2008-05-26

受精のしくみ

受精は種特異的に行なわれます。例えば、ヒトの精子はマウスやハムスターの卵には受精できません。
受精するためには、精子と卵子が相互に同類の細胞であることを認識(種認識)する必要があります。
また、卵子は一匹の精子を受け入れたら他の精子は拒絶(多精拒否)します。

考えたら不思議ですね。
精子と卵子はどうやってお互いを同類と認識したり、拒絶したりしているのでしょうか?
今日はその謎を探るべく、受精の仕組みを調べてみます。
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<マボヤの受精のプロセス:リンクより引用>

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<図はリンクより引用>

一般に,卵細胞は糖タンパク質性(海産無脊椎動物では卵黄膜,哺乳類では透明帯という)と細胞性(濾胞細胞)の卵保護層により覆われている。
受精の際には,精子が卵黄膜(透明帯)上の精子レセプターに結合後,先体反応と呼ばれる精子頭部先体胞の開口分泌が引き起こされ,先体胞内のライシン(精子プロテアーゼ等)が細胞膜上に露出あるいは放出される。
そのライシンの作用により卵黄膜(透明帯)に精子通過口が開けられ,精子が囲卵腔内に進入して精子と卵との細胞膜融合が起こる。この細胞膜融合が起こると,卵表層粒のプロテアーゼが開口分泌され卵黄膜(透明帯)上の精子レセプターが分解されて,多精拒否が成立すると考えられている。
種認識多精拒否,そしてホヤ類における同種異個体認識(マボヤは雌雄同体で精子と卵を同時に放出するが自家受精は起こらない)は,上記の精子と卵黄膜(透明帯)上の精子レセプターとの細胞間相互認識によって行われているといっても過言ではない。
リンクより引用>

透明帯:哺乳類の卵母細胞の細胞膜を取り囲む糖タンパク質の細胞外マトリックス。細胞外マトリックスとは、細胞の外に存在する超分子構造体。細胞外の空間を充填する物質であると同時に、骨格的役割、細胞接着における足場の役割、細胞増殖因子などを保持・提供する役割などを担う。<ウィキペディアウィキペディアより>

先体反応:精子の先体(頭部の袋状の部分、中に脂質糖タンパク質複合体の先体物質が含まれている)が透明帯に接近した時に起こる反応。卵に精子が接近した時、先体を包む膜は精子の原形質膜と融合し、卵と融合できる状態となる。
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<ウニの細胞における先体反応:ウィキペディアより>

ライシン:溶菌酵素。(例えば、バクテリオファージが産生するライシンは、黄色ブドウ球菌の細胞壁を極めて効率良く破壊する。)<リンクより>

囲卵腔:卵細胞質膜と透明帯の間の隙間。囲卵腔は未受精卵ではない。受精直後より形成される。

細胞膜融合:2つの脂質膜が合体して一つの膜になる現象。受精の他、エンドサイトーシスやエキソサイトーシス、小胞輸送など細胞内の多くの過程に膜融合が関わっている。<リンクより>

プロテアーゼ:ペプチド結合加水分解酵素の総称。アミノ酸がペプチド結合によって鎖状に連結したペプチドやタンパク質のペプチド結合を加水分解する。<ウィキペディアより>

精子と卵子が同類の細胞であると認識するのは、卵黄膜(透明帯)上の精子レセプターに精子が結合するという仕組みによる。(それには糖鎖も関わっている。<リンクより>)そして、いったん膜融合が成立すると、ペプチド分解酵素(プロテアーゼ)によって、精子レセプターが分解されて、その他の精子は拒絶される。

実は、精子と卵子の膜融合のメカニズムは殆ど分かっていないらしい。しかし、手がかりは他にもある。例えば、ウィルスが細胞に侵入する時のウィルスの膜(エンベロープ)と標的細胞の膜の融合の場合も、ウィルスのレセプターと膜タンパク質が関与している。<リンクより>

おそらく、受精の仕組みには、単細胞生物の融合や免疫機能の仕組みなどと同じ原理が働いているように思われる。細胞膜が原始的に持っている認識機能がそのベースになっているのではないだろうか。

List    投稿者 fkmild | 2008-05-26 | Posted in ⑤免疫機能の不思議4 Comments » 

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コメント4件

 なでしこ☆ | 2008.07.04 5:37

おもしろい仮説ですね☆
>種の存続のためには群体or個体の多様性確保は不可欠だが、
>表面が柔らかく、他個体の細胞が入り混じりやすい動物においてナチュラルキラー細胞が登場したというのだ。
でも、もしホシムシに、別のホシムシの体液が入ったとしても、ホシムシにしかならないから、キメラにはならない?
とか思っちゃったのですが、どうなんでしょうか?
ご存知でしたら、おしえてください☆
それにしても、生物の進化って、興味深いですね☆

 arinco | 2008.07.04 10:43

NK細胞の起源。興味深く読ませていただきました。
>種の存続のためには群体or個体の多様性確保は不可欠だが、表面が柔らかく、他個体の細胞が入り混じりやすい動物においてナチュラルキラー細胞が登場したというのだ。
はなるほど!という感じです。やはり最後は「種の保存」に立ち戻る。というわけですね。

 yama3 | 2008.07.05 21:45

なでしこ☆さん、arinco さんコメントどうもです。
>ホシムシに、別のホシムシの体液が入ったとしても、ホシムシにしかならないから、キメラにはならない?
一般的にキメラはAの頭にBの手足がついたようなイメージを持ちますが、それだけではなく「同一個体内に異なった遺伝情報を持つ細胞が混じっていること」をいいます。
つまり同じホシムシでもXという細菌に対する抵抗力を持ったホシムシと、Xという細菌に対する抵抗力を持たないホシムシの血球が入り混じってしまえばそれはキメラと呼んでいいわけです。
勿論、Xという細菌に抵抗力があるホシムシに、X+Yという細菌に抵抗力があるホシムシの血球が混じっても矛盾は起こりませんから、そういう場合は排除しあうことはないでしょう。
実は、キメラって高等動物になるほどおきやすいという面もあるらしいんですよ。移殖免疫については引き続き勉強していきたいと思います!!

 なでしこ☆ | 2008.07.05 22:53

yama3さん☆へ
返信ありがとうございました☆
>一般的にキメラはAの頭にBの手足がついたようなイメージを持ちますが、
>それだけではなく「同一個体内に異なった遺伝情報を持つ細胞が混じっていること」をいいます。
これ、知らなかったです!まさに、Aの頭にBの手足のようなものを想像していました。
だったら、NK細胞が登場するという仮説もうなずけます☆
おしえていただいて、ありがとうございました☆+゚

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