獲得免疫の認識機能
<生物総合資料 長野敬・牛木辰男監修 実教出版 2007年11月発行 より引用>
前回の記事でリンパ球は個別認識を行っているという話しを展開しましたが、今回は、もう一段深く 突っ込んでいきましょう
その前にいつものヤツお願いします
●B細胞はどうやって個別認識を行っているの?
もう少し疑問を噛み砕いてみると、私達のまわりには無数の細菌やウィルスが存在しています
これは事実ですね 🙄
さらに、人間に限っては、これまで地球上に存在しなかった物質(人工物質)をもつくりだしています
それらに対応するには、無数のアンテナ(抗体)が必要どころか、いまだ存在していないような異物のアンテナ(抗体)まで用意していないと論理的には個別認識できないはずです 🙄
天文学的な数の異物に対して、B細胞はどういう仕組みで個別認識を行っているのでしょうか 単純に、不思議だと想いませんか
この件は、免疫学会でも最大の謎だったそうですが、答えを出した人がいるのです
その人こそ、わが日本が生み出したノーベル賞学者「利根川進氏」です。
その驚くべき仕組みはリンクに詳しいので参照していただきたいのですが、簡単に言うと、B細胞は常に遺伝子を再構築しているのです。
これは驚くべきことです
なぜなら、通常、私達の体は1つの受精卵が分裂を繰り返して出来上がりますよね
分裂の時にはDNAは正確に複製され分裂するそれぞれの細胞に配分されますから、私達の体を構成する細胞はすべて同じ遺伝子を持っているはずです
ところが、B細胞では遺伝子が変わってしまっていたことになります
このような他の細胞では見られない驚くべき仕組みで、どんな未知の異物にも対処できる多様性をB細胞は準備しているのです 😀
●T細胞は、どうやって個別認識を行っているの?
T細胞の個別認識を理解するためにはMHC分子について押さえておく必要があります
なんか、MHC分子とかいうと難しそうな感じがしますが単純な話しです
われわれの体は60兆~90兆個もの細胞から出来ていますが、その細胞の1つ1つにはMHCクラスⅠ分子という名札がつけられています
A君ならA君という名札が全ての細胞の表面につけられ, 別のBさんにはA君とは別の名札がすべての細胞につけられているのです
この名札は、兄弟や親子でも少しずつ異なっています。
T細胞は、この名札を個別認識して、敵か見方かを判断しているのです。
このように私達の細胞には、個別に特有な名札がつけられていることが移植を難しいものにしているのです。
ちなみに、先ほどすべての細胞にMHCクラスⅠという名札がついていると申しましたが、この名札がついていない細胞もあります。
どんな細胞だと想いますか
ちょっと考えれば、わかります
T細胞が個別認識して名札の異なる細胞などに攻撃するならば、本来、セックス(受精)、輸血、体内保育(妊娠)なんてできませんよね
でも、これらは普通にできますよね
そうなんです 😉 精子と赤血球にはMHCクラスⅠ分子という名札はついていないため、受精が可能だし、血液型さえ一致していれば輸血が可能なのです
<ウイルス感染症がわかる本 田口文章著 成美堂出版 2007年3月発行 より引用>
体内保育にしても、胎児の細胞には、父親と母親の両方のMHC(名札)がついています。たとえ半分とはいえ、MHCが異なるわけだから、母親のキラーT細胞は、胎児の細胞を異物と判断して、本来は攻撃しようとします。
しかし、攻撃されないのは、
>①胎盤の表面にある絨毛(じゅうもう)が胎児のMHCを消している。
②胎盤に含まれる女性ホルモンやステロイドが、キラーT細胞の働きを抑制している。
③しかし、MHCのない細胞は、NK細胞の標的になるので、人類共通のMHCであるHLA-Gという名札をだしてNK細胞の攻撃を免れる。
こんな感じで、本来は異物である胎児の細胞は、二重三重の方法で守られているのです
免疫機能はよくできてます すごいです
加えて、胎生と免疫の関係について、追求してみても面白いですね
また、われわれの体の中の(一部を除く)すべての細胞にはMHCクラスⅠ分子という名札がつけられていますが、MHCクラスⅡ分子という名札をつけている細胞があります
マクロファージや樹状細胞という抗原提示細胞と呼ばれる細胞で、ヘルパーT細胞に異物が侵入してきたことを伝える働きをしています。
抗原提示細胞は異物を取り込んでペプチド(アミノ酸が10個程度つながったもの)にまで分解します。グローブのような形をしたMHCクラスⅡ分子がこのペプチドをつかんで細胞の表面に出てくると、これに反応したヘルパーT細胞がキラーT細胞やB細胞に信号を送り、体液性免疫(B細胞)や細胞性免疫(T細胞)と呼ばれる免疫反応が始まることになります。
まとめると、ヘルパーT細胞のアンテナ(T細胞レセプター)は異物を直接見分けているのではなく、異物がMHC分子と結合して複合体になった時に初めて異物として認識しているといえます。
今回はここまで
<参考>
Welcome to Floral Art
以上、最近、免疫にかなりの興味をもってきた“やっさん”がお伝えしました。
次回のレポートをお楽しみに~
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