2007-05-08

共感回路と前頭連合野

哺乳類の中でも、猿・人類で特に発達しているのが、大脳新皮質の前頭連合野。前頭連合野が大脳新皮質に占める割合はマカク猿で12%、人類は30%にもなります。同じ哺乳類でも、ネコは2~3%、ネズミにいたっては前頭連合野はありません。
共認機能を獲得した真猿以降に著しく発展した前頭連合野は、共認機能の獲得とどの様な関係があるのでしょうか。
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前頭連合野の主要な働きは、選択的注意、ワーキングメモリー、情動抑制の3つがあります。
選択的注意は目や耳などから入力される多くの情報の中から、今の自分に意味がある情報だけに注目する機能です。
ワーキングメモリーは、前頭連合野が思考する時の作業代で、外界から入力する情報、予定記憶、過去記憶などから選択的注意によって選ばれた情報だけを一次的に保持します。そして、これら組み合わせて適切な行動を導きます。
情動コントロールは、ワーキングメモリーにのった情報を基にして、情動をつかさどる大脳扁桃核や記憶を司る海馬などの働きを適切にコントロールする機能です。
前頭連合野は、脳が受け取った外部情報の中から重要な情報だけを抽出し一次記憶し、それに対する様々な対応方針を検索し比較検証し組み合わせて行動方針を決定し、大脳運動野に行動を指示します。
下等な動物は入力情報に対して、本能による反応が機械的に起こります。自分より小さい動くものを見ると食べるといったような形で、行動原理は非常に単純です。しかし、前頭連合野を有するサル人類の行動はもっと複雑です。本能、情動の座である大脳辺縁系から発せられた行動指令は前頭連合野で様々な行動方針と比較対照され、修正された上で行動に移されます。情動抑制は、様々な行動方針の中で、本能による反応をそのまま行動に移さずに、制御する機能でもあります。
猿が共感回路、共認回路を形成するためには、性闘争本能を封鎖し、追従本能や親和本能、依存本能を強化する必要がありました。このような行動も、前頭連合野の「選択的注意、ワーキングメモリー、情動抑制」の働きを使えば、遺伝子レベルの変化を引き起こし脳回路を組み替えることをしなくても実現することが出来ます。
本能=自動回路であり、一般の哺乳類は発情期にはホルモンの働きで性闘争本能が解除され、発情期以外は性闘争本能が封鎖され追従本能が働くというような単純な行動制御しか出来ません。
しかし、猿は前頭連合野の機能を獲得することで、様々な本能を同時に働かせ、過去の行動記憶と照合することで、その中で最も状況に適した行動方針を選定することが可能になりました。だからサルは若オス同士は親和収束依存収束しながら、ボスザルと性闘争をするといった、複雑な行動制御が可能になったと考えられます。

List    投稿者 nodayuji | 2007-05-08 | Posted in 3)地上へ進出した哺乳類(原猿から真猿へ), ④脳と適応1 Comment » 

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コメント1件

 ナム | 2007.06.20 21:58

郡体×
群体○
ですね。

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