2007-07-09

飢餓外圧への適応、同類合体(接合)及び生殖の登場

久しぶりのエントリーです。
「二倍体の登場」と重複しますが、真核生物段階で、外圧の高まりに対し、同類が合体することで外圧を凌ぐ過程から、生殖と二倍体真核生物が登場したという展開をしている研究者が、団まりな女史である。
「生物の複雑さを読む・階層性の生物学」(団まりな著、1996年2月平凡社発行)から、栄養飢餓状態から接合による二倍体の登場、一倍体・二倍体の両生活サイクルをもつ場合の栄養飢餓状態と接合・減数分裂を紹介します。

まずは、一倍体真核生物、クラミドモナスの接合

有性生殖は、しばしば外部環境の寒冷化や、乾燥や、栄養源の枯渇などの悪条件と結びづいて起こる。この点に着目したのJones(R.F.Jones)は、クラミドモナスの同調培養の系から窒素源だけを取り除いてみた。温度も光もその他の栄養源もすべて同じ条件で、窒素源だけなくなった刺激に遭遇して、クラミドモナスたちは数時間以内にいっせいに接合してしまった。窒素源がないことは、たんぱく質を作る素材がないことを意味する。温度の低下も、乾燥も、結局は化学反応過程(代謝)を抑えるのであるが、体制の簡単なクラミドモナスたちのこの明解な反応は、細胞がたんぱく質合成の障害にいかに敏感であるかを物語っている。

接合してディプロイド(二倍体)となったクラミドモナスたちは、さっそく固い殻を分泌し閉じこもってしまう(図4-1)。二匹が協力して悪循環に耐えるためと考えられる。当初の原始的な接合過程では、細胞たちは核まで融合させず、二核のままとどまったかも知れない(メイナード・スミス、1978年・性の進化:マーギリス&セーガン、1986年・性の起源:佐藤七郎、細胞進化論・1988年)。必ず同種の細胞同士が接合したか、また、いつも必ず二匹であったかどうかも分からない。当時のハプロイド細胞(一倍体細胞)は、まだ出現して間もなく、原核細胞時代の融合の記憶も新しかったであろうし、お互いの識別能力もまだ十分に発達していなかったと考えられる。かなり無差別に融合できた可能性がある。

いずれにせよ、たんぱく質合成が脅かされる環境下で二匹(以上?)が細胞質を出し合って協力することは、単独で休眠するそれまでのやり方に比べて、微小な生物たちの生き延びるチャンスを拡大したに違いない。

こうして生き続けていくうちに細胞メカニズムも次第に洗練され、同種の細胞を確実に見分け、染色体を混合するかたちでの接合が定着したのであろう。そしてついには接合を支配する遺伝的メカニズム(雄雌)が出来上がっていったと考えられる。

setugou001.JPG
同書の<図4-1 クラミドモナスの生活環>から転載

ふだんハプロイド状態で栄養生活を営んでいるが、外気の冷却、乾燥、栄養源の枯渇などの環境条件の悪化に対応して二匹が合体(接合)してディプロイド状態に変わる。しかし、こうして生じたディプロイド細胞(接合子)は、直ちに硬い殻を分泌して閉じこもってしまい、その状態で環境条件の改善を待つ。そして、環境条件が良くなると、彼等は殻の中で減数分裂を行ない、四匹のハプロイド細胞となって殻を破り、ふたたび外に出て栄養活動を再開する。

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ハプロイド(一倍体)とディプロイド(二倍体)の両方で栄養活動を行なう酵母の飢餓と接合(生殖)

下等菌類の酵母には、ハプロイド状態で栄養活動をするもの、ディプロイド状態でするもの、両方の状態でできるものがある(図4-2)。
いずれの場合も、クラミドモナスの場合と同様、環境条件の悪化に直面すると、ハプロイド状態のものは接合を、またディプロイド状態にあったものは減数分裂をおこなって、それぞれ接合子または胞子(ハプロイド細胞)のかたちで殻をかぶって環境条件の回復を待つ。そして、環境条件がもとにもどると、それぞれ有性生殖の残りの過程をへてもとの状態にもどり、栄養活動を再開する。

また、両方の状態を取れる種類では、接合子はディプロイド状態のまま、胞子はハプロイド状態のまま殻から這い出す。

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同書の<図4-2 酵母の生活環>から転載

上記の図で、ハプロイド状態の栄養活動を無くすると、二倍体生物の減数分裂による一倍体の接合子(卵子、精子)の生成、その接合子の合体(受精)による、二倍体(受精卵)の形成となりますね。

List    投稿者 leonrosa | 2007-07-09 | Posted in ①進化・適応の原理No Comments » 

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