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多細胞生物の細胞接着

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以前のなんでや劇場レポートで多細胞生物の体細胞はつかず離れずの状態にあるという話がありました。体細胞同士ってどういう仕組みでくっついてるんでしょうか?? 🙄
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当然ですが、多細胞生物は複数の細胞が接着し、ひとつの生体を構成 しています。そして、その細胞接着には、細胞外マトリックスや膜の細胞接着分子、細胞骨格などが重要な役割を果たしているようです。
大きくは、細胞同士の接着の場合と細胞と細胞外マトリックスの接着の場合がありますが、ここでは細胞同士の接着について見てみたいと思います。細胞同士の接着様式には大きく次の4種類があるようです。
 
①密着結合(tight junction)
②接着結合(adherence junction)
③デスモゾーム結合(desmosome junction)と⑤ヘミデスモゾーム
④ギャップ結合(gap junction)

 
それぞれの結合の方法、特長についてもっと詳しく知りたい方は細胞の生物学 [4]さんで非常にわかりやすくまとめられているので、是非そちらをご参照ください。
 
 
因みに、各組織での接着は下のようになっています。
 

上皮組織
   主に,上皮細胞同士が接着。アドヘレンス・ジャンクション、タイトジャンクション、
   デスモソームのような特殊化した接着構造を形成。
結合組織など
   周辺の細胞外マトリックスに接着。
造血組織など
   血液細胞などふだんは細胞接着してない細胞→細胞分化や機能発現時には
   ある種の組織へ接着。免疫応答における細胞間認識。
神経細胞
   神経細胞の移動、軸索誘導,シナプス形成で,細胞接着が不可欠。


 
 
そして、これらの細胞接着を可能にしているのは細胞膜表面の膜タンパク質の存在で、これを細胞接着分子と呼びます。(細胞接着分子は同一接着分子同士による結合の場合(homophilic adhesion)と、異種接着分子同士による接合の場合(heterophilic adhesion)があるようです。)
細胞接着分子の種類には以下のようなものがあります。
 
カドヘリンスーパーファミリー
インテグリンファミリー
クローディンファミリー
免疫グロブリンスーパーファミリー
セレクチン
ニューロリギン、ニューレキシン
細胞表面プロテオグリカン
 
 
 
以上、ざっと見てきましたが、今回はこの細胞接着分子の中でも神経細胞の軸索誘導、シナプス形成にも関連し、注目されているカドヘリンについて更に見てみようと思います。
 
カドヘリンは1980年代に竹市雅俊氏らによって発見され、多細胞生物成立の根幹を担う分子として知られていました。カドヘリンは当初、脊椎動物で発見されましたが、その後、ショウジョウバエなどでも発見されており、多細胞動物に普遍的に存在する、根幹ともいえる分子ではないかと考えられているようです。
そして、そのカドヘリン(プロトカドヘリン)が軸索誘導やシナプス形成にも不可欠な分子として機能していることが実験で明らかになっています。
つまり、脊椎動物以降の神経系の発達(有髄神経etc.)においても、接着(親和型膜タンパク)という側面からは、脊椎動物に進化して以降、新しい接着分子が登場したのではなく、古くからある接着分子を使って発達させていったということのようです。
 
 
(参考)
細胞の生物学 [4]
CDB Millennium 発生と再生 [5]
福岡大学理学部化学科HP [6]
理化学研究所 発生・再生科学総合研究センターHP [7]
「多細胞体の構築と細胞接着システム」関口清俊・鈴木信太郎/日本生化学会編(共立出版)

[8] [9] [10]