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RNAワールドへの注目

DNAが登場してからRNAは主に仕事役として活動しています。その仕事なのかでも、タンパク質合成にかかわるmRNAtRNArRNAが注目されていましたが、タンパク質合成以外の仕事役としても注目されてきているようです。
DNAに直接働きかけるncRNAがRNAの半数以上占めていることや [1]、触媒活性を持つリボザイム [2]の発見など、DNAやタンパク質以前にRNAが生命活動に必要な複製、代謝、翻訳を担っていたのでは無いか,
と考えられいます。
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DNAワールド以前にRNAワールドが形成されていたとされる根拠をいくつか挙げると、

まずDNAの代わりにRNAが遺伝物質として使われていたという考え方がその一番である。広義のRNAワールドを支持する証拠をいくつか挙げれば、第一にタンパク質を合成する際に用いられる核酸はRNAであるということがある。つまりDNAの情報はいったんmRNAに転写されてからタンパク質合成に使われる。
第二に現在でもDNAではなくRNAを遺伝子としてもつウィルスが多数知られている。第三の証拠は核酸の合成経路である。核酸が生物によって合成されるとき、材料としてアミノ酸と糖が使われるが、核酸はまずリボヌクレオチド(RNAの単体量)として合成される。その糖が還元されることによってリボヌクレオチドはデオキシリボヌクレオチド(DNAの単体量)となる。すなわち合成経路をみると、RNAが咲きに合成されて、DNA合成はそれに新たな反応が付け加えられてできたのである。

『化学進化・細胞進化』著者:石川統・山岸明彦・河野重行・渡辺雄一郎・大島泰郎/岩波書店
またRNAはもともと遺伝情報を記録できるが、触媒活性をもつリボザイムの発見によって遺伝(記録)と触媒の両方をRNAが担える事が明らかになったようだ。
当初見出されたのは、核酸と核酸の結合を転移する反応の触媒活性だけであったが、その後核酸の転移反応だけでなく、アミノ酸の重合反応や分解反応、さらにはリボゾーム内で行なわれるアミノ酸結合を行なっているのもRNAだった事も知られている。

つまり初期の生命活動を担っていたのはタンパク質ではなくRNAであるという考え方が狭義のRNAワールドである。すなわち、誕生当初の生命体は、RNAだけで生命体をつくり、複製、翻訳や触媒反応を行なっていたという考え方である。この考え方によって遺伝情報と触媒機能の隔たりがかなり埋まる事になる。最初は自分自身を効率よく複製するRNA分子が増えてゆく。やがて触媒活性をもつRNA分子が誕生すると、生育に必要な有機化合物を効率よく合成できるようになる。さらに、集まったあるいは合成されたアミノ酸を繋ぎ合わせる能力をもつRNAが誕生する。

単細胞生物から多細胞生物への移行期に、生殖細胞がどんな体細胞にでもなれる「万能性」と生命を次世代に繋いでいく「継続性」を担い、体細胞は特定の機能だけを発現させる「特異性」と一世代で所定の分裂を経て消滅していく「有限性」を担う細胞へと機能分化したように(るいネット) [6]、RNAワールドからDNAワールドの移行期には、RNAがそれまで担っていた万能性の中から、「記録」や「保存」をDNAの役割として特化していったようにも見える。

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