2008-08-19

生命の起源、先人たちの追求-2

genshochikyuu.bmp
前回の続きです。
生命の起源の研究を一番難しくしているのは、原始生命のはっきりとした証拠がないことです。原始生命の痕跡(化石)でもあれば、その組成を調べれば解明できるし、あるいは、現在でもどこかで原始生命に近い存在が生成され続けている状況がみつかれば、そこから推定も可能です。しかし、それらのいずれも見つかっていません。

具体的に目に見える化石が存在しなくても、現在の生命の中に生きた分子の化石が残されていることが分かってきた。その生きた分子の化石の一つがRNA(リボ核酸)である。触媒作用を持つRNA(リボザイム)の発見を機に、生命はRNAから始まったのではないかと考えられるようになってきた

(パリティ編集委員会編「生命の起源」より柳川弘志「生命の起源研究の歴史」より)
この触媒作用とは、アミノ酸をタンパク質に変える働きのことです。複製機能があるRNAがタンパク質合成機能をもつことで、生命体の基本機能を保持することになります。
では、太古の地球でRNAは生成され得たのか?
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■RNAは太古の地球で合成されたのか?
1006.jpg

前回紹介したユーリーとミラーの実験では、アンモニア、メタン、水素、水蒸気などの混合ガスに放電するとタンパク質の原料であるアミノ酸が生成した。後の実験で、ガラス球に入れる成分を少し変えると、アミノ酸に加えてアルデヒドという有機化合物も生成された。

その後、いろいろな種類のアミノ酸をたくさん含んだ溶液に紫外線を照射する実験が行われた。すると、アミノ酸の連なった短い鎖状のポリペプチドまでも合成された。この結果は、無機化合物からタンパク質が合成される可能性を示している。

一方、RNAやDNAといった核酸についてはどうであろうか。そこで今度はアルデヒドに紫外線を当ててみた。すると糖と塩基が合成されたのである。糖と塩基はされにリン酸に結合し、生体のエネルギー物質ATP(アデノシン三リン酸)を形成するとともに、短い核酸までも形成した。

こうなると、原始地球上で、無機化合物から低分子無機化合物が合成され、生命を構築するタンパク質と核酸が化学進化を経て生成されていたことになる

上記は、黒岩常祥著「細胞はどのように生まれたか」からの引用ですが、RNAの生成があまりに簡単に書かれているので、別の記述も紹介します。

細胞高分子の単位素材となった低分子物質の生成です。これらはタンパク質の単位となるアミノ酸をはじめとして、拡散(塩基とペントース)や脂質(グリセリン、脂肪酸など)の各素材が自然合成されました。先に述べたように、ミラーが化学進化のシミュレーション実験でアミノ酸の合成に成功して以来、火花放電などいろいろなエネルギー源を用いて追従、確認されました。さらに、脂質の素材であるグリセリン(トリオース)や脂肪酸の化学合成も容易であることもわかってきました。

 しかしながら核酸の単位素材であるヌクレオチドの化学合成には、明らかに原始地球には存在しなかったような特殊な条件が必要です。ヌクレオチドの構成要素である塩基類が宇宙で自然合成されていることは、オーストラリアに落下したマーチソン隕石などにこれらが含まれていることから明らかです。またヌクレオチドのもう一つの成分であるペントース(五炭糖)はきわめて不安定で、まだ安定な合成条件は見いだされていません。

↓これがマーチソン隕石
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(中村運著「新・細胞の起源と進化」より)

List    投稿者 kumana | 2008-08-19 | Posted in 6)“祖先の物語”番外編2 Comments » 

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コメント2件

 blogger0 | 2008.09.21 2:19

自己レスです。
日本ウィルス学会の記事も、リコーの記事も、ネタ元は一緒でしたね。^_^;)
http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/299/5606/532

 s.tanaka | 2008.09.26 21:17

私もそのページは読んだことがあります。
「DivIVA」っていうやつと「RacA」っていうタンパク質?が、
原核細胞分裂で重要な役割を果たしているらしいというのは分かったんですが、
それ以上の日本語資料が見つからないんですよね。
またなにか見つけたら記事にしてください。

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