2008-05-16

多細胞生物の細胞接着

Neuron.jpg
以前のなんでや劇場レポートで多細胞生物の体細胞はつかず離れずの状態にあるという話がありました。体細胞同士ってどういう仕組みでくっついてるんでしょうか?? 🙄
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当然ですが、多細胞生物は複数の細胞が接着し、ひとつの生体を構成 しています。そして、その細胞接着には、細胞外マトリックスや膜の細胞接着分子、細胞骨格などが重要な役割を果たしているようです。
大きくは、細胞同士の接着の場合と細胞と細胞外マトリックスの接着の場合がありますが、ここでは細胞同士の接着について見てみたいと思います。細胞同士の接着様式には大きく次の4種類があるようです。
 
①密着結合(tight junction)
②接着結合(adherence junction)
③デスモゾーム結合(desmosome junction)と⑤ヘミデスモゾーム
④ギャップ結合(gap junction)

 
それぞれの結合の方法、特長についてもっと詳しく知りたい方は細胞の生物学さんで非常にわかりやすくまとめられているので、是非そちらをご参照ください。
 
 
因みに、各組織での接着は下のようになっています。
 

上皮組織
   主に,上皮細胞同士が接着。アドヘレンス・ジャンクション、タイトジャンクション、
   デスモソームのような特殊化した接着構造を形成。
結合組織など
   周辺の細胞外マトリックスに接着。
造血組織など
   血液細胞などふだんは細胞接着してない細胞→細胞分化や機能発現時には
   ある種の組織へ接着。免疫応答における細胞間認識。
神経細胞
   神経細胞の移動、軸索誘導,シナプス形成で,細胞接着が不可欠。


 
 
そして、これらの細胞接着を可能にしているのは細胞膜表面の膜タンパク質の存在で、これを細胞接着分子と呼びます。(細胞接着分子は同一接着分子同士による結合の場合(homophilic adhesion)と、異種接着分子同士による接合の場合(heterophilic adhesion)があるようです。)
細胞接着分子の種類には以下のようなものがあります。
 
カドヘリンスーパーファミリー
インテグリンファミリー
クローディンファミリー
免疫グロブリンスーパーファミリー
セレクチン
ニューロリギン、ニューレキシン
細胞表面プロテオグリカン
 
 
 
以上、ざっと見てきましたが、今回はこの細胞接着分子の中でも神経細胞の軸索誘導、シナプス形成にも関連し、注目されているカドヘリンについて更に見てみようと思います。
 
カドヘリンは1980年代に竹市雅俊氏らによって発見され、多細胞生物成立の根幹を担う分子として知られていました。カドヘリンは当初、脊椎動物で発見されましたが、その後、ショウジョウバエなどでも発見されており、多細胞動物に普遍的に存在する、根幹ともいえる分子ではないかと考えられているようです。
そして、そのカドヘリン(プロトカドヘリン)が軸索誘導やシナプス形成にも不可欠な分子として機能していることが実験で明らかになっています。
つまり、脊椎動物以降の神経系の発達(有髄神経etc.)においても、接着(親和型膜タンパク)という側面からは、脊椎動物に進化して以降、新しい接着分子が登場したのではなく、古くからある接着分子を使って発達させていったということのようです。
 
 
(参考)
細胞の生物学
CDB Millennium 発生と再生
福岡大学理学部化学科HP
理化学研究所 発生・再生科学総合研究センターHP
「多細胞体の構築と細胞接着システム」関口清俊・鈴木信太郎/日本生化学会編(共立出版)

List    投稿者 hadou | 2008-05-16 | Posted in 未分類 | 4 Comments » 

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コメント4件

 アヨアン・イゴカー | 2008.06.28 13:27

>重要なのは、全ての生物[単細胞であっても(注)そもそも単語の意味がおかしいが・・・]は存在時点で群れる生物を出発点にしており、多細胞化とは、そのコロニーを自然的な飽和点で分解・拡散しないように接着拡大していった単細胞生物群である。という事である。
この視点は、示唆に富んでいます。蟻や蜂の個体を細胞のように看做す考え方がありますが、それに似ていて、個体とは何かと考えさせられます。

 h100p | 2008.06.28 20:44

アヨアン・イゴカーさん。コメントありがとうございます。
>蟻や蜂の個体を細胞のように看做す考え方がありますが、それに似ていて、個体とは何かと考えさせられます。
 蟻や蜂等の昆虫類の細胞結合の進化は、我々哺乳類の結合進化とは違う方向で進化しているようです。つまり、多細胞と為す「結合分子」のコンパクト化という進化目的は同じだが、そのコンパクト型式が違うようです。 
 それを大きな括りで捉えるとやはり、昆虫も群れを為しているだけで個体という概念は無いのではなかろうかと思います。
 全ての生物の起源はそもそも群体ではじまっており、個体という概念は我々人が見える範囲での狭い視点による括りなのでは無いかと思ってます。

 yama3 | 2008.06.28 21:02

http://www.brh.co.jp/katari/sicpdiary/sicpdiary108.html に
>なぜ私たちは多細胞生物としての地位をもつことを当然とし、「単細胞生物のコロニー」という地位をもつことを当然としないのかと思ったのです。「単細胞生物のコロニー」でも生物学的にはいっこうに問題は生じない、というよりもその方が論理的に正しいのではないか。
という文がありますが、そのとおりだなあと、私も思います。
それ以上分割不能ななにかがある、という還元論的思考に問題がありそうですね。

 h100p | 2008.06.28 21:30

yama3さん。コメントありがとうございます。
>還元論的思考に問題がありそうですね。
 私もそう思います。
 一つ一つの要素を解明していく還元主義とは、医学で言うところの西洋医学に近い考え方で、東洋医学(全体論)とは違います。
注)還元論として物事を解明する事は必要であり、それ自体に問題があるのでは無い。
 生物学の分野でも機械論(還元論)と全体論(複雑系)に分かれるようですが、生体の医学状況踏まえた現象事実からして、「複雑系」の方向で捉えて、偏り無く物事を考えないと、事実を見誤ってしまうのは明らかです。
>「単細胞生物のコロニー」でも生物学的にはいっこうに問題は生じない、というよりもその方が論理的に正しいのではないか。
ですね。

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