質を持っており、これが極から解放されることで、分裂が促進されます。(極から分裂するという意味でしょうか?)
MinCDが存在すると分裂が起こらないということは、MinCDが原核生物の分裂周期を司っている可能性もあります。
なお、この論文ではRacAに焦点を当てていますが、DivIVAに関する論文も、件の記事からいくつかリンクされています。どなたか、ご一緒に翻訳にチャレンジしませんか?(笑)
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コメント5件
iwaiy | 2008.11.22 20:52
ふつうは、万能細胞である受精卵から個体のあらゆる細胞をつくっていくために、エピジェネティクス情報は一旦リセットされると言われていますが、本当にそうなのかが知りたいところです。
> てっきり遺伝するものだと思ってましたが…
↑こう考えられていた理由は何ですか?
iwaiy | 2008.11.22 21:01
ちなみに、
ブログ「バイオ やばいぉ・・・」の記事
http://bioinformatics.blog7.fc2.com/blog-entry-465.html
「動物では世代ごとにリセットされるが,植物ではリセットされない.最近,哺乳類でも完全にリセットされず,子孫に伝達されるものが発見されている.」という言及がありました。
dyna | 2008.11.23 12:32
コメントありがとうございました。
http://bioinformatics.blog7.fc2.com/blog-entry-465.htmlにて説明をさせていただきました。
参考になったらと思います。
iwaiy | 2008.11.24 21:42
dynaさん、ご丁寧な解説ありがとうございました!
dynaさんのブログはよく参考にさせてもらっています。
今後ともよろしくお願いします!
hadou | 2008.11.22 19:45
エピジェネティクス情報が遺伝するかどうかは多細胞生物ではまだわかっていないんですね!?
てっきり遺伝するものだと思ってましたが…