2007-08-15

RNAワールドへの注目

DNAが登場してからRNAは主に仕事役として活動しています。その仕事なのかでも、タンパク質合成にかかわるmRNAtRNArRNAが注目されていましたが、タンパク質合成以外の仕事役としても注目されてきているようです。
DNAに直接働きかけるncRNAがRNAの半数以上占めていることや、触媒活性を持つリボザイムの発見など、DNAやタンパク質以前にRNAが生命活動に必要な複製、代謝、翻訳を担っていたのでは無いか,
と考えられいます。
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DNAワールド以前にRNAワールドが形成されていたとされる根拠をいくつか挙げると、

まずDNAの代わりにRNAが遺伝物質として使われていたという考え方がその一番である。広義のRNAワールドを支持する証拠をいくつか挙げれば、第一にタンパク質を合成する際に用いられる核酸はRNAであるということがある。つまりDNAの情報はいったんmRNAに転写されてからタンパク質合成に使われる。
第二に現在でもDNAではなくRNAを遺伝子としてもつウィルスが多数知られている。第三の証拠は核酸の合成経路である。核酸が生物によって合成されるとき、材料としてアミノ酸と糖が使われるが、核酸はまずリボヌクレオチド(RNAの単体量)として合成される。その糖が還元されることによってリボヌクレオチドはデオキシリボヌクレオチド(DNAの単体量)となる。すなわち合成経路をみると、RNAが咲きに合成されて、DNA合成はそれに新たな反応が付け加えられてできたのである。

『化学進化・細胞進化』著者:石川統・山岸明彦・河野重行・渡辺雄一郎・大島泰郎/岩波書店
またRNAはもともと遺伝情報を記録できるが、触媒活性をもつリボザイムの発見によって遺伝(記録)と触媒の両方をRNAが担える事が明らかになったようだ。
当初見出されたのは、核酸と核酸の結合を転移する反応の触媒活性だけであったが、その後核酸の転移反応だけでなく、アミノ酸の重合反応や分解反応、さらにはリボゾーム内で行なわれるアミノ酸結合を行なっているのもRNAだった事も知られている。

つまり初期の生命活動を担っていたのはタンパク質ではなくRNAであるという考え方が狭義のRNAワールドである。すなわち、誕生当初の生命体は、RNAだけで生命体をつくり、複製、翻訳や触媒反応を行なっていたという考え方である。この考え方によって遺伝情報と触媒機能の隔たりがかなり埋まる事になる。最初は自分自身を効率よく複製するRNA分子が増えてゆく。やがて触媒活性をもつRNA分子が誕生すると、生育に必要な有機化合物を効率よく合成できるようになる。さらに、集まったあるいは合成されたアミノ酸を繋ぎ合わせる能力をもつRNAが誕生する。

単細胞生物から多細胞生物への移行期に、生殖細胞がどんな体細胞にでもなれる「万能性」と生命を次世代に繋いでいく「継続性」を担い、体細胞は特定の機能だけを発現させる「特異性」と一世代で所定の分裂を経て消滅していく「有限性」を担う細胞へと機能分化したように(るいネット)、RNAワールドからDNAワールドの移行期には、RNAがそれまで担っていた万能性の中から、「記録」や「保存」をDNAの役割として特化していったようにも見える。

List    投稿者 nannoki | 2007-08-15 | Posted in 未分類 | 9 Comments » 

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コメント9件

 アニマルマニア | 2007.09.05 12:48

温度によって性が決定される事例を調べてみました。
・ミシシッピーワニは34℃以上ですべて雄になる。
・アカウミガメは32℃以上ですべて雌になる。
・カミツキガメは28~30℃で雄になり,それ以外 の温度では雌になる。
・フトアゴヒゲトカゲは、22~32℃では遺伝的に決定され雄:雌=1:1となるものの、34℃以上では雌比が著しく高まる。
種によって、様々なパターンがありますね。どんな必然性があるのでしょう?? 教えてください。

