2008-03-31

植物の免疫機能ってどうなってるの?

動物には、マクロファージ をはじめとする発達した免疫細胞が、からだを守っています。
じゃ、植物の免疫機能はどうなってるの
今日はそこを調べて みます。
まず、動物と植物の防御機構における最も大きな違いは、
植物には免疫細胞がなく、個々の細胞が病原体の認識から防御までの
一連の過程を担っている
ことです。
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第一段階:細胞壁で、侵入をブロック!
植物は免疫細胞を持っていませんが、一つ一つの細胞が外敵から侵入を阻害できる機能を持っています。まずは、外敵が侵入しにくい硬い細胞壁があるということ。
植物の細胞には動物細胞にはない細胞壁があるため、動物と比較するとウイルスが侵入しづらい構造になっています。
第二段階:免疫物質?の分泌で、外敵を寄せ付けない!
過敏感反応という機能が植物にはあります。
サリチル酸(SA)、ジャスモン酸(JA)、エチレン(ET)といった植物ホルモンによって防御関連タンパク質群が誘導され、抗菌作用を示すようになります
サリチル酸(SA)は植物免疫では重要で、個々の細胞における免疫シグナルであるほか、他の細胞や器官に移動することによって、植物全体が抵抗性を獲得することができるようになります。
これは、全身獲得抵抗性といわれる現象で、初めて病原体が感染した場合、「来たぞ !」という「警戒シグナル 」 が植物全体に伝わることにより抵抗性を高める、という働きがあります(イメージ図を参照)。
shokubutusaibou.gif
第三段階:防御機構の最終・最強の兵器  「細胞死」!
植物は、免疫細胞によって病原体を殺すことが出来ないので、病原体に侵入を許した細胞は、自ら死ぬことにより、病原体の感染拡大を防ぐという戦略を実行します。
「植物体全体が助かるために、自らは死を選ぶ」というのは、何というか涙ぐましい 話ですが、実際この方法が最も効果的な感染拡大の防御手段であることは間違いありません。
ha.gif
感染して細胞死した葉っぱ
植物は、ウイルスには対抗するよりも、感染した細胞が死ぬ事によって全体の死から逃れるシステムになっているのです。
まとめ
植物は短期間で多数の種子(子孫)を残すことができます。
また、植物に関して言えば、種が絶滅するような病気は今のところ無いといわれています。
ですから、植物は免疫システムを高度に進化させる必然性が弱く、かつ免疫細胞を体内に共生させる基盤も無いため、動物のような高度な免疫システムではなく、必要最低限の機構で感染から身を守っているようです。
参考
Re:3月20日なんでや劇場「免疫細胞誕生の秘密」で出てきた疑問⇒植物の免疫機能について
ウイルスに対する植物の防御機構

List    投稿者 zakky | 2008-03-31 | Posted in 未分類 | 5 Comments » 

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コメント5件

 KAM | 2009.02.10 0:50

fkmildさん、はじめまして。
KAMと申します。
ボルボックスは、多細胞生物の起源について考える上で、とてもよいモデルだと思います。
記事を拝見して、知らなかったことが多々あり、とても勉強になりました。
生物の見方は、いろいろなものがあると思います。
生物物理を勉強していた立場からすると、
>群全体で泳ぐ時に、体細胞の鞭毛が協力して同じ方向に運動することや、インバージョンも、娘群体が協力して起こることから考えて、ボルボックスの細胞どうしが、同類(仲間)と認識し合っていることは間違いないであろう。
ということについて、別の見方をします。
生物が刻むリズムは、「非線形振動子」として捉えることが可能です。
非線形振動子の一般的な特徴として、「引き込み現象」と呼ばれるものがあります。
この引き込み現象により、非線形振動子を相互作用させただけで、あたかも群れ全体が協調して動くかのようなふるまいをシュミレーションすることができます。
最近、モジュールロボットとか、自律分散ロボットというものが注目されていて、同じ機能を持つモジュールの集団をつくり、その集団に協調した動きを創発させると、生き物のような動きが生まれてきます。
鞭毛の協調運動について、そのような見方も役立つかもしれません。
モジュールロボット動画
http://www.youtube.com/watch?v=4oSavAHf0dg&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=Tq8Yw19bn7Q

