2008-01-31

XYとZW~ツチガエルの性決定機構

tutigaeru.jpg

『鳥類の生殖の秘密』でも話題になった、性決定の不思議~雄へテロと雌へテロについて、もう少し別の角度から考えてみたいと思います。

今日の主役はツチガエルです(上の写真)。
なんでもこのツチガエル、同じ種なのに地域によって雄ヘテロ型(XY型)と雌ヘテロ型(ZW型)の両方が存在するそうです

一体どうなってるの?

気になる続きはポチっと押してからどうぞ
ブログランキング・人気ブログランキングへ
にほんブログ村 科学ブログへ

 にほんブログ村 科学ブログへ



まずは・・・
●ツチガエルの生態・・・詳しくは下記をご覧ください
ウィキペディア ツチガエル 
ツチガエル(国交省のページ)  
ツチガエル(農水省のページ)  

ツチガエルは、北海道(一部)及び本州から九州に分布するカエルで、体長は、オスが4cm程度、メスが5cm程度で、メスの方が大きい。体の色は灰褐色、多数のいぼがあるためイボガエルとも呼ばれます。捕らえると悪臭を放つので、地域によってはクソガエルともよばれるそうな・・・
繁殖期は5~9 月、産卵場所は池、水田、湿地、川原などの水たまりや浅い止水で、不規則な形の小さい卵塊を水草などにばらばらに産み付けます。そして幼生越冬し、翌年の5~8 月に変態して上陸。

●ツチガエルの性染色体の不思議
続いて、★コチラの図 をよーくご覧ください :roll:
出典は、「オスとメスはどのように決まるのか 広島大学両生類研究施設 三浦郁夫氏」です。
bunpu.jpg

ツチガエルは第7染色体が性決定に関与していると考えられ、その形態によって、4つのグループに分かれます。

1.西日本グループ:染色体は雌雄同型
2.東海グループ:形態的に異なるXとY染色体を持つ。XX(♀)/XY(♂)型
3.関東グループ:染色体は雌雄同型(西日本グループとは形態が異なる)
4.北日本グループ:形態的に異なるZとW染色体を持つ。ZZ(♂)/ZW(♀)型

ちなみに、XとWは同じ形態の染色体(図ではグレー)。YとZ染色体は同じ形態で、西日本グループの第7染色体と同じ形態です(図では黒)。

話がちょっとややこしいですが、ポイントは、同じ種なのにXX/XY型とZZ/ZW型の性決定機構が存在すること、形態的に分化した性染色体と未分化な性染色体が存在することの2点。

なんでまた、こんなややこしいことになっているのか

近年の研究によれば、その発生→分化の過程は以下のように説明されています。
※参考文献:生殖細胞の発生と性分化 「両生類の性分化」三浦郁夫・高瀬稔・中村正久
keitou.jpg
※図は上記文献より

①もともとの祖先集団は雌雄同型の第7染色体を保持(→この子孫が西日本グループ)
②やがて集団は2つに分かれ、一方では逆位(染色体のある部分の向きが逆になる現象)が発生(→この子孫が関東グループ)
③それぞれ地理的に隔離され分化、再び一部で交配し、雑種個体群が母集団から分化した集団を形成
④さらにもう一度、逆位により、X(W)染色体が登場。優性な卵巣決定機構を獲得
⑤この集団はやがて2つに分化、ひとつは優性な卵巣決定機構とZZ/ZW型の系を確立(→この子孫が北日本グループ)、もうひとつが劣性な卵巣決定機構とXX/XY型を確立(→この子孫が東海グループ)

ポイントは、ツチガエルの場合、染色体(遺伝子)の変異および複数集団の地理的隔離と雑種形成によって性決定機構が分化していること。
これは、『「性」染色体に騙されるな』 でも言及されていますが、性決定機構は性染色体型(XX/XY、ZZ/ZW)だけで説明できるような単純なものではないことを示しています。性染色体にばかり着目すると、かえって頭がこんがらがってしまいます。
例えば、東海Gの♂(XY)と北日本Gの♀(ZW)は形態的には同型の染色体を持つのに、雄であったり雌であったりします。これは、性決定機構が、複数の因子(卵巣形成因子、精巣形成因子、卵巣形成抑制因子、精巣形成抑制因子etc)の相互作用によるシステムで構成されており、集団によってそれらの因子の相対強弱が異なっていることを示唆しています。
(これは、異なるグループのツチガエルの交配実験によってある程度検証されているようです)

もうひとつのポイントは、ツチガエルの場合、Y染色体はX染色体から分化したのではなくXのほうが派生型であること。このX(W)染色体には卵巣決定を誘導する因子が存在することが知られています。第7染色体が雌雄同型のグループでは、ゲノム組成変化、ホルモン投与、集団間交配によって雌から雄への性転換が容易に起こるそうです。おそらく、生息環境の外的圧力、集団間圧力等に適応するために、卵巣形成を確実に誘導する因子を獲得したのではないかと考えられています。
(また近年の研究では、XY型とZW型とでは、産卵季節によって異なる性比調節を行うことがわかっているようです)

生き物の性、まだまだ不思議がいっぱいですね。
今日はここまで。

List    投稿者 iwaiy | 2008-01-31 | Posted in ①進化・適応の原理6 Comments » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.seibutsushi.net/blog/2008/01/387.html/trackback


コメント6件

 かんにょ | 2008.02.27 22:27

すごーい!卵にも色々あるんですね!!
両生類と爬虫類は身近にないからアレですが、鳥類と魚類は卵やイクラを食べる時にでもその構造(殻とか膜とか)を意識して見てみようと思います☆

 iwaiy | 2008.02.28 2:25

かんにょさん、コメントありがとうございます!
魚卵食品にも、塩漬けやみそ漬けなど卵内部に成分を浸透させたものがありますが、これも、卵膜の物質選択透過機能を利用した加工方法ですよね。

 matsu子♂ | 2008.02.28 20:23

卵の膜だけでここまで語れるとは、、、
いずれの卵にせよ環境に適応するために進化したんですね。今後は卵の進化に思いをはせつつおいしくいただくことにします。

 iwaiy | 2008.02.29 12:20

matsu子♂さん、コメントありがとうございます!
生命の認識機能の進化には、膜+膜物質(膜タンパク質等)が、ふか~く関わってそうですね。卵膜もそのひとつです。

 えぞっ子 | 2008.03.06 8:16

はじめまして
                      
かつて我が家で飼育していたシリケンイモリは、水中よりも
どちらかというと陸地、それも水場からやや離れたコケの上
に産卵しました。 これは同じ両棲類でも進化した形となる
のでしょうか?

 iwaiy | 2008.03.07 0:18

えぞっ子さん、コメントありがとうございます!
両生類とひとくちに言っても、その産卵様式には、いろいろありそうですね。水辺だけでなく、陸上にかなりの程度適応した種も結構います。シリケンイモリもその一種でしょうか。
生物の陸上適応、羊膜の誕生の秘密を解明するには、両生類の進化の分析がキーになりそうです。
るいネットでも追求・議論していますので、こちらも是非読んでみてください。

両生類(サンショウウオ)の生態
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=171892

Comment



Comment


*