 匿名 | 2007.09.05 13:13

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メスニワトリにホルモン投与でオス化する写真を見て驚きです。これは人為的なもので、爬虫類には温度により雌雄が決定されるというのがあるのも驚きでした。井口泰泉教授、渡邊肇助教授の研究で性ホルモンの受容体が転写因子であること、ホルモン依存的な転写活性の測定の結果、濃度依存的な転写活性を有するというものを拝見しました。これは温度により分泌されるホルモン量の差が性を決定するということなのでしょうか。

 kuro | 2007.09.05 13:51

温度による性転換(温度依存性決定)を行なう種は魚類・両生類・爬虫類においてであり、鳥類、哺乳類においては見受けらないということは、やはり、弱者であることと適応しやすい温度の間に関係があるということですかね。
ところで、参考になるかはわかりませんが、性別が決定される時期というのは、概ね胚発生をしてから18~30%に達した時点で決定するそうです。
トカゲ、ワニですと、孵化期間を4等分したうちの3期目、カメでは3等分したうちの真ん中にあたるらしいです。
性別が孵化する直前の時期で決定するということは、厳しい環境において種を存続させるためには必然なのかもしれませんね。

 nodayuji | 2007.09.05 22:56

爬虫類の温度による性決定のばらつきは、必ずしも生存に優位とは思えません。オスメス比が大きく変わると交尾可能性が減るからです。(ハレムをつくる動物の場合は別)
環境に適応するために、温度変化に応じてオスやメスを増やすシステムを作り出したとは考えにくいように思います。
むしろ、オスメス決定のシステムが原始的なために、性決定のシステムが温度による影響を受け、生息域をせばめる要因の一つになっているのではないでしょうか。

 匿名 | 2007.09.06 16:04

nodayujiさま
>むしろ、オスメス決定のシステムが原始的なために、性決定のシステムが温度による影響を受け、生息域をせばめる要因の一つになっているのではないでしょうか。
これがどういうことなのかイメージできません。詳しく説明していただけませんか?

 nodayuji | 2007.09.08 14:23

>これがどういうことなのかイメージできません。詳しく説明していただけませんか?
オスメス決定が温度依存になっているのは、多分、性決定を担っている物質(ホルモンなど)が、限定された温度でしか機能しないから。
温度変化で機能しなくなるシステムは、多分、複数のバックアップシステムを持っていないのだろうと想定し、原始的と表現。
一定温度意外だと性別が偏ると、オスメスが出会う確立が下がり、生殖確立が下がる。
すると、温度に依存しない性決定システムの生物に比べ、繁殖力が劣ることとなり、生存競争で敗北する。
というようなことを考えました。

 kuro | 2007.09.12 13:56

>オスメス決定が温度依存になっているのは、多分、性決定を担っている物質(ホルモンなど)が、限定された温度でしか機能しないから。
実に原始的、かつシンプルな回答だと思います。
カメなどが穴を掘り産卵するのは、穴の中はある程度温度が一定に保たれているからであり、メスが生まれる確立が高くなるからとかいてありました。
なるほど。
答えは常にシンプルですね。
逆に哺乳類の方が自分達で複雑にして勝手に迷路に迷い込んでいるだけのようにも感じてしまいます。

 2007年09月06日 16:04にコメントしたものです | 2007.09.12 15:09

 仰ることは理解しました。しかし、より原始的な生物でも性決定機構は温度に依存しなかったり、依存が低いものは沢山います。温度依存的に性決定(TSD)がなされる生物は、むしろ適応戦略上、そのほうが有利であったので積極的に選択が起こった結果進化したと考えるのが妥当でしょう。また、哺乳類や鳥類にTSDするものがいないのは、恒温性を獲得した結果としての必然であると考えるのが最節約的だと思います。

 Indianaからのメッセージ | 2008.10.13 10:49

メダカのきれいな写真を見つけました

メダカの生態・形態、発生・卵割、孵化、繁殖・産卵 メダカのあまりにもきれいな顕微鏡写真を見つけたので、記録しておこうと思いました。 ここまでのレ…

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