 fkmild | 2009.02.14 21:57

KAMさん、コメントありがとうございます。
こんな昔のエントリーまで読んでくださって感激です。
果たして、「同類(仲間)と認識し合っている」かどうかは、推測の域を出ないのですが、仮説としてはあり得るかな?と思って大胆に書いてみました。素人考えですが、同類どうしが群れるという性質は、生命にとってしごく基本的なことであり、そこには同類を認識する何らかの機能が関わっているのではないだろうか?と考えています。
いささか擬人論的すぎるかも知れませんが、そのメカニズムが科学的に裏付けられるといいなと思っています。
「自己組織化」や教えてくださった「非線形振動子の引き込み現象」といったことにはとても関心があります。物質と生命の境界はどの辺にあるのか?という興味はつきません。
また参考になるような情報があったら、是非教えてください。よろしくお願いします。

 KAM | 2009.02.15 1:29

fkmildさん、こんにちは。
僕にとって、この記事は、いろいろな意味でとても興味深いです。
ありがとうございます。
非線形振動子の引き込み現象では、各振動子が持っている振動数が近いほど、引き込み&同調が起こりやすいという一般的な性質があります。
振動数が近い
→互いに同調することが可能
→集団として協調的な振る舞いが生まれる
振動数が遠い
→同調できない
→集団に秩序が生まれず、単なる寄せ集めになる。
これを外から見ると、振動数が近いもの同士は、同類として互いを見分けているというように見えるのではないかなと思いました。
記事をもう一度見返してみて、興味をひきつけられたのは、進む方向の決まり方です。
非線形振動子を並べて同調させた場合、振動数の大きいほうから小さいほうへ波が伝わる性質があります。
そして、振動数は密度とも関係していて、細胞性粘菌では密度の大きいほうが振動数が大きくなるようです。
ボルボックスを見ると、密度分布が出ていて、しかも、それが進む向きと関係があるようですね。
仮説ですが、
体細胞を非線形振動子とみなせる。
密度分布に応じて、振動パターンが決まる。
その結果、進行方向が決まる。
というように考えられるかもしれないと思いました。
発火が伝わる向きと、進行方向が同じなのか、逆なのか、「逆」だとうまく説明できるのですが。。
鞭毛の動き方を見れば分かりそうなのですが、どこか、ボルボックスすが進んでいる様子(動画)を見れるところをもしご存知でしたら、教えてください。

 fkmild | 2009.02.15 16:38

KAMさん、こんにちわ。
面白いですね。ちなみに実は建築の仕事をやっているのですが、建物にも固有振動数(周期)というものがあって、地震の振動数(周期)と一致すると共振して大きく揺れるといったことがあります。
スケールが全然違うので何とも言えませんが、ひょっとしたら生命原理とも相通じるものがあるのかも知れませんね。(もっとも、建築の場合(物理の世界)は、密度(比重)が大きいと振動数は小さくなる(揺れにくい)という違いがあるようですが・・・)
ちなみに、人間の集団にも波長の合うやつと合わないやつがいたりしますが、何だか関係しているようで興味深いです。
ボルボックスが進んでいる様子がわかる動画は、今のところ見たことがありませんが、見つけたらお知らせします。

 KAM | 2009.02.16 1:50

fkmildさん、こんにちは。
建物の共進とも、共通点があるような気がします。
ボルボックスの動画を検索してみましたら、いくつか、出てきました。
http://chigaku.ed.gifu-u.ac.jp/chigakuhp/html/KYO/seibutsu/syokubutsu/biseibutsu/boruboks/index.html
http://www5.tok2.com/home2/ayuayu2003/volvox.html
鞭毛の動き方は分からなかったのですが、ほとんどの個体が「回ってる」ことが、興味深かったです。
非線形振動子によるパターン形成では、ターゲットパターンよりも、スパイラルパターンのほうが安定で、生まれやすいです。
もし、そのようなものが鞭毛の動きに生まれていて、ボルボックスが回転しているのではないかと予想しました。
また、細胞性粘菌では、光などの刺激によってその箇所の振動数が他の部分より大きくなり、振動数が大きいほうから小さいほうへ波が進み、その結果として光のほうへ進むことが分かっています。
ボルボックスでも、もしかしたら、同じような仕組みがあるのかもと思いました。
だんだん、ボルボックスに興味がわいてきました。

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